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第七話 プールと水着
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ゴールデンウィーク真っ只中、俺は何処にも出掛ける事もなく家でのんびりと過ごしていた。
『せっかくのゴールデンウィークなんだから、私とミーニャを何処か連れてってよ』
『ご主人! あたしも何処か遊びに行きたいーー!』
『ダメだ! うちにはそんな余裕ないし、それに何処行っても混んでるし……わざわざ疲れに行くようなもんだぞ』
ポケットに入れていたスマートフォンが振動する。
画面を見ると小百合からメールが届いていて、受信ボックスからメール開くと『明日、友達とプールに行くんだけど竜ちゃんも一緒にどうかな?』と書かれていた。
それなら花蓮とミーニャも喜びそうだし……。
再びスマートフォンが振動すると、同じクラスの女子からメールが届いた。
メールを開くと『小百合のお宝ショットプレゼント!』と書かれていて画像も添付されている。
画像を開くと水着を試着してる小百合の画像だった。
とりあえず……保存。
『何をニタニタ見てるのよ?』
スマートフォンの画面を背後から覗き込む花蓮。
とっさに電源ボタンを押しスリープモードにした。
『小百合からのメールで明日プールに誘われてさ!』
『ふ~ん。 女の子の水着姿が見えたような気がするんだけど』
小百合の水着姿を見てたなんて言ったら、絶対ぶっ飛ばされる……。
『そんな事より、花蓮とミーニャも一緒にプール行かないか? 最近、ミーニャも人の姿を保てるようになったんだしさ!』
『あ、あたしは人混み苦手だから……お家でのんびり日向ぼっこしてるから、ご主人と花蓮で楽しんできなよ~』
『そうか……人混みが苦手なら仕方ないよな。 花蓮はどうする?』
『私は……行く』
スマートフォンで小百合に『花蓮も誘っていいか?』とメールを送ると、すぐに『もちろんだよ! 明日、十時に市民プールで待ち合わせね♪』と返事のメールが届いた。
『花蓮どうした? なんか顔色が悪いぞ?』
『な、なんでもないわよ』
花蓮もミーニャもどうしたんだ? さっきから様子が変だな……。
喜んで付いて来ると思ったんだけどな。
翌日、俺と花蓮は待ち合わせ場所の市民プールに向かうと、すでに小百合達は入り口の前で待っていた。
俺達に気がつくと小百合は手を振って呼んだ。
『竜ちゃん、花蓮ちゃん、こっちこっち~♪』
小百合達と合流すると、入り口で入園料を払い中に入った。
『ねぇねぇ高峰君。 小百合のお宝ショットは見たかい? ニヒヒッ♪』
こいつは、柳原楓(やなぎはらかえで)。
同じクラスの女子で、見た目は茶髪で美少女なんだが騒がしいやつで悪戯ばっかりしてる小悪魔みたいなやつだ。 小百合と花蓮とも仲が良いな。
『あのな~急にビックリするだろ! それに……どうやって撮ったんだ?』
『小百合と水着を買いに行った時、試着室で着替えてる所をこっそりと……』
『竜ちゃん、楓ちゃん、さっきからヒソヒソと何を話してるの?』
『『な、なんでもない! ・ なんでもないよ!』』
危なかった……危うく小百合にバレる所だった……。
『変な二人だね~花蓮ちゃん♪』
『……』
どうしたんだ花蓮のやつ、小百合が話し掛けてるのに黙ったまま……。
『花蓮ちゃん?』
『あっ、ごめん! 昨日夜更かししちゃってさ、ボーっとしてた』
やっぱり花蓮のやつなんか様子が変だ。
昨日からずっとあの調子だし……。
『竜ちゃん早く着替えて泳ごうよ~♪』
『あぁ、今行くよ』
更衣室で着替えを終え、一人で準備体操をしてると他のお客さん達の視線が一点に集まる。
その先に視線を向けると水着姿の花蓮達がそこに居た。
『竜ちゃんお待たせ~♪ 』
小百合の水着は、スクール水着のように繋がってるワンピース。
