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あやかしと神様の愛の契(最終回)
5☆神呪い
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「葛葉子…」
やっと現で逢えた愛しい葛葉子の顔が霞んで見えなくなり瞳を閉じる。
瑠香は葛葉子にもたれるように口から血を吐いて息絶える。
威津那を縛っていた光の縄も消える。
葛葉子は足元に死に絶える瑠香を無表情にみつめる。
葛葉子は威津那に操られて助け起こす事も出来ない。
身体の縛りは解かないつもりだ。
「ルカの神は死んだ…これで皇室の守りは弱まった…よくやった…葛葉子…」
威津那は葛葉子を胸に抱いて頭を撫でる。
死んだ愛しい男を見せないようにしてやる。
無表情で操られてはいるが、心の叫びが涙に溢れて溢れて止まらない。
そんな葛葉子の頭を引き寄せて慰める。
「瑠香くんだって…お前に長く生きていて欲しいだろう…己が死したとしても…」
本当は威津那自身、橘に出来るものならその選択をしただろう。
「私は短い命でも、瑠香と共に有りたい…そばにいたいんだ…
なのに…瑠香が死んでしまったら私の望みはもう叶わない……」
葛葉子は支配を緩められて思いを口にする。
父親である威津那を恨むように言う。
いや、完璧に絶望をしている…
「叶わなくていい…それが君が生きるためでもあるのだから…」
「そんなの私にもう生きる意味はないよ…愛しい人がそばにいないなんて…」
「その気持よくわかるよ…痛いほど……」
泣く葛葉子を宥めさせるために、部屋につれて落ち着かせ葛葉子の記憶の中の愛おしいものを消させよう。
そのことが一番辛いだろうが、忘れてしまえば辛さなど…
と思いつつ苦笑する。
優しく甘い瑠香は威津那にそうしようとして葛葉子に殺される宿命になったことに…
ほんとに甘い…そんな甘さでは所詮、陛下をお守りすることも出来なかっただろうと思う。
もっと非常にならねば…皇室は滅ぼされる…
そんな事を自分が心配する筋合いも無いことなのだが、更に苦笑するしかなかった。
「今度こそ九尾の狐を使い皇室に滅びを……」
誓は成立したのだから…
扉に手をかけて、ルカの神の化身ごと異界に封じてやろうと思いながら最後に死した瑠香を見やるとむくりと起き上がっていた。
「……勝手に殺すな…オレは生きてる…」
瑠香はそう言いながら生きていることを自分でも驚き、納得した顔をする。
「なぜ……」
威津那は目を見開き驚愕する。
黄泉へ行く時に八尾比丘尼の血を飲んで生き返った…
生き返るのはただ一度のはずだ…
「ルカの神の化身になり黄泉へ行って『生き帰る』のと、黄泉へ行かずに『生き返る』のは違うということだ…!」
瑠香は不敵に笑う。
口元についた自分の血を手の甲で拭い、
「今度こそ、あなたの宿命を止める…」
不敵に笑う。
そんな瑠香がかっこ良くて葛葉子は頬を紅潮させてドキドキと胸が高鳴る。
「瑠香……よかった…っ!」
「だめだよ…君を絶対に死なせない!」
威津那は管狐の呪術を強める為、葛葉子に無理やり舌を絡ませ縛る。
「ゥヴぅううっ!」
葛葉子は四つん這いになると体が狐に変化する。
見る見る間に九尾の狐の姿に変えられてしまった。
そして、さらに、体に炎をまとう。
威津那は娘の心も殺す勢いかと、瑠香は思う。
もう、父親でもない……!
「九尾よ!やつを殺せ!体ごと燃やし尽くしてしまえっ!」
体が勝手に瑠香を殺そうと威嚇する。
今すぐ飛びかかりそうな姿勢になる。
『いやだっ!殺したくない!』
葛葉子の心の叫びが瑠香に聞こえる。
威津那の瞳に宿る殺気は本物だ。今までの哀れみは全く無い。
心まで闇に落ちて狂いそれを力にして九尾の狐の妖力をあやつる。
「瑞兆になる誓いが叶えられなくなるように!」
管狐である葛葉子の体は逆らえない。
それほどの怒りと必死さが威津那にはある。
その思いが九尾の狐の力を最大限に呼び覚まし、とてつもない炎を纏う。
正直、威津那の強さに驚愕する瑠香に、
《あれにやられたら、神の身でも死ぬ…神ごと消すつもりだ》
ルカの神の声は冷静だった。
その静かな冷静な声に神の化身となった瑠香自身も落ち着く。
「どうすれば…」
《私の神の身になった瑠香ならわかるはず…山籠りした時の札の呪を使えるはずだ…》
葛葉子と山に登った時に手に入れた札はルカの神が覚えた…
ゴッっという炎と風の凄まじい音に、ハッと目の前に意識を戻すと、炎を纏った九尾の狐の葛葉子が迫りくる。
『瑠香!避けて!お願い!』
瑠香は避けずに葛葉子と瞳を合わせ瞳を蒼に煌めかし、
「呪い(誓)に苦しみ呪い(誓)に癒しを……」
葛葉子の勢いはピタリと止まる。
「ヴゥぁぁアウウッ!」
葛葉子は自らの炎を自身を焼くように苦しむ。
「葛葉子っ!」
威津那も瑠香もその苦しむ様子にあせる。
《それは、瑠香の言霊のせいでもあるよ…》
ルカの神は少し憐れむ声で告げる。
「なんだって!?」
《威津那の管狐として炎で殺そうする呪術は、瑠香に向けられたもの…
神の眷属となる葛葉子の心が瑠香を思い、それを打ち砕き瑠香の言霊通り、呪いに苦しみ、癒やされるのだよ…》
(そういうデメリットは早く言ってくれ!)
