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鬼人族編
5話 はじめてのなかま
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これは生き残りをかけた戦いで、弱いゴブリンとオークを振り落とし強者のみに選別する試験のようなものだろう。
先ほど試験官もとい大男が言っていたように、強さだけを求める鬼人族は出生を問わないのだろう。だからどこの骨ともわからない俺もこの試験に参加している。全力で期待に応えて見せよう。
ここは動いて敵を見つけるのに専念したほうがいいだろう。集合した時に一時的に共有スキルを”鑑定眼(Ⅾ)”に変更してステータスを確認したが、危険と思えるような奴は一体しかいなかった。あいつは正直今の俺では倒せない。他のゴブリンとオークを倒してレベルを上げてから出ないと太刀打ちできない。それほどこの試験生の中で飛び抜けていた。顔に傷がついたスカーフェイスのオークには要注意だ。
「ちっぽけなゴブリン見っけブヒィ。おいゴブリン、諦めて俺様の傘下に入るなら命だけは取らないであげるブヒィ。」
試験が始まって早々、豚に接敵した。
「どいつもこいつもお前ら豚どもはブヒブヒうるせぇんだよ。」
本当にブヒブヒするのはやめてほしい。余計なことは考えずに集中しよう。
「家畜と一緒にするなブヒィ、せっかくチャンスをあげたのにアホブヒィな。俺様に従わないなら死ねブヒィ。」
RPGでの戦闘までの手本のような声掛けを行ったところで、早速戦闘に突入した。まずは巨体から繰り出される棍棒の大振りを避け距離を取る。先ほどのお決まりの声かけ中に、ステータスを確認したが脅威となる敵ではなかった。俺もゴブリンにアカウントを変えてから初めての戦闘だが、頭の悪い豚に負けるわけにはいかない。
共有スキルを再び”経験値取得率上昇(B)”に戻して戦闘を開始する。
「無属性魔法・魔力玉」
オークはゴブリンが魔法を使うと思わなかったのか、少し反応に遅れ脂肪で膨れ上がった腹に直撃した。
「ブヒィ、ブヒィ、ブヒィィ」
ブヒブヒ呼吸が乱れている。
「魔法を使うとは卑怯者ブヒィ、気高きオークと同じ鬼人族として恥ずかしいブヒィ。正々堂々拳で戦うブヒィ。」
訳のわからないことを言っているが無視して、再び魔力玉を放つ。
「同じ手は通用しないブヒィ」
今の俺ではコイツにパワーで勝てない。だから、小技で勝たせてもらう。魔力玉に集中している間に、拾った砂を目眩しにオークの顔部に投げつける。
「目眩しとは卑怯者ブヒィ」
目が見えなくなったため、焦って棍棒を振り回す。その隙を見て懐に入り込み魔法を放つ。
「よく喋るな。だがもう終わりだ。無属性魔法・インパクト。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
赤い閃光が上がってから、6時間が経過した。もうそろそろ日が暮れそうだ。
スライムアカウントの”経験値取得率上昇(B)”のおかげで8レベルになり、無属性魔法がCランクに上がった。後の仲間集めをしやすくするために、極力ゴブリンとオーク以外の魔物を狩った。試験を行っている森林では、野生の魔物が勝手に繁殖している。野生の魔物はレベルが低く、気付かれる前に無属性魔法を1.2発で倒せた。そのため、良い経験値稼ぎとなっている。
「無属性魔法・魔力玉」
芋虫型のキャタピーアという魔物だ。スライムの時に何度かお世話になっている魔物だ。あのころからずっと一撃で終わっている。正面から顔を見たことはないし、断末魔しか聞いたことがない気がする。
高速で移動しながら野生の魔物を狩っていると、
「大丈夫か」
返答なしか。かなり内気なオークらしい。木陰に隠れて出てこない。きっと俺みたいな状況でわけもわからず、連れてこられたのだろう。だが、この世界は悲しいくらいに弱肉強食で残酷だ。お前のような戦う気もないやつを放っておいてはくれない。
「俺に付いてくるか、死ぬか選べ。」
俺を無害な存在だと思っていたのか、怯えた表情に変わった。こういうタイプを力で服従させても、こいつは進歩しない。仲間になったとしても、対等な関係を築けはしないだろう。自発的に仲間になってくれるまで待つしかないか。自分の判断で決めさせることが大事だ。
