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雪と東殿下と学校七不思議
2☆退魔の太刀
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雪の通う中学には体育館の他に立派な武道館があった。
荷物置きのロッカーも個人のものを貰えた。
今は剣道部と合気道部、柔道部が日にちをずらして使っていた。
そして今日は剣道部の使用日だった。
だが、指導の先生が今日は職員会議出いなかったのでいつもより一時間早く部活を切り上げることになった。
雪はロッカーから竹刀袋よりも丈の長い刀を背負う。
見た目は重そうだが持ち主である雪には羽が生えたように軽く感じる。
「さ。帰ろうか。」
と、刀に声をかける。
刀が頷いたように感じて雪も満足だ。
桜庭の家は恵土末期からの宮家でもある。
桜庭の宮は武道に長けていて軍人をやっていた。
日和国では後継が女子になると自動的に宮家から外される。
(皇族の血を継ぐ養子を恐れ多くも頂けたならば継続される)
だが、桜庭の女子だけに受け継がれる刀は身分や出生関係なく受け継がれている。
受け継いだ女子は処女でなくなるまで持ち歩くことが習わしだった。
旧宮家であって武士の家系でもある雪は剣道部に入ったのは義父の教えにより剣道がもとから好きなことと、刀を仕舞える場所が欲しかったからだ。
肌見放さずと言っても、授業中までそばに置くことはできないからだった。
この退魔の太刀は悪霊、怨霊と化した人の思い、御霊を断ち切る。悪縁や邪念を断つ神が宿る退魔の太刀だと義母は教えてくれた。
もし、そのような人ならざるものに出くわしたのならば、主を守るために百戦錬磨の武士の身体能力を授けて敵をなぎ倒す力を授けるのだ。
祈る思い、願いがあるのと同じで悪霊や怨霊は人が存在する限り雑念、悪念、邪念は消えない。
そのため、そのような悪しき思い、願いが、祝皇、祈り姫に取り憑くようなことがあらば断ち切る役目も担っていたという。
神代からの歴史をもつ日和国には太刀の者と呼ばれる特殊能力を用いた者は沢山いて宮中警察の近衛としていまも両陛下、殿下をお守りしている。
そして、宮中に出仕しない退魔の太刀を持つものは、宮中の緊急の呼び出しには必ず駆けつけることも義務だった。
違法に刀を持ち歩くとも信任として宮中から許可をえていた。
刀袋に金に輝く皇室の御紋を頂いているのがその証だ。
警察がこれを見れば何事もなく許された。
だがその存在も悪用されないために一般人に内緒だ。
今日は武道館の鍵閉め当番だった。
雪は誰も残ってないことを確認して、扉を締めて職員室に鍵を渡しに行った。
☆
夕暮れの校舎に黒スーツを着た大人が三人ウロウロと焦っているようだった。
変質者でも学校の先生ではなく東殿下の大人のボディガードだ。
東殿下には黒スーツにサングラスという、如何にも!と言うようなボディガード(宮廷警察の護衛を任されている者)がそばをお守りしていることは誰もが知っていた。
尊き御方に何かあっては行かないとわかるが生徒は気になってしまい、東殿下も辟易している。
そして、イタズラっ子な東殿下のささやかな反抗期のためにまた、まかれたみたいだ。
「どうなさったのですか?」
その中に、桜庭家の道場に通ってる門下生が東殿下の護衛をしている20代後半の優男風の榊誠に声をかけてみた。
「ああ、雪ちゃん!天の助けだぁぁあ!」
と突然ブワッと涙があふれんばかりに雪の手を握ってそういった。
「東殿下が行方不明なのです!また私達を巻いて学校で隠れん坊をしている可能性が高いので探しているところです。」
(やっぱり……またか……)
と雪はため息をはいた。
雪は三日前に東殿下が見つけた学校近くにあるお化け屋敷に連れていかれた。
護衛として東殿下をお守りして事なきを得たが、東殿下は反省してないようだ。
「校舎内には入るなと校長に言われているので…申し訳ないですが、構内をさかしてもらえないでしょうか……?
