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雪と東殿下と学校七不思議
8☆理科室の怪談
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「理科室って一番現実的だよね。幽霊とあまり無関係な感じはするよね」
と東殿下は仰った。
「オレは理科室は恐ろしいぞ。なんでもホルマリン漬けになってるし、自分がもしあんなふうにされたら……と思うと怖くねぇか?」
本太はわざと肩を抱いて身震いする。
「それ、既に殺人事件ですから、警察案件ですよね?」
と雪は冷静に言った。
「でも、ここは現世じゃないからね……気をつけなきゃダメだよ」
と二宮くんは脅しのような注意をした。
「理科室ってどんな怪談があるのですか?」
「定番なのは人体模型と骨格標本が動き出したり、なくした臓器を探してほしいとか……いって、時間内に見つからないと臓器を取られるとか?」
と東殿下は理科室の怪談にはあまり興味がないのか適当にいった。
「なんだかゲームみたいなもんだな」
「じゃ、入るよ。」
理科室の長く広い机は六個あり、その上にあったアルコールランプが灯るだけのほの暗い教室だ。
それ以外何もなさそうな教室を、ライトを照らしながら巡り、標本がおかれている棚を見ると、カエルの標本は白い古びたものではなく生々しく脈打ってこちらを睨む。
「ぎゃあ!」
といい、本太は雪の背中に隠れた。
「いい反応だねぇ」
二宮くんはニヤニヤ笑う。
一周して出るだけかな?と思いつつ、骨格標本や人体模型はどこだろうと思いつつ教室の黒板にライトを当てると、何やら文字が書いてある。
「僕のハートを探してください……でないと……」
と書いてあった。
やはり、東殿下の噂通りのシュチュエーションで来るものなのかと雪は身構える。
とんとん、肩を叩かれて後ろを向くと、
人体模型が生身の人間のような息つかいをして立っていた。
《僕のハートみつけて……でないと……》
「うおぉぉりゃ!」
雪は咄嗟に人体模型の脇腹に退魔の太刀を凪いだ。
刃を抜かないので真っ二つに切れることはなく、人体模型はくの字に体が曲がった。
生身の体の人体模型は殴打した体をのたうち回って転げ回る。
尚更気持ち悪い。
「僕のハート!ボクノハート!ォォォ!それどころか内蔵破裂するぅ痛いぃ!ハート、ハート頂戴!」
「そのハート見つけて息の根止めて欲しいのか!?あぁ?脅すな変態がぁあぁぁぁぁあ?!」
といい、人体模型のおでこを遠慮なくグリグリ踏みつけて睨む。
「ゆ、雪、落ち着こうか?」
東殿下は肩で息を吐いて興奮気味な雪をなだめる。
「……!は、申し訳ありません……」
雪は顔を赤らめて反省をする。
雪は自分の裏の本性を他人に見せることやバレることは恥ずかしい事だと思っている。
人体模型はよろよろと立ち上がると左胸のぽっかりと空いた場所を指さしたあと、本太の胸のあたりを指さして、
「僕のハート返してくれないと、そこのポン太くんの心臓貰っちゃうからね……」
ポン太は骨格標本に羽交い締めされていた。
「た、たすけてぇぇ……」
本太はあまりの恐怖に声を絞り出すように助けを求めた。
「ハートということは心臓の事だよね?」
と東殿下は人体模型に尋ねる。
「もしかして、これのこと?」
東殿下は左手にどくどくと脈打つ心臓を見せる。
模型ならまだしも生身のなまあたたかそうで、血が吹き出しそうな心臓は見ていて気持ちが良いものでは無いと雪は思うが、東殿下は平気のようだ。
むしろ大切そうに両手に持ち替える。
「さっき、アルコールランプの横に置いてあるのを見つけておいたのだけど、すごいね、ほんものみたいだ……」
そして、突然ポロポロと涙をお流しになって、
「お祖父様…いや、陛下のための健康な臓器がこんな所に存在していたなんて……」
日和国の今上帝は東親王殿下の祖父であられ、今はご病気で恐れ多い事ながらご病気であられた。
そして、人体模型の臓器をジロジロとまじまじと見つめるとさらに瞳を輝かせて、
「……その臓器、陛下のために……献上してくれるよねぇぇえ?」
東殿下は人体模型に凄む。
「……それ、僕、人体模型の決めゼリフだし!」
人体は恐れおののいて、東殿下から心臓を、奪うと体に入れて普通の模型に姿を消して動かなくなって閉まった。
「あーあー。残念。」
心無い言葉を東殿下はそう仰った。
その東殿下には珍しく抑揚のない声はいたずらか本心か分からなかった。
「まー…陛下にそんなゲテモノを移植する方が不敬というものですよ」
と、雪はなだめてみた。