「明朝またここに来る、それまでに決めておけ。」
他のやつにあたってみるか。経験値取得率上昇よってパーティー全員に俺が倒した分の経験値がそのまま入るため、パーティーにいるだけで強くなれる。また、パーティーメンバーに経験値取得率上昇を取得させれば、それだけ俺も得をする。仲間を集めるに越したことはない。だが、パーティーには8人までしか入れられないから、少数精鋭のパーティーを目指したい。弱者の存在は仲間の首も絞めることになる。無能な味方ほど、害のある存在はいないからな。
ゴブリンの目はオークより夜目が効くため、昼間より積極的にゴブリンは活動するだろう。そうなれば、あのオークもゴブリンにいつ襲われるかもしれない状況で、一夜を過ごすことになり、自ら仲間になることを望むだろう。野営などに慣れていない者たちは、明日には疲弊しきっているはずだ。明日になればもっと仲間も増やしやすくなる。だが同時に、団体で残っているのは強者ばかりだ。今のうちに強者は潰しておくべきだろう。
「無属性魔法・サーチ」
無属性魔法をCランクに上げたことで使えるようになった索敵用の魔法を使い、周囲の様子を把握する。
やけに暴れている個体がいるな。昼間だったら今の俺では到底かないそうにないスカーフェイスに、遭遇してしまいそうだったため、見に行くのは諦めていたが夜間ならおそらくゴブリンだ。見に行く価値はある。
そこには無惨な光景が広がっていた。髪まで血潮に染まったゴブリン、飛散した鮮血がゴブリンの異常さを際立たせていた。血で真っ赤なゴブリンは狂気に満ちていた。
”鑑定眼(Ⅾ)”でステータスを見てみると、やはり1日で多くの魔物を殺したのであろう。試験開始前に見た時より格段に強くなっていた。このゴブリンはよく覚えている。早く戦いたそうにうずうずしていたあの表情、まだ負けを知らない純粋な表情を。そして特徴的な赤髪、赤眼。
ぜひとも、仲間になってもらいたい。
「少し時間をーーーー
言い切る前に小さなゴブリンの体には似つかわしくないオークが使うような棍棒を振り回してきた。それを難なく回避して距離を取る。
棍棒目掛けて魔法を放つ。
「手荒な真似はしたくなかったんだが、仕方がない。無属性魔法・魔力玉」
小さな体では勢いを止めきれず後方に吹っ飛んでいった。だが、すぐまた立ち上がり長物だと不利だと感じたのか、今度は地面に落ちていた短剣を拾い再び接近してくる。
今日一日の狩りで獲得したスキルポイントを使って、”武術(E)”を取得した俺からすれば拙い動きだが、獲物を狩ろうとするその姿勢には目を見張る物がある。相手との力の差を理解できるようになれば見込みのあるゴブリンだ。絶対、仲間に引き入れよう。そう決め、短剣の攻撃を全て避け切った後、魔力を込めた掌底を顎に向けて放った。見事に倒れ、気を失った。
こいつは懐柔に応じてくれるだろうか、傀儡のように人をこき使うのはあまり好ましくないからな。仲間と呼べる対等な関係を望むばかりだ。縛る物がないから、起きてまた襲いかかってこられたら困る。まあ、また襲ってきたらまた倒せばいいか。それを繰り返せばこいつも納得してくれるだろう。
「ん、」
「目が覚めたようだな。」
このやりとりが5回ほど繰り返された後、ようやくまともに会話ができた。
「共にこの試験を乗り越えよう。この試練は何も仲間を作ってはいけないルールはない。俺は仲間を増やすことで戦力増強できる。お前は生き延びる可能性が上がるし、俺がお前を強くしてやる。」
「俺は強くなれるか。もっと強い奴と戦えるのか。」
その目には年相応の無邪気さとこれからへの期待が溢れていた。
「ああ、もちろんだ。俺がお前をもっと強くしてやる。」
仲間第一号ができた。この世界に来て初めての仲間だ。すごく嬉しい。なんだかんだ言って俺も寂しかったのだろう。となると、名前が必要か。そういえば誰にも名乗るがなかったから、名前を決めてなかった。
「今日からお前の名前はカデルだ。よろしくなカデル。」
「カデルか。俺はあんたをなんて呼べばいい。」
「俺の名前はシルバーだ。」