「葛葉子!」
瑠香は苦しむ葛葉子を心底心配し駆け寄ろうとするが、
『大丈夫だよ…なんとか、してみせる!から!』
威津那に呪いかけられている菊だ。そして葛葉子は瑠香に神呪いをかけられた。
対立する呪いをどうにかできるのは自分しかない!と強く思う。
魂をイメージして苦しむ菊を抱きしめる。
魂の葛葉子と白狐の菊は向き合う。
『瑠香を信じよう…陛下に寿ぎをしよう』
『良いのか…?変えられぬ運命だぞ…』
『うん…瑠香と幸せな家庭を作らせてくれる?』
『望まなくてもあの神が叶えるだろう…私が出来るのはお前を死なせないことだけだ』
菊は葛葉子の魂の中に入った。
威津那は九尾が管狐としての縛りが解けかけて威津那は焦る。
「葛葉子!瑠香を殺すんだ!それが、お前のためだ!」
術を縛るために呪を唱える。
「葛葉子…お前は一生オレのそばにいるんだ!眷属として、妻としてそばにいることが宿命だっ!」
瑠香は葛葉子に届くように言霊を叫ぶ。
瑠香の言霊に雷を打たれた様に体から縛られる。
二重の式神としての立場として神の力を操れる瑠香のほうが勝った。
毒は毒を制すということか癒すことだということか、管狐としての呪詛がとけて、瑠香にかかる呪いを葛葉子が受け止め苦しむが言霊通り打ち砕き、打ち砕いた呪は主にかえるため炎をまとった九尾は威津那を襲った。
「ぐうあぁ!」
避けることすら出来なかった威津那は炎に苦しむ。
『父様ぁっ!』
「九尾の炎を納めろ!」
瑠香の言霊で葛葉子に纏う炎は威津那に襲いかかった炎も消した。
やっと現で逢えた愛しい葛葉子の顔が霞んで見えなくなり瞳を閉じる。
瑠香は葛葉子にもたれるように口から血を吐いて息絶える。
威津那を縛っていた光の縄も消える。
葛葉子は足元に死に絶える瑠香を無表情にみつめる。
葛葉子は威津那に操られて助け起こす事も出来ない。
身体の縛りは解かないつもりだ。
「ルカの神は死んだ…これで皇室の守りは弱まった…よくやった…葛葉子…」
威津那は葛葉子を胸に抱いて頭を撫でる。
死んだ愛しい男を見せないようにしてやる。
無表情で操られてはいるが、心の叫びが涙に溢れて溢れて止まらない。
そんな葛葉子の頭を引き寄せて慰める。
「瑠香くんだって…お前に長く生きていて欲しいだろう…己が死したとしても…」
本当は威津那自身、橘に出来るものならその選択をしただろう。
「私は短い命でも、瑠香と共に有りたい…そばにいたいんだ…
なのに…瑠香が死んでしまったら私の望みはもう叶わない……」
葛葉子は支配を緩められて思いを口にする。
父親である威津那を恨むように言う。
いや、完璧に絶望をしている…
「叶わなくていい…それが君が生きるためでもあるのだから…」
「そんなの私にもう生きる意味はないよ…愛しい人がそばにいないなんて…」
「その気持よくわかるよ…痛いほど……」
泣く葛葉子を宥めさせるために、部屋につれて落ち着かせ葛葉子の記憶の中の愛おしいものを消させよう。
そのことが一番辛いだろうが、忘れてしまえば辛さなど…
と思いつつ苦笑する。
優しく甘い瑠香は威津那にそうしようとして葛葉子に殺される宿命になったことに…
ほんとに甘い…そんな甘さでは所詮、陛下をお守りすることも出来なかっただろうと思う。
もっと非常にならねば…皇室は滅ぼされる…
そんな事を自分が心配する筋合いも無いことなのだが、更に苦笑するしかなかった。
「今度こそ九尾の狐を使い皇室に滅びを……」
誓は成立したのだから…
扉に手をかけて、ルカの神の化身ごと異界に封じてやろうと思いながら最後に死した瑠香を見やるとむくりと起き上がっていた。
「……勝手に殺すな…オレは生きてる…」
瑠香はそう言いながら生きていることを自分でも驚き、納得した顔をする。
「なぜ……」
威津那は目を見開き驚愕する。
黄泉へ行く時に八尾比丘尼の血を飲んで生き返った…
生き返るのはただ一度のはずだ…
「ルカの神の化身になり黄泉へ行って『生き帰る』のと、黄泉へ行かずに『生き返る』のは違うということだ…!」
瑠香は不敵に笑う。
口元についた自分の血を手の甲で拭い、
「今度こそ、あなたの宿命を止める…」
不敵に笑う。
そんな瑠香がかっこ良くて葛葉子は頬を紅潮させてドキドキと胸が高鳴る。
「瑠香……よかった…っ!」
「だめだよ…君を絶対に死なせない!」
威津那は管狐の呪術を強める為、葛葉子に無理やり舌を絡ませ縛る。
「ゥヴぅううっ!」
葛葉子は四つん這いになると体が狐に変化する。
見る見る間に九尾の狐の姿に変えられてしまった。
そして、さらに、体に炎をまとう。
威津那は娘の心も殺す勢いかと、瑠香は思う。
もう、父親でもない……!
