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あやかしと神様の黄泉がえり

17☆操られた審神者

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 宮中に葛葉子が足を踏み入れた時からもう戦いは始まっていた。
 宮中の神聖なる炎を全て九尾の狐の炎に一瞬にして変えた。
 青黒い不気味な炎に巫女たちは怯える。

 霊感がない職員達も肌を刺すような異様な雰囲気に怯えていた。

 その雰囲気が宮中外には漏れなかった。

 一般人をつかって宮中に攻めるように操られたら面倒だなと先を考えた東は宮中宮殿に事前に結界の札を貼っていた。
 葛葉子が消えてから手すきの職員を集めて出来る限り札を貼ったおかげでこの凄まじい妖気は外に出ない。

 あやかしの四神を眷属にした瑠香も操られているので四方の封印は甘くなっていた。
 ただでさえ葛葉子は九尾の狐に操られている。
 救いなことは四方のあやかしは深夜過ぎではないと活動しないという事だ。

シャン、シャン、シャン

 と葛葉子が歩くたびに涼し気な音を鳴らずが不気味な妖気が近づく合図のようでもあった。

 葛葉子はセーラー服ではなく古代の大陸の絹の道と言われた国の踊り子のような薄い布にコインが布に巻き付かれて地に足をつくたびにシャン!と鳴る。
 手足首にも金の鈴とコインのアクセサリーを身につけている。
 胸元には瑠香の香り袋のネックレスがある。だが九尾の葛葉子は気が付かない。自分の体の一部のように…
 スタイルの良い葛葉子の体のラインが強調される服装だ。
 天女の衣を肩から浮かせてきつね耳に九尾の狐のしっぽを生やしている。
 まるで異国の神のようで、あやかしの存在に相応しい。
 日和国に訪れて善狐になったことを忘れている妖狐の元の姿だ。

 その葛葉子を守るように九尾の狐の妖力により瑠香は仏の武将神のような格好をさせられていた。
 髪を縛り上げて、若侍のように美しく見える。
 だが、神の依り代である体も心も操られて無表情だった。

 ハルの神が宿る晴房は異変にいち早く気づき、九尾の狐の葛葉子と対峙していた。

 九尾の狐とハルの神は宮中の空を飛び神気と妖気がぶつかりあう。

 気の衝撃がある度に宮中を揺らす。
 ハルの神の宿る晴房は小さな体からキラキラとした光を閃かせて、九尾の狐を霊的に消そうと体を縛り光の粒子にして消してやろうと手をかざす。
 子供らしからぬ無表情で九尾の狐を見る。
 その本気度にゾクリと九尾の狐は冷や汗をかく。
 さすがは陛下をお守りする最強の神の化身。

「対の審神者を我が守りにしておいてよかった…」
 フフッと、笑うと人差し指を動かし、浮遊できない瑠香を浮かせる。
 瑠香と瞳が合うと神の力を抑えた。
 晴房は金縛りにあったかの如く動けなくなった。
 九尾の狐をとらえる光の縄が消える。
 対の神の化身でありながら、審神者の瑠香はハルの神の力を押さえ込む。
 ルカの神が力を貸さなくても九尾に操られた力で封じられた。
 今や瑠香は九尾の狐の式神のように操られている。

「審神者のくせにあやかしに惑わされおって……!」

 ハルの神は宮中を守る最強の神だが、対の神のルカの神には弱かった。
 いや、この力さえ上手く使えれば威津那の中に残るハルの神力も抑えることが出来るとハルの神はほくそ笑む。

 すべてはハルの神が仕組んだ宿命なのだから……

 さらに神の力を抑えるため、九尾の狐に操られた瑠香は瞳を青に煌めかせハルの神をも操ろうとする。
「ハルの神をも私のものにすれば怖いものはない……」
 威津那の操りさえも開放されることも出来ると九尾は考える。

「ふん、そうは行くか……」

 ハルの神は不敵に笑い晴房の体から離れる。
 気を失った晴房は宮中の林に落ちて眠りに落ちた。

 深い眠りに落ちてしまえば瑠香の香の力も効かない。

「あの神を宿す子供の肉を喰らえば更なる力になろうなぁ…更に柔らかくてウマそうだ…」
 九尾の狐の葛葉子は舌なめずりを品なくする。
 九尾の狐は瑠香に落ちた晴房を探しに行かせようとする。

『勝手はいけないよ。晴房は私のかわいい孫だからね…』

 晴房のことを威津那は祖父として触れあいたいと思っているらしい。

「理解に苦しむ…娘を九尾の狐にしたくせに…」
 ふふっと、九尾の狐の葛葉子は苦笑した。

『君の存在価値は葛葉子の命を永らえさせていることにあるのだよ。』
 
「……ただ、葛葉子は神となった私の分身でもある。葛葉子自身が違えたら死ぬことになるのは変わらない」

『……誓う皇がいなくれば無効だよ』
 威津那に操られた葛葉子の魂が出てくることは不可能だ。
 その間に祝皇さえいなくなれば、神誓いも無効になる…
 そうすることで葛葉子が生きていてくれるなら良いと威津那は考えているらしかった。
 九尾の狐も心配することは何もないかと思い直すとと祝皇の住まう宮殿に瑠香を引き連れて楽しむようにシャンシャンと音をたてながら歩みを勧めた。
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