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第五章
加茂倉少年の恋 其の十四
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栄慶さんが不思議そうにこちらを見ている事に気づき、私は慌てて手を振る。
「あ、いえいえっ、何でもないです、何でもっ」
アハハと笑って誤魔化すと、彼はそんな私を訝しみつつ
「あの二人、向こうへ行ったぞ」
と、斜め前を指さす。
俊介くん達はアトラクションの列に並びながら園内パンフレットを眺めていた。
「あ、ほんとだ。じゃあ私達も並びましょうか」
栄慶さんは乗り放題フリーパスも買ってくれており、せっかくだからと私達も同じアトラクションの列に並ぶ。
並ぶと言ってもそんなに人が多いわけではなく、数分待てばすぐに乗れる状態だった。
昔からある子供向けの乗り物だけど、乗ってみると懐かしいという事もあり結構楽しい。
私と栄慶さんは俊介くん達の後に続き、次々とアトラクションの列に並んでいく。
「さすがにこれは……乗る必要ないだろ」
「駄目ですよっ! 二人と同じ物に乗るって決めたんですからっ」
「そんな事いつ決めた」
「今決めました。ほらほら早く乗ってくださーいっ!」
私は栄慶さんの背中を両手で押しながらメリーゴーランドへと乗り込む。
さすがに馬に乗るのは嫌らしく、彼は馬車の方へ乗り込もうとするが……
「栄慶さんなら白馬が似合いますって─」
と腕を引っ張り移動させる。
「おい……」
「ほらほら早く乗らないと他の人の迷惑になっちゃいますよー?」
そう言って強引に乗せたあと、私からそっぽを向ける彼の姿を隣の馬からジッと眺める。
(恥ずかしがってる~、いつも私の事からかって楽しんでるんだからたまにはいいよねー)
なんて事をしていると。
「並ぶだけで乗らなくていいって言ったじゃないですか─っ!!」
「そんな事を言った覚えはない。ほら、早く乗らないと他の客に迷惑かけるぞ?」
栄慶さんは仕返しとばかりに私の腰を掴み、ジェットコースターへと押し込む。
「栄慶さんの意地悪っ!」
「同じ物に乗ると決めたんだろう?」
「ううっ……」
「因果応報、自分の行いには気を付けないとな」
「うううっ……」
「ははっ」
(ここでその笑顔は反則です――――――っっ!!!!)
心の中で叫びながらジェットコースターは急降下していった。
「こ、怖かった。もう二度と乗らないんだから~」
フラフラとよろけながら私は出口へと向かう。
隣で「凄い声だったな」と笑いをこらえる栄慶さんが何とも腹立たしい。
だけど楽しそうな彼の姿を見ていると、本当のデートみたいだと思わず笑みが零れてしまう。
小さな遊園地だから家族連ればかりだろうと思っていたが、カップルらしき男女もチラホラと見かける。
『あ、あれ?俺ジェットコースターの列に並んでたはずじゃ……』
『もー、何言ってんの、今乗ったばかりじゃーんっ、次あれ乗ろうよ~』
腕を組みながら楽しそうに歩くカップルを見て、他の人から見れば私達もそんな風に見えるのかな……なんて口元を緩ませながら前を歩く俊介くん達の様子を伺うと……
「俊くん待ってぇ~、歩くの早~いっ」
「え? あっ、ごめんっ」
「もうっ、置いてかないでねっ」
と、エリナちゃんは俊介くんに駆け寄り、そのまま彼と手を繋ぐ。
その光景を見て、「あっ」と私は小さく声を漏らした。
(あれって……恋人繋ぎってやつよね?)
お互いの指を絡めるようにして握る、恋人同士の繋ぎ方。
エリナちゃんは満足げに笑みを浮かべ、俊介くんは恥ずかしそうにしつつも嬉しそうな表情をしている。
そんな二人を見て
「いいなぁ……」
とポツリと呟く。
俊介くんはそんなに早く歩いていたわけじゃない。
きっとエリナちゃんは手を繋ぐためにワザと距離をとったのだろう。
(私もやって……いいかな?)
他の人たちも手を繋いだり腕を組んだりしてるみたいだし……。
今は恋人同士のフリをしてるんだから……大丈夫よね?
自然な感じにもっていけば……変に思われない、はず。
(私だって少しは栄慶さんとイチャイチャしたいものっ!)