「九尾よ!やつを殺せ!体ごと燃やし尽くしてしまえっ!」
体が勝手に瑠香を殺そうと威嚇する。
今すぐ飛びかかりそうな姿勢になる。
『いやだっ!殺したくない!』
葛葉子の心の叫びが瑠香に聞こえる。
威津那の瞳に宿る殺気は本物だ。今までの哀れみは全く無い。
心まで闇に落ちて狂いそれを力にして九尾の狐の妖力をあやつる。
「瑞兆になる誓いが叶えられなくなるように!」
管狐である葛葉子の体は逆らえない。
それほどの怒りと必死さが威津那にはある。
その思いが九尾の狐の力を最大限に呼び覚まし、とてつもない炎を纏う。
正直、威津那の強さに驚愕する瑠香に、
《あれにやられたら、神の身でも死ぬ…神ごと消すつもりだ》
ルカの神の声は冷静だった。
その静かな冷静な声に神の化身となった瑠香自身も落ち着く。
「どうすれば…」
《私の神の身になった瑠香ならわかるはず…山籠りした時の札の呪を使えるはずだ…》
葛葉子と山に登った時に手に入れた札はルカの神が覚えた…
ゴッっという炎と風の凄まじい音に、ハッと目の前に意識を戻すと、炎を纏った九尾の狐の葛葉子が迫りくる。
『瑠香!避けて!お願い!』
瑠香は避けずに葛葉子と瞳を合わせ瞳を蒼に煌めかし、
「呪い(誓)に苦しみ呪い(誓)に癒しを……」
葛葉子の勢いはピタリと止まる。
「ヴゥぁぁアウウッ!」
葛葉子は自らの炎を自身を焼くように苦しむ。
「葛葉子っ!」
威津那も瑠香もその苦しむ様子にあせる。
《それは、瑠香の言霊のせいでもあるよ…》
ルカの神は少し憐れむ声で告げる。
「なんだって!?」
《威津那の管狐として炎で殺そうする呪術は、瑠香に向けられたもの…
神の眷属となる葛葉子の心が瑠香を思い、それを打ち砕き瑠香の言霊通り、呪いに苦しみ、癒やされるのだよ…》
(そういうデメリットは早く言ってくれ!)
「葛葉子!」
瑠香は苦しむ葛葉子を心底心配し駆け寄ろうとするが、
『大丈夫だよ…なんとか、してみせる!から!』
威津那に呪いかけられている菊だ。そして葛葉子は瑠香に神呪いをかけられた。
対立する呪いをどうにかできるのは自分しかない!と強く思う。
魂をイメージして苦しむ菊を抱きしめる。
魂の葛葉子と白狐の菊は向き合う。
『瑠香を信じよう…陛下に寿ぎをしよう』
『良いのか…?変えられぬ運命だぞ…』
『うん…瑠香と幸せな家庭を作らせてくれる?』
『望まなくてもあの神が叶えるだろう…私が出来るのはお前を死なせないことだけだ』
菊は葛葉子の魂の中に入った。
威津那は九尾が管狐としての縛りが解けかけて威津那は焦る。
「葛葉子!瑠香を殺すんだ!それが、お前のためだ!」
術を縛るために呪を唱える。
「葛葉子…お前は一生オレのそばにいるんだ!眷属として、妻としてそばにいることが宿命だっ!」
瑠香は葛葉子に届くように言霊を叫ぶ。
瑠香の言霊に雷を打たれた様に体から縛られる。
二重の式神としての立場として神の力を操れる瑠香のほうが勝った。
毒は毒を制すということか癒すことだということか、管狐としての呪詛がとけて、瑠香にかかる呪いを葛葉子が受け止め苦しむが言霊通り打ち砕き、打ち砕いた呪は主にかえるため炎をまとった九尾は威津那を襲った。
「ぐうあぁ!」
避けることすら出来なかった威津那は炎に苦しむ。
『父様ぁっ!』
「九尾の炎を納めろ!」
瑠香の言霊で葛葉子に纏う炎は威津那に襲いかかった炎も消した。
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