『美女三人の水着姿を独り占め出来るなんてこの幸せ者!』
楓の水着は、露出が少なくアンダーウェアーに近い形のタンキニ。
『……』
花蓮の水着は、小百合と楓の水着と違って、露出が多いビキニ。
これは夢か……目の前に水着の女の子が三人。
『竜ちゃん……あんまりジッと見ないで? 恥ずかしから……』
『ごめん! そんなつもりじゃないんだ!』
ドガッッッッ!! 俺の背中を花蓮が蹴る。
『何すんだよ花蓮!』
『別に。 ちょっとムカついただけ』
だんだんと花蓮の態度に腹が立ってきた俺は花蓮を睨む。
『まぁまぁ、お二人さん! せっかく遊びに来たんだから思いっきり遊ぼーー!!』
場の空気を読んだ楓は、俺と花蓮の間に入り場を和ませようとしていた。
『私はパス。 あっちで休んでるから』
そう言うと、プールサイドの休憩所に行こうとした花蓮の手を掴むと、
『お前さっきからなんだよその態度! 何が気にくわないんだよ!』
と俺は怒鳴った。
『離してよ……馬鹿』
そう言うと目を潤ませ花蓮は、更衣室の方へ戻っていった。
『花蓮のやつ……何なんだ一体』
『竜ちゃん……私達、花蓮ちゃんの様子見てくるね』
小百合と楓は花蓮の後を追って更衣室に戻った。
俺はプールサイドの休憩所でしばらく休んでいると、楓が一人で俺の所にやって来た。
『高峰君、少しは落ち着いた?』
『せっかく誘ってくれたのに色々と迷惑かけてごめんな』
楓と二人で話していると、プールの監視員達が拡声器を使ってプールから上がるよう呼びかける。
『どうしたんだいきなり』
『高峰君知らないの? 願いが叶う飛び込み台。 十メートルの高さの飛び込み台から飛び込んだ人は願いが叶うって噂があるんだ。 でも、ただの噂だし危ないから誰も挑戦しないみたいだけど、今回は誰か挑戦するみたいだね』
『な、なぁ……あの飛び込み台の上に居るのって……』
『竜ちゃん大変! 花蓮ちゃんが何処にも居ないの』
慌てる小百合に俺は飛び込み台の方を指差し花蓮の居所を教える。
『竜ちゃんどうゆう事! 花蓮ちゃん……泳げないんだよ』
嘘だろ……泳げもしないのにあんな高さから飛び込んだら怪我だけじゃ済まないぞ……。
飛び込み台に向かおうとするが、人の波で思うように前に進めないでいると、花蓮は飛び込み台から飛び込んだ。
空中で猫のように体を丸めクルクルと回るとバシャン!と見事な着水が決まり、それを見ていたお客さん達からは拍手喝采が起こる。
『花蓮待ってろ今行くぞ!』
プールに飛び込むと水中で溺れている花蓮を見つけプールから助け出し、呼びかけるが反応がなく人口呼吸をしようと花蓮の唇に俺の唇が合わさるとパチッと花蓮は目を開けた。
『ち、違うんだ! 俺はお前を助けようと……』
意識が朦朧している花蓮は、
『本当だ……ちゃんと願いが叶った』
っと言うと気を失ってしまった。
幸い怪我もなく、医務室で花蓮を休ませ、しばらくすると花蓮が目を覚ました。 それを見て泣きじゃくる小百合と楓。
『花蓮……今日は怒鳴ったりしてごめん』
『ううん。 私の方こそごめん……馬鹿みたいな事までして』
『歩けそうか?』
『まだ、ちょっとだけフラつくけど大丈夫』
俺は、花蓮に背を向けその場にしゃがみ込む。
『何してるのよ……大丈夫って言ったでしょ』
小百合と楓は起き上がろうとする花蓮を押し俺の背中に乗せると俺は花蓮を背負った。
『ちょっと、小百合と楓まで……もう……馬鹿』
花蓮を背負ったまま市民プールを後にした俺達は夕暮れの中、小百合と楓に迷惑をかけた事を謝ったが二人はあまり気にしてない様子だった。
『竜ちゃん、花蓮ちゃんを家までお願いね?』
『しっかり運ぶんだぞ高峰君』
手を振り見送ってくれる中、俺は花蓮を背負ったまま家に向かって歩き始めた。
すると花蓮が俺の肩をギュッと掴むと俺に言った。
『あたし……泳げないんじゃなくて水が怖いの』
『でも、お風呂とかは平気なんだろ?』