そして教室を出る時、
「オレを置いていかないでくれ!頼むから!」
本太はまだ骨格標本に羽交い締めにされたままだった。
と東殿下は仰った。
「オレは理科室は恐ろしいぞ。なんでもホルマリン漬けになってるし、自分がもしあんなふうにされたら……と思うと怖くねぇか?」
本太はわざと肩を抱いて身震いする。
「それ、既に殺人事件ですから、警察案件ですよね?」
と雪は冷静に言った。
「でも、ここは現世じゃないからね……気をつけなきゃダメだよ」
と二宮くんは脅しのような注意をした。
「理科室ってどんな怪談があるのですか?」
「定番なのは人体模型と骨格標本が動き出したり、なくした臓器を探してほしいとか……いって、時間内に見つからないと臓器を取られるとか?」
と東殿下は理科室の怪談にはあまり興味がないのか適当にいった。
「なんだかゲームみたいなもんだな」
「じゃ、入るよ。」
理科室の長く広い机は六個あり、その上にあったアルコールランプが灯るだけのほの暗い教室だ。
それ以外何もなさそうな教室を、ライトを照らしながら巡り、標本がおかれている棚を見ると、カエルの標本は白い古びたものではなく生々しく脈打ってこちらを睨む。
「ぎゃあ!」
といい、本太は雪の背中に隠れた。
「いい反応だねぇ」
二宮くんはニヤニヤ笑う。
一周して出るだけかな?と思いつつ、骨格標本や人体模型はどこだろうと思いつつ教室の黒板にライトを当てると、何やら文字が書いてある。
「僕のハートを探してください……でないと……」
と書いてあった。
やはり、東殿下の噂通りのシュチュエーションで来るものなのかと雪は身構える。
とんとん、肩を叩かれて後ろを向くと、
人体模型が生身の人間のような息つかいをして立っていた。
《僕のハートみつけて……でないと……》
「うおぉぉりゃ!」
雪は咄嗟に人体模型の脇腹に退魔の太刀を凪いだ。
刃を抜かないので真っ二つに切れることはなく、人体模型はくの字に体が曲がった。
生身の体の人体模型は殴打した体をのたうち回って転げ回る。
尚更気持ち悪い。
「僕のハート!ボクノハート!ォォォ!それどころか内蔵破裂するぅ痛いぃ!ハート、ハート頂戴!」
「そのハート見つけて息の根止めて欲しいのか!?あぁ?脅すな変態がぁあぁぁぁぁあ?!」
といい、人体模型のおでこを遠慮なくグリグリ踏みつけて睨む。
「ゆ、雪、落ち着こうか?」
東殿下は肩で息を吐いて興奮気味な雪をなだめる。
「……!は、申し訳ありません……」
雪は顔を赤らめて反省をする。
雪は自分の裏の本性を他人に見せることやバレることは恥ずかしい事だと思っている。
人体模型はよろよろと立ち上がると左胸のぽっかりと空いた場所を指さしたあと、本太の胸のあたりを指さして、
「僕のハート返してくれないと、そこのポン太くんの心臓貰っちゃうからね……」
ポン太は骨格標本に羽交い締めされていた。
「た、たすけてぇぇ……」
本太はあまりの恐怖に声を絞り出すように助けを求めた。
「ハートということは心臓の事だよね?」
と東殿下は人体模型に尋ねる。
「もしかして、これのこと?」
東殿下は左手にどくどくと脈打つ心臓を見せる。
模型ならまだしも生身のなまあたたかそうで、血が吹き出しそうな心臓は見ていて気持ちが良いものでは無いと雪は思うが、東殿下は平気のようだ。
むしろ大切そうに両手に持ち替える。
「さっき、アルコールランプの横に置いてあるのを見つけておいたのだけど、すごいね、ほんものみたいだ……」
そして、突然ポロポロと涙をお流しになって、
「お祖父様…いや、陛下のための健康な臓器がこんな所に存在していたなんて……」
日和国の今上帝は東親王殿下の祖父であられ、今はご病気で恐れ多い事ながらご病気であられた。
そして、人体模型の臓器をジロジロとまじまじと見つめるとさらに瞳を輝かせて、
「……その臓器、陛下のために……献上してくれるよねぇぇえ?」
東殿下は人体模型に凄む。
「……それ、僕、人体模型の決めゼリフだし!」
人体は恐れおののいて、東殿下から心臓を、奪うと体に入れて普通の模型に姿を消して動かなくなって閉まった。
「あーあー。残念。」
心無い言葉を東殿下はそう仰った。
その東殿下には珍しく抑揚のない声はいたずらか本心か分からなかった。
「まー…陛下にそんなゲテモノを移植する方が不敬というものですよ」
と、雪はなだめてみた。
そして教室を出る時、
「オレを置いていかないでくれ!頼むから!」
本太はまだ骨格標本に羽交い締めにされたままだった。
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