見つけ次第こちらの無線でお知らせください。」
と有無を言わさず、雪の手をぎゅっと握ると手の中に無線機を、渡された。
雪は引きつり笑顔をする。
(私は東殿下のごえいになるつもりはないのに……)
ハァ…と、ため息を吐くが、背負っている太刀はどこか楽しげな気配を感じた。
雪にはわかる。
この太刀は【退魔】の太刀だけあって、東殿下と同じにそういう不思議の気配に敏感で、退治することを楽しむのだ。
雪はしかたないか……
と太刀の気持ちに従い東殿下を探しにいくのだった。
荷物置きのロッカーも個人のものを貰えた。
今は剣道部と合気道部、柔道部が日にちをずらして使っていた。
そして今日は剣道部の使用日だった。
だが、指導の先生が今日は職員会議出いなかったのでいつもより一時間早く部活を切り上げることになった。
雪はロッカーから竹刀袋よりも丈の長い刀を背負う。
見た目は重そうだが持ち主である雪には羽が生えたように軽く感じる。
「さ。帰ろうか。」
と、刀に声をかける。
刀が頷いたように感じて雪も満足だ。
桜庭の家は恵土末期からの宮家でもある。
桜庭の宮は武道に長けていて軍人をやっていた。
日和国では後継が女子になると自動的に宮家から外される。
(皇族の血を継ぐ養子を恐れ多くも頂けたならば継続される)
だが、桜庭の女子だけに受け継がれる刀は身分や出生関係なく受け継がれている。
受け継いだ女子は処女でなくなるまで持ち歩くことが習わしだった。
旧宮家であって武士の家系でもある雪は剣道部に入ったのは義父の教えにより剣道がもとから好きなことと、刀を仕舞える場所が欲しかったからだ。
肌見放さずと言っても、授業中までそばに置くことはできないからだった。
この退魔の太刀は悪霊、怨霊と化した人の思い、御霊を断ち切る。悪縁や邪念を断つ神が宿る退魔の太刀だと義母は教えてくれた。
もし、そのような人ならざるものに出くわしたのならば、主を守るために百戦錬磨の武士の身体能力を授けて敵をなぎ倒す力を授けるのだ。
祈る思い、願いがあるのと同じで悪霊や怨霊は人が存在する限り雑念、悪念、邪念は消えない。
そのため、そのような悪しき思い、願いが、祝皇、祈り姫に取り憑くようなことがあらば断ち切る役目も担っていたという。
神代からの歴史をもつ日和国には太刀の者と呼ばれる特殊能力を用いた者は沢山いて宮中警察の近衛としていまも両陛下、殿下をお守りしている。
そして、宮中に出仕しない退魔の太刀を持つものは、宮中の緊急の呼び出しには必ず駆けつけることも義務だった。
違法に刀を持ち歩くとも信任として宮中から許可をえていた。
刀袋に金に輝く皇室の御紋を頂いているのがその証だ。
警察がこれを見れば何事もなく許された。
だがその存在も悪用されないために一般人に内緒だ。
今日は武道館の鍵閉め当番だった。
雪は誰も残ってないことを確認して、扉を締めて職員室に鍵を渡しに行った。
☆
夕暮れの校舎に黒スーツを着た大人が三人ウロウロと焦っているようだった。
変質者でも学校の先生ではなく東殿下の大人のボディガードだ。
東殿下には黒スーツにサングラスという、如何にも!と言うようなボディガード(宮廷警察の護衛を任されている者)がそばをお守りしていることは誰もが知っていた。
尊き御方に何かあっては行かないとわかるが生徒は気になってしまい、東殿下も辟易している。
そして、イタズラっ子な東殿下のささやかな反抗期のためにまた、まかれたみたいだ。
「どうなさったのですか?」
その中に、桜庭家の道場に通ってる門下生が東殿下の護衛をしている20代後半の優男風の榊誠に声をかけてみた。
「ああ、雪ちゃん!天の助けだぁぁあ!」
と突然ブワッと涙があふれんばかりに雪の手を握ってそういった。
「東殿下が行方不明なのです!また私達を巻いて学校で隠れん坊をしている可能性が高いので探しているところです。」
(やっぱり……またか……)
と雪はため息をはいた。
雪は三日前に東殿下が見つけた学校近くにあるお化け屋敷に連れていかれた。
護衛として東殿下をお守りして事なきを得たが、東殿下は反省してないようだ。
「校舎内には入るなと校長に言われているので…申し訳ないですが、構内をさかしてもらえないでしょうか……?
見つけ次第こちらの無線でお知らせください。」
と有無を言わさず、雪の手をぎゅっと握ると手の中に無線機を、渡された。
雪は引きつり笑顔をする。
(私は東殿下のごえいになるつもりはないのに……)
ハァ…と、ため息を吐くが、背負っている太刀はどこか楽しげな気配を感じた。
雪にはわかる。
この太刀は【退魔】の太刀だけあって、東殿下と同じにそういう不思議の気配に敏感で、退治することを楽しむのだ。
雪はしかたないか……
と太刀の気持ちに従い東殿下を探しにいくのだった。
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