主婦と神様の恋愛事情

花咲蝶ちょ

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雪と東殿下と学校七不思議

5☆いざ出発!

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「どの学校の七不思議も、生徒を残らせたくないデマってこともあるんだけど、今回は当たりだったね!」

 東殿下は瞳を輝かせて神に拝むように手を組んで願いが叶った事を喜んでいる。

 幾つも転校しては不思議体験していたが、どれもハズレだった。
 当たったとしてもいじめられて悲しい生徒の霊だったりした。
 それはそれで問題だったが、今回はそんな悲しいことも無い学校で、いたずら好きな幽霊が集まる不思議な土地柄のようだと思う。

 もう少しよく調べれば何かいわくつきなことがわかりそうだが、今の現状をクリアしてから調べるとするかと東殿下は考える。

「で、二宮くん。あとどこ行けばいいの?」
 怪しげな生徒にそう訪ねる。
 二宮とは東殿下が勝手につけた名前だ。
 下の名前はやっぱり金次郎なのかしらと雪は思う。
【二宮くん】と言われた生徒は否定もしない。
 嫌な顔しない。
 仮面を貼り付けたように笑顔だ。
「それで、どこまで七不思議をなされたのですか?」
 雪が閉じこめられる前まで色々経験なさったようだ。
「まずは、体育館でいきなりバスケットボールが生首になるって噂を聞きつけて、成仏させたんだよ。てか、いたずら好きな浮遊霊だったけどね。」
 雪もその話は従兄弟から聞いたことがあった。
 従兄弟は桜太郎が、雪より十二歳年上で兄妹たちは二、三歳、づつ歳が離れている。六人兄妹だ。
 そして雪が一番年下である。
 学校の噂は色々聞いていたりしたが実際見たことはないらしい。
 むしろ、義父の季節の影響で好き嫌いが分かれる。
 桜太郎は嫌いな方だった。むしろいないと信じているので雪は桜太郎に幽霊事件の事は話さない。
 義母はどちらでもなく、太刀に選ばれた者は幽霊は近づかなくなる体質になるためもう見ることが出来ないと嘆いていた。
 バスケットボールの噂を聞いた時、「誰かその部活に入りなさい!」とか冗談を言っていた事を思い出して、口元を抑えて、ふふっと笑う雪だった。
 東殿下はそんな可愛い笑いをするんだと少し雪に見とれた。

「……で、他にも怪談があるよと言われて、定番の十三階段?ってやつ。というか、十三階段以上あって、ずーっと永遠に階段上り下りさせられそうになって、御札を貼ったら、止まったんだよね。」
 東殿下は、やれやれという仕草をした。
 東殿下の御札はどんなあやかしにも幽霊にも有効な東殿下独特のシラスの力を込めた御札だ。
 結界も張れれば封印もできるすぐれものだ。

(今すぐその怪しい生徒に貼ってやればいいのに……)
 と雪は二宮を睨み思うが、東殿下は七不思議を全てクリアする気満々だ。
「こんなほんとに、不思議現象初めてだからできる限り調べたいよね⁉」
 瞳をきらめかせて、雪に同意を求める。
「あとどこと、どこを調べるのですか?」
 雪は諦めてそう尋ねた。
「音楽室とトイレと理科室かな?」
「でも、特別室は向こうの校舎ですよね。先生はまだいると思うんですけど…」
 橋になっていてどの階でも第二校舎につながるのだ。
「空間が別だからいないよ。安心して」
と二宮くんは言うが、安心なんてできるわけもない。
(むしろ不安がましたわ!)
 と雪は思う。
「でも、それじゃまだ七つになりませんよね?」
 七不思議なのに、六しかないとはどういう事だろうと思う。
 二宮は、ニヤニヤ笑ってる。
 答える気はないようだが、

「最後の七つ目を知った生徒は行方不明になって、わからないと言うよね!それほど面白い事が起こるってことだよね?楽しみだよね!」
 と目を輝かせて東殿下はさらに興奮気味だった。
 その恐ろしさに怖気付くことの無い七不思議の恐怖も形無しな態度に怪しげな生徒は苦笑する。
「もうすでに、外の世界では東殿下は行方不明になってますから、迷惑かけずに早く帰りましょうよ…」
「フフ、帰れたらいいね。」
さらっと、二宮はそう言ってニヤニヤ笑っていることに不気味さと苛立ちで今すぐ叩き斬ってやりたい気分だ。

 雪は二宮に対して警戒を解かずに東殿下と共に並んでいざ七不思議探検に歩き出すのだった。
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