友情のための固い握手を交わそうとするも、カデルは手が差し出された意図が理解できず、シルバーの手を眺め続けた。引き際を見誤ったシルバーの手だけが煌々と輝く朝日に虚しくも照らされていた。
先ほど試験官もとい大男が言っていたように、強さだけを求める鬼人族は出生を問わないのだろう。だからどこの骨ともわからない俺もこの試験に参加している。全力で期待に応えて見せよう。
ここは動いて敵を見つけるのに専念したほうがいいだろう。集合した時に一時的に共有スキルを”鑑定眼(Ⅾ)”に変更してステータスを確認したが、危険と思えるような奴は一体しかいなかった。あいつは正直今の俺では倒せない。他のゴブリンとオークを倒してレベルを上げてから出ないと太刀打ちできない。それほどこの試験生の中で飛び抜けていた。顔に傷がついたスカーフェイスのオークには要注意だ。
「ちっぽけなゴブリン見っけブヒィ。おいゴブリン、諦めて俺様の傘下に入るなら命だけは取らないであげるブヒィ。」
試験が始まって早々、豚に接敵した。
「どいつもこいつもお前ら豚どもはブヒブヒうるせぇんだよ。」
本当にブヒブヒするのはやめてほしい。余計なことは考えずに集中しよう。
「家畜と一緒にするなブヒィ、せっかくチャンスをあげたのにアホブヒィな。俺様に従わないなら死ねブヒィ。」
RPGでの戦闘までの手本のような声掛けを行ったところで、早速戦闘に突入した。まずは巨体から繰り出される棍棒の大振りを避け距離を取る。先ほどのお決まりの声かけ中に、ステータスを確認したが脅威となる敵ではなかった。俺もゴブリンにアカウントを変えてから初めての戦闘だが、頭の悪い豚に負けるわけにはいかない。
共有スキルを再び”経験値取得率上昇(B)”に戻して戦闘を開始する。
「無属性魔法・魔力玉」
オークはゴブリンが魔法を使うと思わなかったのか、少し反応に遅れ脂肪で膨れ上がった腹に直撃した。
「ブヒィ、ブヒィ、ブヒィィ」
ブヒブヒ呼吸が乱れている。
「魔法を使うとは卑怯者ブヒィ、気高きオークと同じ鬼人族として恥ずかしいブヒィ。正々堂々拳で戦うブヒィ。」
訳のわからないことを言っているが無視して、再び魔力玉を放つ。
「同じ手は通用しないブヒィ」
今の俺ではコイツにパワーで勝てない。だから、小技で勝たせてもらう。魔力玉に集中している間に、拾った砂を目眩しにオークの顔部に投げつける。
「目眩しとは卑怯者ブヒィ」
目が見えなくなったため、焦って棍棒を振り回す。その隙を見て懐に入り込み魔法を放つ。
「よく喋るな。だがもう終わりだ。無属性魔法・インパクト。」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
赤い閃光が上がってから、6時間が経過した。もうそろそろ日が暮れそうだ。
スライムアカウントの”経験値取得率上昇(B)”のおかげで8レベルになり、無属性魔法がCランクに上がった。後の仲間集めをしやすくするために、極力ゴブリンとオーク以外の魔物を狩った。試験を行っている森林では、野生の魔物が勝手に繁殖している。野生の魔物はレベルが低く、気付かれる前に無属性魔法を1.2発で倒せた。そのため、良い経験値稼ぎとなっている。
「無属性魔法・魔力玉」
芋虫型のキャタピーアという魔物だ。スライムの時に何度かお世話になっている魔物だ。あのころからずっと一撃で終わっている。正面から顔を見たことはないし、断末魔しか聞いたことがない気がする。
高速で移動しながら野生の魔物を狩っていると、
「大丈夫か」
返答なしか。かなり内気なオークらしい。木陰に隠れて出てこない。きっと俺みたいな状況でわけもわからず、連れてこられたのだろう。だが、この世界は悲しいくらいに弱肉強食で残酷だ。お前のような戦う気もないやつを放っておいてはくれない。
「俺に付いてくるか、死ぬか選べ。」
俺を無害な存在だと思っていたのか、怯えた表情に変わった。こういうタイプを力で服従させても、こいつは進歩しない。仲間になったとしても、対等な関係を築けはしないだろう。自発的に仲間になってくれるまで待つしかないか。自分の判断で決めさせることが大事だ。
「明朝またここに来る、それまでに決めておけ。」
