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あやかしと神様の黄泉がえり

27☆ヨミの道

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 瑠香は目が覚めると一面真っ暗の中にキラキラとダイヤモンドのように鉱石が天の川のように光る道に寝ていた。
 鉱石の道はくねくねと暗闇を蛇行している。
 明かりはこのキラキラとした道と優しく耀く満月だけ。
 本来、現し世ならば新月で光り輝かない。
 月は現し世を姿を変えて輝くだけではなく、黄泉の国をも優しく照らす。
 ヨミの国とツクヨミ…ヨミつながりで今歩く道は、夜道…世道よみちか…とダジャレのような納得を一人しながら葛葉子がいるであろう世道を歩く。
 道がなくなり闇の壁が瑠香をはだかった。
 黄泉の国でイザナミの女神の美しく通る声が聞こえる。

『愛しい女の手を取り、葛葉子を振り向かずに現世に戻るのだ。
そうすれば葛葉子の命は救い出せる。』

 それは…イザナギの大神が愛しい妻を黄泉の国へ迎えに来た神話と同じ神試しかと察する。

 暗闇の中、淡く光るような白い女の手が伸びる。 
 八十本くらい伸びてきて、手をおいでおいでと何かをつかむように動かしている。

「葛葉子の…腕か?」
 正直葛葉子の腕でなかったら気持ち悪いと思っていたかも。

《見極めて、手を掴み現し世に帰るまで振り向いてはならぬ。》

 また女神の声がそう告げた。
 フフっと含み笑いも感じる。

「分かった…」

 どれも葛葉子の手に見える。
 正直、難しかった。
 黄泉の国は香りを感じない…

 瑠香は腕を組み、じっと慎重に選ぶ。
 一本だけ腕に獣に噛まれた跡がある。

 瑠香は想像する。
 葛葉子と九尾は喧嘩をしたのかもと…
 そう思うと迷わず手を掴み、恋人繋ぎをする。

 一瞬ためらう握り方は葛葉子の手に間違いない。

 そのまま葛葉子の姿を確認せずに闇の壁から引っ張って、来た世道を少し早足で戻ろうとする。
 キラキラした光の道は満月に続いていた。
 満月に向かって帰れば良いのだと察する。

「葛葉子、帰ったら、お前を抱いて離さないし、どこにもやらないからなっ!…嫌だって言っても逃さないからな!」
 瑠香は現し世に帰った時の希望を込めてそう言う。
 穢れた身でも何でも抱いてやる。
 抱かずにいられないほどの愛しさが胸を占める。
 いつかルカの神を誰かの依り代にするとき言霊は解除される。
 その時葛葉子に思う存分言おうと思っていた。
 神の化身になり、愛の言霊を自分はもう言えないのならば、やはり体で伝えたい…どうしても…… 

「ほんとに私でいいの?」
 葛葉子は疑わせる言葉を瑠香に問かける。
「振り向いて……お願い…私を見て…」
 そして、切ない苦しそうな雰囲気を言葉に出して葛葉子は瑠香にいう。

「嫌だね。」
「私のこと嫌いなの?」
「嫌いだったら迎えに来ない」
「ならどうして生きてるの?死んで私と一緒にこの国で暮らそうよ…」
「肉体のない体じゃ満足できないんだよ。
 オレはドスケベだからな。
……お前の乳房を選べって試練だったらよかったのに…
 もみ心地で判断できたぞ。自信はある。」

 わざと凄くエロいことを言って嫌がるだろう葛葉子の反応を試してみたくなった。

「揉んでかわいいお前の喘ぎ声で判断させる試練がよかったな!」

「……………」

 葛葉子は瑠香のあまりのドスケベさに言葉を失ってしまった。

 泣いたり喚いたりして、男神を振り向かせる神試しに瑠香は勝った!と思った…
 その瞬間遠くで雷が、鳴り響いた。

《……イザナミ大神は下品なことは嫌いだから慎むように…妄想も筒抜けです》
 イザナミの大神ではない女神に注意された。
 言葉で言いながら下品な妄想をしてしまったことまで筒抜けてしまうとは…
 少し恥ずかしいと思う瑠香は顔を赤くした。

 瑠香は握る手をぎゅっと握りしめて黙って月に向かって歩く事にした。

「意地悪しないでこっちむいてよ、私を信用できないの?」
(ふりむかないで、信用してくれて嬉しい)
 と思っているのに反対の言葉がやはりでてきて葛葉子は悲しく思う…

「オレは元来性悪なんだよ。
 最大限にいじわるされていろ」

それは知っていた…

 意地悪で強引で偉そうで…
でも優しくて…純粋で弱いところもある瑠香が好き…
「瑠香なんてきらい…」
 やっぱり逆な言葉が出てきてしまう。
「何度でも、オレを好きにさせてみせるからいいんだよ。」
 自信たっぷりに言って、手をさらに強く握られて涙が溢れて止まらない…嬉しすぎて……

「意地悪だからきっと、もっと泣け!と思ってる……?」
「ベッドで何度も啼かせてやるよ」
 またスケベなことをいうから言葉が詰まる。
 瑠香はその反応を楽しんでる。
ドドンと雷がなる。

《もうすぐ…現し世だよ…》
ルカの神が迎えに来てくれた。

《これからが、お前たちの宿命が定まる最終決着だよ……》

 阿倍野殿の事を正直忘れていた……
 葛葉子を抱くには阿倍野殿を止めなくてはいけないうけいを交わしている。
「わかってる…葛葉子を今度こそ正式に貰い受けに阿倍野殿と決着つける…」

《私が見せた未来を望むのならば……努力せよ…私はお前たちを常に祝いでいるからね……》

「ルカの神はやさしいな…」
 イザナミの試練の首輪はいつの間に外れていたので本当の言葉がでてきた。

《私だって優しいぞ……そのドスケベ男神と幸せになれ…》
 そうイザナミの声が聞こえて意識が白い光に包まれた。

☆☆

「か…瑠香!おきて!瑠香!」
 東殿下の必死に起こす声が聞こえる。
 瑠香はハッして目を覚ます。
 腕に抱いていた葛葉子の重みはないし、むしろ、東親王が瑠香に馬乗りになられていた。

「葛葉子の体が阿倍野殿に攫われちゃったんだ!」
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