私は覚悟を決め、歩く速度を緩めて栄慶さんと距離をとろうとするが……
「……」
「……」
「…………」
「疲れたのか?」
「いえ、大丈夫です……」
私と歩幅を合わせてくれる、その気遣い、今はいらないです。
「あ、いえいえっ、何でもないです、何でもっ」
アハハと笑って誤魔化すと、彼はそんな私を訝しみつつ
「あの二人、向こうへ行ったぞ」
と、斜め前を指さす。
俊介くん達はアトラクションの列に並びながら園内パンフレットを眺めていた。
「あ、ほんとだ。じゃあ私達も並びましょうか」
栄慶さんは乗り放題フリーパスも買ってくれており、せっかくだからと私達も同じアトラクションの列に並ぶ。
並ぶと言ってもそんなに人が多いわけではなく、数分待てばすぐに乗れる状態だった。
昔からある子供向けの乗り物だけど、乗ってみると懐かしいという事もあり結構楽しい。
私と栄慶さんは俊介くん達の後に続き、次々とアトラクションの列に並んでいく。
「さすがにこれは……乗る必要ないだろ」
「駄目ですよっ! 二人と同じ物に乗るって決めたんですからっ」
「そんな事いつ決めた」
「今決めました。ほらほら早く乗ってくださーいっ!」
私は栄慶さんの背中を両手で押しながらメリーゴーランドへと乗り込む。
さすがに馬に乗るのは嫌らしく、彼は馬車の方へ乗り込もうとするが……
「栄慶さんなら白馬が似合いますって─」
と腕を引っ張り移動させる。
「おい……」
「ほらほら早く乗らないと他の人の迷惑になっちゃいますよー?」
そう言って強引に乗せたあと、私からそっぽを向ける彼の姿を隣の馬からジッと眺める。
(恥ずかしがってる~、いつも私の事からかって楽しんでるんだからたまにはいいよねー)
なんて事をしていると。
「並ぶだけで乗らなくていいって言ったじゃないですか─っ!!」
「そんな事を言った覚えはない。ほら、早く乗らないと他の客に迷惑かけるぞ?」
栄慶さんは仕返しとばかりに私の腰を掴み、ジェットコースターへと押し込む。
「栄慶さんの意地悪っ!」
「同じ物に乗ると決めたんだろう?」
「ううっ……」
「因果応報、自分の行いには気を付けないとな」
「うううっ……」
「ははっ」
(ここでその笑顔は反則です――――――っっ!!!!)
心の中で叫びながらジェットコースターは急降下していった。
「こ、怖かった。もう二度と乗らないんだから~」
フラフラとよろけながら私は出口へと向かう。
隣で「凄い声だったな」と笑いをこらえる栄慶さんが何とも腹立たしい。
だけど楽しそうな彼の姿を見ていると、本当のデートみたいだと思わず笑みが零れてしまう。
小さな遊園地だから家族連ればかりだろうと思っていたが、カップルらしき男女もチラホラと見かける。
『あ、あれ?俺ジェットコースターの列に並んでたはずじゃ……』
『もー、何言ってんの、今乗ったばかりじゃーんっ、次あれ乗ろうよ~』
腕を組みながら楽しそうに歩くカップルを見て、他の人から見れば私達もそんな風に見えるのかな……なんて口元を緩ませながら前を歩く俊介くん達の様子を伺うと……
「俊くん待ってぇ~、歩くの早~いっ」
「え? あっ、ごめんっ」
「もうっ、置いてかないでねっ」
と、エリナちゃんは俊介くんに駆け寄り、そのまま彼と手を繋ぐ。
その光景を見て、「あっ」と私は小さく声を漏らした。
(あれって……恋人繋ぎってやつよね?)
お互いの指を絡めるようにして握る、恋人同士の繋ぎ方。
エリナちゃんは満足げに笑みを浮かべ、俊介くんは恥ずかしそうにしつつも嬉しそうな表情をしている。
そんな二人を見て
「いいなぁ……」
とポツリと呟く。
俊介くんはそんなに早く歩いていたわけじゃない。
きっとエリナちゃんは手を繋ぐためにワザと距離をとったのだろう。
(私もやって……いいかな?)
他の人たちも手を繋いだり腕を組んだりしてるみたいだし……。
今は恋人同士のフリをしてるんだから……大丈夫よね?
自然な感じにもっていけば……変に思われない、はず。
(私だって少しは栄慶さんとイチャイチャしたいものっ!)
私は覚悟を決め、歩く速度を緩めて栄慶さんと距離をとろうとするが……
「……」
「……」
「…………」
「疲れたのか?」
「いえ、大丈夫です……」
私と歩幅を合わせてくれる、その気遣い、今はいらないです。
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