他のやつにあたってみるか。経験値取得率上昇よってパーティー全員に俺が倒した分の経験値がそのまま入るため、パーティーにいるだけで強くなれる。また、パーティーメンバーに経験値取得率上昇を取得させれば、それだけ俺も得をする。仲間を集めるに越したことはない。だが、パーティーには8人までしか入れられないから、少数精鋭のパーティーを目指したい。弱者の存在は仲間の首も絞めることになる。無能な味方ほど、害のある存在はいないからな。
ゴブリンの目はオークより夜目が効くため、昼間より積極的にゴブリンは活動するだろう。そうなれば、あのオークもゴブリンにいつ襲われるかもしれない状況で、一夜を過ごすことになり、自ら仲間になることを望むだろう。野営などに慣れていない者たちは、明日には疲弊しきっているはずだ。明日になればもっと仲間も増やしやすくなる。だが同時に、団体で残っているのは強者ばかりだ。今のうちに強者は潰しておくべきだろう。
「無属性魔法・サーチ」
無属性魔法をCランクに上げたことで使えるようになった索敵用の魔法を使い、周囲の様子を把握する。
やけに暴れている個体がいるな。昼間だったら今の俺では到底かないそうにないスカーフェイスに、遭遇してしまいそうだったため、見に行くのは諦めていたが夜間ならおそらくゴブリンだ。見に行く価値はある。
そこには無惨な光景が広がっていた。髪まで血潮に染まったゴブリン、飛散した鮮血がゴブリンの異常さを際立たせていた。血で真っ赤なゴブリンは狂気に満ちていた。
”鑑定眼(Ⅾ)”でステータスを見てみると、やはり1日で多くの魔物を殺したのであろう。試験開始前に見た時より格段に強くなっていた。このゴブリンはよく覚えている。早く戦いたそうにうずうずしていたあの表情、まだ負けを知らない純粋な表情を。そして特徴的な赤髪、赤眼。
ぜひとも、仲間になってもらいたい。
「少し時間をーーーー
言い切る前に小さなゴブリンの体には似つかわしくないオークが使うような棍棒を振り回してきた。それを難なく回避して距離を取る。
棍棒目掛けて魔法を放つ。
「手荒な真似はしたくなかったんだが、仕方がない。無属性魔法・魔力玉」
小さな体では勢いを止めきれず後方に吹っ飛んでいった。だが、すぐまた立ち上がり長物だと不利だと感じたのか、今度は地面に落ちていた短剣を拾い再び接近してくる。
今日一日の狩りで獲得したスキルポイントを使って、”武術(E)”を取得した俺からすれば拙い動きだが、獲物を狩ろうとするその姿勢には目を見張る物がある。相手との力の差を理解できるようになれば見込みのあるゴブリンだ。絶対、仲間に引き入れよう。そう決め、短剣の攻撃を全て避け切った後、魔力を込めた掌底を顎に向けて放った。見事に倒れ、気を失った。
こいつは懐柔に応じてくれるだろうか、傀儡のように人をこき使うのはあまり好ましくないからな。仲間と呼べる対等な関係を望むばかりだ。縛る物がないから、起きてまた襲いかかってこられたら困る。まあ、また襲ってきたらまた倒せばいいか。それを繰り返せばこいつも納得してくれるだろう。
「ん、」
「目が覚めたようだな。」
このやりとりが5回ほど繰り返された後、ようやくまともに会話ができた。
「共にこの試験を乗り越えよう。この試練は何も仲間を作ってはいけないルールはない。俺は仲間を増やすことで戦力増強できる。お前は生き延びる可能性が上がるし、俺がお前を強くしてやる。」
「俺は強くなれるか。もっと強い奴と戦えるのか。」
その目には年相応の無邪気さとこれからへの期待が溢れていた。
「ああ、もちろんだ。俺がお前をもっと強くしてやる。」
仲間第一号ができた。この世界に来て初めての仲間だ。すごく嬉しい。なんだかんだ言って俺も寂しかったのだろう。となると、名前が必要か。そういえば誰にも名乗るがなかったから、名前を決めてなかった。
「今日からお前の名前はカデルだ。よろしくなカデル。」
「カデルか。俺はあんたをなんて呼べばいい。」
「俺の名前はシルバーだ。」
友情のための固い握手を交わそうとするも、カデルは手が差し出された意図が理解できず、シルバーの手を眺め続けた。引き際を見誤ったシルバーの手だけが煌々と輝く朝日に虚しくも照らされていた。
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