『お風呂と……プールは違う。 私達ネコ科の人獣は水の中に入ったり潜ったりするのが苦手なの』
もしかして……ミーニャをプールに誘っても来なかったのは水が怖かったからか。
『そんなに怖いならどうして付いて来たんだ?』
『……鈍感』
ガブッッッッ! 俺の肩に噛み付く花蓮。
『イテテッ! 何すんだ……』
花蓮は何かを思い出したかのように唇を押さえると、目を丸くし顔が真っ赤に染まった。
『私……竜一とちゅーしたんだ』
小声で何を喋ったのか聞き取れなかった。
『何か言ったか?』
『何でもない! モタモタしてないでさっさと歩きなさいよ!』
俺は、花蓮を助けるのに必死でファーストキスをした相手が花蓮なのをすっかり忘れていた。
今回の登場人物
高峰竜一(たかみねりゅういち)、16歳(高校二年生)
本作の主人公。
勉強も運動もそこそこの平凡な学生。
炊事洗濯が得意で、幼馴染の小百合に恋をしている。
両親は、仕事で海外にいっており、一軒家に一人暮らしをしている。
獅子駒花蓮(ししこまかれん)、16歳。四話以降は17歳(高校二年生)
ライオンの人獣。茶髪に小麦色の肌。
周囲を寄せ付けない態度を取っていて、周りからはヤンキーっと誤解されている。
言葉使いは悪いが、優しい性格の持ち主。
ミーニャ、16歳
猫の人獣。白髪に透き通るような白い肌。
生まれつき体が小さく病弱だったため両親に捨てられ一度は人獣として生きる道を捨て猫として生きる道を選ぶ。高峰竜一に助けられ、それ以降は稲荷静代に人獣として生きる道を教えられる。
好奇心旺盛で、高峰の事を『ご主人』っと呼んでいる。
黒田小百合(くろださゆり)、16歳(高校二年生)
高峰の幼馴染。黒髪に白い肌。
自分では、自覚してないが天然。
明るい性格で、友達も多い。
柳原楓(やなぎはらかえで)、16歳(高校二年生)
見た目は、茶髪の美少女だが悪戯が好きで小悪魔のような女の子。
高峰と同じクラスで、黒田と獅子駒とも仲が良い。
読者の方へ
『半獣じゃない人獣なんだから!!』を読んで頂き、ありがとうございます。
次回、『第八話 お願いと約束』をお楽しみに!
『せっかくのゴールデンウィークなんだから、私とミーニャを何処か連れてってよ』
『ご主人! あたしも何処か遊びに行きたいーー!』
『ダメだ! うちにはそんな余裕ないし、それに何処行っても混んでるし……わざわざ疲れに行くようなもんだぞ』
ポケットに入れていたスマートフォンが振動する。
画面を見ると小百合からメールが届いていて、受信ボックスからメール開くと『明日、友達とプールに行くんだけど竜ちゃんも一緒にどうかな?』と書かれていた。
それなら花蓮とミーニャも喜びそうだし……。
再びスマートフォンが振動すると、同じクラスの女子からメールが届いた。
メールを開くと『小百合のお宝ショットプレゼント!』と書かれていて画像も添付されている。
画像を開くと水着を試着してる小百合の画像だった。
とりあえず……保存。
『何をニタニタ見てるのよ?』
スマートフォンの画面を背後から覗き込む花蓮。
とっさに電源ボタンを押しスリープモードにした。
『小百合からのメールで明日プールに誘われてさ!』
『ふ~ん。 女の子の水着姿が見えたような気がするんだけど』
小百合の水着姿を見てたなんて言ったら、絶対ぶっ飛ばされる……。
『そんな事より、花蓮とミーニャも一緒にプール行かないか? 最近、ミーニャも人の姿を保てるようになったんだしさ!』
『あ、あたしは人混み苦手だから……お家でのんびり日向ぼっこしてるから、ご主人と花蓮で楽しんできなよ~』
『そうか……人混みが苦手なら仕方ないよな。 花蓮はどうする?』
『私は……行く』
スマートフォンで小百合に『花蓮も誘っていいか?』とメールを送ると、すぐに『もちろんだよ! 明日、十時に市民プールで待ち合わせね♪』と返事のメールが届いた。
『花蓮どうした? なんか顔色が悪いぞ?』
『な、なんでもないわよ』
