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あやかしと神様の黄泉がえり

12☆学校で再会

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 葛葉子は見つからなかった…
 帰ってこなかった…
 そして、明日はついに重陽の宴だ。

「やっぱり宮中で匿っていたほうが余計な心配なかったね……」

 東親王は神妙な顔で言った。
 祈り姫、宝子の日記を実現するためには葛葉子が必要だ。
 葛葉子が九尾の大妖怪になろうが、どうにかしてもとの葛葉子…いや…西を守る白狐として、瑞兆として活躍して貰おうと考えていた。
 最終手段で陛下の口づけで元に戻るというのならしてもらうことまで父である祝皇に報告した。

 だが、見つからないのだ…
 代わりに白き獣を用意するしかないかなぁ……と東は考えてもいた。

 父である陛下のためにいろいろ策を考えを、冷静に非常になって巡らす東とは対象的に瑠香は、葛葉子が心配で仕事が手につかないし、宮中でも学校でも、イライラしていた。

(なんとか学友の怒りも丸く収めさせてあげたいなぁ…)

 葛葉子は一人で一番に登校していた。

 黒髪で耳も尻尾ない人間の姿に戻った葛葉子は、かばんの中身を確認し机の中に教科書ノートを閉まっていた。
(楽しみすぎて早く来てしまったけど……)
 この席でいいのかなと不安にもなっていたら、

「葛葉子学校来てたんだー!!」
「久しぶりー!」
 教室に入ってきた久美と女子たちは喜ぶ。
 東親王殿下が、

「近いうち登校するよ…」
 とは言っていたので、あまりびっくりはしなかった。
 葛葉子の席も綺麗にして確保してあった。

 瑠香、臣は東を護衛しながら登校だ。
 瑠香はいつも眺めていた葛葉子の机に葛葉子本人がいて驚く。
 葛葉子に近づくため瑠香は女子をどかし、
「葛葉子!一体どこに行ってたんだ!」
 瑠香は怒るように葛葉子の腕を摑む。

「きゃ!痛いよ!」
「ご、ごめん…」
 葛葉子は腕を抱き睨む。

 乱暴すぎた…
 心配のあまり、先に怒ってしまった…今までのイライラもあったせいでもある。
 すぐに抱きしめたくなるが女子たちが群がっていて邪魔くさい……
「いままで、どこに行ってたんだ?」
 真摯な瞳で見つめられて葛葉子は顔を背けて、
「………瑠香……には関係ない…でしょ……」
「関係なくないだろ。心配したんだから……」
 キリリとしたまゆを下げて、ため息混じりに言う。
「実家に帰ってただけなのに心配されても困るし……」

 その実家がなかったのだから手がかりがなくて心配していたのに…
 ほんとにどこに行っていたのか聞き出したい。
 その場所が阿倍野殿がいる所になる。

「もう宮中の仕事……瑠香とはいたくないの…」
 瑠香の顔を意地でも見ないで言う。
 なんでそんな態度を取るのかを知りたい…いや知ってはいるが……

(私に触らないで!穢れるから……)
 と頭の中を覗くとそう思っているらしかった。
 それは、葛葉子が桔梗を殺した穢た身だからか?
 もしそうだとしても……

「……葛葉子は綺麗なままだよ…」

 会話は繋がらないが瑠香は無意識に突然そう口に出し言った。

 そう言われて葛葉子は顔を真っ赤にする。
 それは周りの女子たちもだった。
「なにそれ!どういう意味!?」
「まさか、ついに結ばれ……」
 久美達にニヤニヤ顔されてあらぬ想像されて迷惑だし恥ずかしいで葛葉子は混乱して、

「ち、ちがうよ!私達は別れたの!
 これ以上お互い穢れた体になりたくないからっ……!」

クラス中シーンと静まり返る。

(どんなことをこの夏にしてたんだよっ!)

 と皆心の中でツッコミを入れる。

 瑠香は何を言われたか理解が出来ない。
 別れた気もないしむしろ、別れる気はないし、清く正しく美しく交際をしていた最中だ。

「オレはお前を穢した事は……」
 こちらを向かせようと肩に触ろうとした手をバシン!と思いっきり払われて、

「知らないっ!触らないで!変態がっ!」
 と瑠香に威嚇する。
 ほんとに触れてもらいたくない触られたくない!
 葛葉子の心はどうしてかわからないが警戒する。
 錯乱しすぎて、さらにあらぬ事をしたとクラス中に勘違いさせた。

 だけど、瑠香には震えて見えた。

「ぅっわ…壊滅的にはきょくしちゃったんだぁ」
 久美は口元に手をあてて言う。

「うん……だから、私にちかづかないで……」
 狐の瞳に一瞬煌かせて言った。
「瑠香くん。しつこい男はきらわれるよ?」
「さいてー!」
「葛葉子は嫌がってるんだから近づくの禁止!」
 さすがに戸惑う瑠香の肩にポンポンと叩いて東親王は落ち着かせる。
「瑠香、ちょっといい?」
 にこにこ笑顔で瑠香を廊下に誘う。
 臣の席は葛葉子の隣なので監視させる。


「とりあえず、葛葉子が見つかってよかったね。」 
「はい……」
 だけど拒絶されたことは
 瑠香は少なからずショックを受けていた。うなだれて今にも泣きそうだ。
 そんな瑠香に苦笑する。

「葛葉子は操られてるよ。管狐としてね」
「管狐…九尾の狐をですか…」
 さすが、イズナの一族と関心もする。

「だけど、瑠香だって葛葉子を眷属にすることが出来たんだからね。どうにかなると思うよ」
東は言い切る。
「恐れながら慰めですか?」
「いや、命令だよ」
 にこやかに言う。
「はい…」 
 いつもの自信が、さっきの拒絶で失われていると思う。
「瑠香に出来ないというなら無理は言わないけど、僕が葛葉子にキスをして眷族にしちゃう手もあるよ」
 東親王は皇族でも特殊な力を持っている。
 阿闍梨で狐を従える陀羅尼真言を使い更にシラスの力を使えばなんとかなると瑠香も思うが絶対それは嫌だ。

「そ、それだけはなりません!」
 他の男に葛葉子を奪われたくない!触れられたくない!
 ムキになった瑠香をみてフフッと笑い、
「なら頑張ってね。応援しているよ」
 ポンポンと両肩を叩かれたしかも、結構強く…
 慰めでもあり脅しでもあり命令だ。
 いや、命令されなくても…だ!

「今度こそ、葛葉子をオレのものにします!」
「うん。その粋だよ」
 東は学友を慰めなだめられて満足だった。
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