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あやかしと神様の黄泉がえり

8☆穢

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 凄まじい妖気に気づいた霊力ある職員たちは巫女寮に急ぎ駆けつけると巫女たちは突然の瘴気に当てられ気絶していた。

「血の臭がする………」

 鼻の良い瑠香は眉間にシワを寄せる。
 胸騒ぎが収まらない… 
 葛葉子はこの巫女寮にいるのだ。

 何かあったに違いない!

 不安と焦りを胸に瑠香は男子禁制の巫女寮の廊下を走る。


 嫌な予感しかしない……

 血の匂いをたどり閉じられた部屋の襖を開けると部屋中血に染まっていた。
 膝を崩し呆然としている葛葉子がいた。
 葛葉子の目の前には頭の無い巫女装束の死体……

 あまりの光景に瑠香はゾッとする。

 葛葉子は、衣に一滴も血をつけていない。
 この場に来たばかりのようだ…
 瑠香に振り向いた、葛葉子は、青ざめていた。
 体も目に見えるほど震えていた。

「瑠香……」
 瑠香の顔を見た途端、涙があふれる。

「葛葉子……無事か?怪我はないか?」
 優しい心配する声音で葛葉子に近づこうとするが

「来ちゃダメっ!」

 突然の妖気に弾かれる。
 言霊一つで妖力の壁を作り部屋に入れない。

 葛葉子は震える体を自ら抱いて落ち着かせようとする。

「私が……やったの……」

 震える声で言う。
 あまりの怯えように瑠香の、胸は痛くなる。

 瑠香は神が貸す記憶を覗く力を審神者の瞳で葛葉子を見ると桔梗という姉巫女が悪者だったらしいそして呪詛をかけられたらしいが、この状況になった記憶が読めない。
 読ませようとしないように必死だ。

「瑠香が…穢る……」

 瑠香は神の化身…
 汚れちゃいけない存在なのに…

「もう、私に触っちゃだめだよ…
二度と触っちゃいけないんだよ……」
 涙が喉に詰まって切ない…

「葛葉子……それでもオレは葛葉子に触れたい…抱きしめたい…」

 抱きしめて怯える体を守りたい…心も守ってやる癒やしてやる…
 瑠香が入ってこれないように無意識に張った妖力の結界はビリビリと、体に微弱な電流を与えて、近づくほどに強くなっていく…

それでも、そばに有りたい!

 妖力さえも超えて近づこうとする。
 それほど強い思いが瑠香にある。
 葛葉子はそれを感じて涙が出るほど嬉しい。

 その心が瑠香に与える電流を解除した。

 瑠香は、ほっと微笑み、葛葉子を見つめる。

「葛葉子…」
「瑠香……」
 瑠香は葛葉子を抱きしめようとした瞬間、

 神の依り代をこれ以上穢してはいけない……

 審神者にしか聞こえないルカの神の声が聞こえて、葛葉子は元巫女として…神の化身の恋人としてそうだったと改めて自覚すると

 好きな人を自らの体で、穢したくない!

「さ、触られるのやだっ!」
 咄嗟にそう言い妖力で突き飛ばす。
「なっ!」
 瑠香は廊下まで吹き飛ばされた。

 すくっと立ち上がった葛葉子の尻尾は九本あった。

「九尾の狐……?」
 思わずつぶやく。
 妖力が半端無く強く言霊一つで力をすべて発揮するほどの力を葛葉子が持っている理由が分かった。
 
 葛葉子の記憶を覗いたときに巫女が八尾をぶつけたところで記憶が読めなかった…

 だけど、その姿を見れば察しがつく…封印が説かれたと。

 驚愕する瑠香をみて悲しく微笑み、

「ごめん…瑠香…大好きだよ…」
 葛葉子の存在自体その部屋から消えてしまった。

「瑠香!なにがあった……」
 父の陰陽寮長官が来て倒れている瑠香を助け起こす。
 そして部屋の様子を覗く。
 あまりの光景にゾッとする。
 晴房が産まれた時の事を思い出した。
 だがあれはこんな残酷なものではなかった…
 神が導いた結果だったが…
 これは完璧な穢だ…とてもひどい…
 前代未聞だ。
 あってはいけない事だ。

「これは由々しき事だ……」

 そう言った陰陽寮長の処置は早く的確な指示を皆に命じた。
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