花蓮もミーニャもどうしたんだ? さっきから様子が変だな……。
喜んで付いて来ると思ったんだけどな。
翌日、俺と花蓮は待ち合わせ場所の市民プールに向かうと、すでに小百合達は入り口の前で待っていた。
俺達に気がつくと小百合は手を振って呼んだ。
『竜ちゃん、花蓮ちゃん、こっちこっち~♪』
小百合達と合流すると、入り口で入園料を払い中に入った。
『ねぇねぇ高峰君。 小百合のお宝ショットは見たかい? ニヒヒッ♪』
こいつは、柳原楓(やなぎはらかえで)。
同じクラスの女子で、見た目は茶髪で美少女なんだが騒がしいやつで悪戯ばっかりしてる小悪魔みたいなやつだ。 小百合と花蓮とも仲が良いな。
『あのな~急にビックリするだろ! それに……どうやって撮ったんだ?』
『小百合と水着を買いに行った時、試着室で着替えてる所をこっそりと……』
『竜ちゃん、楓ちゃん、さっきからヒソヒソと何を話してるの?』
『『な、なんでもない! ・ なんでもないよ!』』
危なかった……危うく小百合にバレる所だった……。
『変な二人だね~花蓮ちゃん♪』
『……』
どうしたんだ花蓮のやつ、小百合が話し掛けてるのに黙ったまま……。
『花蓮ちゃん?』
『あっ、ごめん! 昨日夜更かししちゃってさ、ボーっとしてた』
やっぱり花蓮のやつなんか様子が変だ。
昨日からずっとあの調子だし……。
『竜ちゃん早く着替えて泳ごうよ~♪』
『あぁ、今行くよ』
更衣室で着替えを終え、一人で準備体操をしてると他のお客さん達の視線が一点に集まる。
その先に視線を向けると水着姿の花蓮達がそこに居た。
『竜ちゃんお待たせ~♪ 』
小百合の水着は、スクール水着のように繋がってるワンピース。
『美女三人の水着姿を独り占め出来るなんてこの幸せ者!』
楓の水着は、露出が少なくアンダーウェアーに近い形のタンキニ。
『……』
花蓮の水着は、小百合と楓の水着と違って、露出が多いビキニ。
これは夢か……目の前に水着の女の子が三人。
『竜ちゃん……あんまりジッと見ないで? 恥ずかしから……』
『ごめん! そんなつもりじゃないんだ!』
ドガッッッッ!! 俺の背中を花蓮が蹴る。
『何すんだよ花蓮!』
『別に。 ちょっとムカついただけ』
だんだんと花蓮の態度に腹が立ってきた俺は花蓮を睨む。
『まぁまぁ、お二人さん! せっかく遊びに来たんだから思いっきり遊ぼーー!!』
場の空気を読んだ楓は、俺と花蓮の間に入り場を和ませようとしていた。
『私はパス。 あっちで休んでるから』
そう言うと、プールサイドの休憩所に行こうとした花蓮の手を掴むと、
『お前さっきからなんだよその態度! 何が気にくわないんだよ!』
と俺は怒鳴った。
『離してよ……馬鹿』
そう言うと目を潤ませ花蓮は、更衣室の方へ戻っていった。
『花蓮のやつ……何なんだ一体』
『竜ちゃん……私達、花蓮ちゃんの様子見てくるね』
小百合と楓は花蓮の後を追って更衣室に戻った。
俺はプールサイドの休憩所でしばらく休んでいると、楓が一人で俺の所にやって来た。
『高峰君、少しは落ち着いた?』
『せっかく誘ってくれたのに色々と迷惑かけてごめんな』
楓と二人で話していると、プールの監視員達が拡声器を使ってプールから上がるよう呼びかける。
『どうしたんだいきなり』
『高峰君知らないの? 願いが叶う飛び込み台。 十メートルの高さの飛び込み台から飛び込んだ人は願いが叶うって噂があるんだ。 でも、ただの噂だし危ないから誰も挑戦しないみたいだけど、今回は誰か挑戦するみたいだね』
『な、なぁ……あの飛び込み台の上に居るのって……』
『竜ちゃん大変! 花蓮ちゃんが何処にも居ないの』
慌てる小百合に俺は飛び込み台の方を指差し花蓮の居所を教える。
『竜ちゃんどうゆう事! 花蓮ちゃん……泳げないんだよ』
嘘だろ……泳げもしないのにあんな高さから飛び込んだら怪我だけじゃ済まないぞ……。
飛び込み台に向かおうとするが、人の波で思うように前に進めないでいると、花蓮は飛び込み台から飛び込んだ。
