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あやかしと神様の黄泉がえり

15☆無念の花

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 九尾の狐はテレパシーで威津那に言う。
『イズナの一族が私を管狐として使うとは皮肉なものだな。』
「そうだな…」
 橘の魂の中にココを封じた…
 それで、九尾の復活はまのがれた。
 けれど、死して白狐のココとなり葛葉子と神誓いをして、肉体を持つ葛葉子は九尾の依り代となってしまった。
 
 封印された実態ある八本をあたえ陛下に恋ココロを忘れた享楽に狂う九尾になった。

 陛下を愛した心を忘れた九尾の狐になった。

 威津那は愛用のアンティークの椅子に足を組み座り、妻の橘と娘達の写真を眺めては過去に思いをふける。
 
 橘との出会いは戦後不安定な混乱した中…

 早く戦争が終われば死なずに済んだと恨む声もあった。

 その声を利用する、レッドスパイでも特殊な部署に黒御足家はいた。

 それで良いと思っていたのに、対立していた橘と恋に落ちた。
 それは宿命だった。
 こんな自分が神誓いしているのは陛下が治める日和国を守り橘と幸せに暮らすためだと、強く誓ったのに…

誓ったゆえに…

 愛の言葉が言えなかった

 それが最初の後悔になった。

 神の妻になるはずだった房菊が亡くなる事は見えていた…
 分かっていた…
 ただそれまでの経緯が変わってしまった…
 呪力をもつ黒御足に運命を変えられた…

 晴房が生まれる結果は同じことだと分かっていた…
 変えられる運命とは違い宿命は変わらないのだから…

 そういう自分は娘の辛かった気持ちを分かってやれなかった…

 いや知らないふりをした。
 これはすべて皇室の為になるのだからと……

 そして、葛葉子も犠牲にしてしまった…

 それが引き金になった…

逆恨み…?
解っている。

 全ては己が原因だということも…


 私の大切なものを奪う皇室が許せなかった…

 滅ぼしてやろうと思うほど許せなかった……

 冷静さをなくし狂うほど…

 そのたびに力が増す。
 それは黒御足の因果な血筋の力だ。

 血筋……
 妻や娘たちは皇室を陛下を愛するの理由は

 それは、神になった九尾の狐の恋心のせいだ……
 半身である阿倍野の血筋によるものだ。

 ならば、恋心をなくせばいい……

 そうすれば葛葉子を死に追い込む男も殺すことができる……

 すべての原因は黒御足の自分の家を裏切った事から始まるが……

 それも全て滅ぼしてやる……

 私から幸せを奪った者たちを不孝に合わせてやる…

 人を呪えば穴ふたつ

 ふたつどころではない穴があいたとしても

 この意志は曲げられない……
 曲げられるとすれば……

 橘……
 君に再び合うことだけ……

 葛葉子の命を永らえさせているのはココと同化した橘。

 橘は結婚する前は恐れ多くも陛下のキスを戴き人の姿に戻れた。
 だから、葛葉子に陛下のキスを頂けたら人に戻れると嘯いた。

 葛葉子の性格は嘘をも信じる素直な子なのだから…

 だからこそ、そんな事を言ったのか?

 それとも瑠香君と結ばれる宿命を知っているからか?

 だけど、その宿命も運命も全て変えてみせるよ…

 九尾の狐の葛葉子は再び宮中に足を踏み入れた…簡単に…
 何も考えてなく入れたわけではないだろうが九月八日は陰陽拮抗する特別な日。
 朝になれば陽の気が増す一日になる。
 菊の花の酒を振るまい長寿を祈り祈願する。
 けれど、菊は弔いの花…
 もっと長く生きていて欲しかった……と思う無念を思う。
 その無念を晴らす……

 陛下を思い、滅ぼそうとする心が九尾の狐と私達を繋げているのだ。

ともに皇室をこの国を滅ぼそう…




「ここからが我らの復讐の革命の始まりだ…」
 未来を見る赤い瞳で真剣な表情で九尾の狐を媒体に宮中を透視する…
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