空中で猫のように体を丸めクルクルと回るとバシャン!と見事な着水が決まり、それを見ていたお客さん達からは拍手喝采が起こる。
『花蓮待ってろ今行くぞ!』
プールに飛び込むと水中で溺れている花蓮を見つけプールから助け出し、呼びかけるが反応がなく人口呼吸をしようと花蓮の唇に俺の唇が合わさるとパチッと花蓮は目を開けた。
『ち、違うんだ! 俺はお前を助けようと……』
意識が朦朧している花蓮は、
『本当だ……ちゃんと願いが叶った』
っと言うと気を失ってしまった。
幸い怪我もなく、医務室で花蓮を休ませ、しばらくすると花蓮が目を覚ました。 それを見て泣きじゃくる小百合と楓。
『花蓮……今日は怒鳴ったりしてごめん』
『ううん。 私の方こそごめん……馬鹿みたいな事までして』
『歩けそうか?』
『まだ、ちょっとだけフラつくけど大丈夫』
俺は、花蓮に背を向けその場にしゃがみ込む。
『何してるのよ……大丈夫って言ったでしょ』
小百合と楓は起き上がろうとする花蓮を押し俺の背中に乗せると俺は花蓮を背負った。
『ちょっと、小百合と楓まで……もう……馬鹿』
花蓮を背負ったまま市民プールを後にした俺達は夕暮れの中、小百合と楓に迷惑をかけた事を謝ったが二人はあまり気にしてない様子だった。
『竜ちゃん、花蓮ちゃんを家までお願いね?』
『しっかり運ぶんだぞ高峰君』
手を振り見送ってくれる中、俺は花蓮を背負ったまま家に向かって歩き始めた。
すると花蓮が俺の肩をギュッと掴むと俺に言った。
『あたし……泳げないんじゃなくて水が怖いの』
『でも、お風呂とかは平気なんだろ?』
『お風呂と……プールは違う。 私達ネコ科の人獣は水の中に入ったり潜ったりするのが苦手なの』
もしかして……ミーニャをプールに誘っても来なかったのは水が怖かったからか。
『そんなに怖いならどうして付いて来たんだ?』
『……鈍感』
ガブッッッッ! 俺の肩に噛み付く花蓮。
『イテテッ! 何すんだ……』
花蓮は何かを思い出したかのように唇を押さえると、目を丸くし顔が真っ赤に染まった。
『私……竜一とちゅーしたんだ』
小声で何を喋ったのか聞き取れなかった。
『何か言ったか?』
『何でもない! モタモタしてないでさっさと歩きなさいよ!』
俺は、花蓮を助けるのに必死でファーストキスをした相手が花蓮なのをすっかり忘れていた。
今回の登場人物
高峰竜一(たかみねりゅういち)、16歳(高校二年生)
本作の主人公。
勉強も運動もそこそこの平凡な学生。
炊事洗濯が得意で、幼馴染の小百合に恋をしている。
両親は、仕事で海外にいっており、一軒家に一人暮らしをしている。
獅子駒花蓮(ししこまかれん)、16歳。四話以降は17歳(高校二年生)
ライオンの人獣。茶髪に小麦色の肌。
周囲を寄せ付けない態度を取っていて、周りからはヤンキーっと誤解されている。
言葉使いは悪いが、優しい性格の持ち主。
ミーニャ、16歳
猫の人獣。白髪に透き通るような白い肌。
生まれつき体が小さく病弱だったため両親に捨てられ一度は人獣として生きる道を捨て猫として生きる道を選ぶ。高峰竜一に助けられ、それ以降は稲荷静代に人獣として生きる道を教えられる。
好奇心旺盛で、高峰の事を『ご主人』っと呼んでいる。
黒田小百合(くろださゆり)、16歳(高校二年生)
高峰の幼馴染。黒髪に白い肌。
自分では、自覚してないが天然。
明るい性格で、友達も多い。
柳原楓(やなぎはらかえで)、16歳(高校二年生)
見た目は、茶髪の美少女だが悪戯が好きで小悪魔のような女の子。
高峰と同じクラスで、黒田と獅子駒とも仲が良い。
読者の方へ
『半獣じゃない人獣なんだから!!』を読んで頂き、ありがとうございます。
次回、『第八話 お願いと約束』をお楽しみに!
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