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あやかしと神様の黄泉がえり
3☆桔梗
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「桔梗お姉さまいらっしゃいますか?」
葛葉子は自然と敬語を使い、畏まって桔梗が待っているという元自分の局の襖越しに尋ねる。
「葛葉子ですわね。お入りになって」
そう言われて畏まった顔をやめてぱっと明るい表情になり、襖を開けて桔梗の前に現れようとして、はたっと立ち止まる。
襖を開けると几帳が隔てていてその向こうに桔梗がいるようだ。
(白狐の姿を見てどう思うだろう……)
桔梗姉様は内掌典として期待をかけられていたほどの人だ。
あやかしの自分を穢と思うかもしれないと今更ながら思いとどまる。
他の巫女仲間はこの事を知っていたから気にはしなかったけれど…
しかも、なんてったて憧れの姉巫女様だからだ。
「い、今の私の姿を見ても驚かないで下さいますか?」
おずおずと言うと、
「事情は知っているので大丈夫ですよ」
そう優しく言ってくれた。
葛葉子は几帳からから膝をおって、膝歩きし桔梗の前に現れる。
桔梗は里下がりをした時と同じく、凛として美しかった。
真っ黒な黒髪に真っ白な小袖に朱色の袴は余計なしわもなく正座する姿は美しく神々しかった。
女神とはきっと桔梗のことを言うと思う。
品が違うと感じる。
瑠香と似たような気品があふれる。
(最初の頃に比べて、どスケベになりすぎて品が下がってるけど…)
けれど、その美しい姿とは真逆に不穏な黒い大きな袋をそばに置きクッションのように柔らかいのか手を当てて感触を確かめているようだった。
桔梗は昔、黒いものが美しいと言っていたことをおもいだした。
白狐の葛葉子は桔梗にとって美しくないのかもしれないと思う…
そんな葛葉子の姿をみて桔梗は、
「まぁ……」
といい絶句した。
葛葉子は桔梗の様子にしゅんと狐の耳を下げる。
「こんな姿でごめんなさい…」
「謝らなくていいのよ。何も悪くないのだから…」
優しい声音で言ってくれた。
そんな葛葉子のそばに桔梗は近づく。
そして、まじまじとじっくり見つめてしっぽを触ったり耳を触ったりしてほんものかどうかを確かめているようだった。
真っ赤にひいた口紅がとても嬉しそうに笑っているように葛葉子は、感じた。
「桔梗お姉さまは今までどこで何をしていたのですか?」
「里下がりを願い出ていて、その時ちょうど先帝陛下が亡くなられ。
恐れながら喪に伏させていたのです。
先帝陛下はとても素晴らしい方でした…」
しみじみ言って口元は笑っていた。
そのことに葛葉子は気が付かない。
「そういえば…桔梗姉様の姓を教えて欲しいのですけど…あと、本名ですか?
桔梗という名は…」
瑠香に言われたことを思い出して尋ねる。
「…あら?教えてなかったかしら……それにしてもどうして?」
「いま、陰陽寮で働いていて、お姉さまが、また出仕するなら吉凶を占うためにで、データが必要なんですっ…!」
すべての職員を網羅して不吉なものを排除する陰陽寮には必要なものだとごまかした。
桔梗は自分のことを喋ることをあまり好まない人だったことを思い出した…
だから、咄嗟に慣れないことを言って聞き出そうと思った。
「黒御足桔梗子ですわ。『子』抜かしただけですけれどね…
ふふっ葛葉子と少し似てますわね」
意外とすんなり答えてくれた。
「くろみあしききょうこ…
黒御足…あれ?父様と同じ?」
父は阿倍野の婿養子だ。
そして、旧姓は黒御足と言っていたような…
「昔は陛下をそば近くでお守りする一族だったのですけれどね、武士の時代に将軍に仕え、城を皇居宮中にする時陛下のそばに再びお仕えする事になった一族…ですわ」
「イズナの一族って言われてたのは知っているけれど…」
父様はあまり自分の実家のことは話さない。
阿倍野家の一員として皇居宮中の陰陽師として務めていた。
陛下を愛し神誓いをしたほどだ。
やはり知らされていないようね……
「あなたのお父様は…私のお父様の弟なのよ。」
葛葉子は自然と敬語を使い、畏まって桔梗が待っているという元自分の局の襖越しに尋ねる。
「葛葉子ですわね。お入りになって」
そう言われて畏まった顔をやめてぱっと明るい表情になり、襖を開けて桔梗の前に現れようとして、はたっと立ち止まる。
襖を開けると几帳が隔てていてその向こうに桔梗がいるようだ。
(白狐の姿を見てどう思うだろう……)
桔梗姉様は内掌典として期待をかけられていたほどの人だ。
あやかしの自分を穢と思うかもしれないと今更ながら思いとどまる。
他の巫女仲間はこの事を知っていたから気にはしなかったけれど…
しかも、なんてったて憧れの姉巫女様だからだ。
「い、今の私の姿を見ても驚かないで下さいますか?」
おずおずと言うと、
「事情は知っているので大丈夫ですよ」
そう優しく言ってくれた。
葛葉子は几帳からから膝をおって、膝歩きし桔梗の前に現れる。
桔梗は里下がりをした時と同じく、凛として美しかった。
真っ黒な黒髪に真っ白な小袖に朱色の袴は余計なしわもなく正座する姿は美しく神々しかった。
女神とはきっと桔梗のことを言うと思う。
品が違うと感じる。
瑠香と似たような気品があふれる。
(最初の頃に比べて、どスケベになりすぎて品が下がってるけど…)
けれど、その美しい姿とは真逆に不穏な黒い大きな袋をそばに置きクッションのように柔らかいのか手を当てて感触を確かめているようだった。
桔梗は昔、黒いものが美しいと言っていたことをおもいだした。
白狐の葛葉子は桔梗にとって美しくないのかもしれないと思う…
そんな葛葉子の姿をみて桔梗は、
「まぁ……」
といい絶句した。
葛葉子は桔梗の様子にしゅんと狐の耳を下げる。
「こんな姿でごめんなさい…」
「謝らなくていいのよ。何も悪くないのだから…」
優しい声音で言ってくれた。
そんな葛葉子のそばに桔梗は近づく。
そして、まじまじとじっくり見つめてしっぽを触ったり耳を触ったりしてほんものかどうかを確かめているようだった。
真っ赤にひいた口紅がとても嬉しそうに笑っているように葛葉子は、感じた。
「桔梗お姉さまは今までどこで何をしていたのですか?」
「里下がりを願い出ていて、その時ちょうど先帝陛下が亡くなられ。
恐れながら喪に伏させていたのです。
先帝陛下はとても素晴らしい方でした…」
しみじみ言って口元は笑っていた。
そのことに葛葉子は気が付かない。
「そういえば…桔梗姉様の姓を教えて欲しいのですけど…あと、本名ですか?
桔梗という名は…」
瑠香に言われたことを思い出して尋ねる。
「…あら?教えてなかったかしら……それにしてもどうして?」
「いま、陰陽寮で働いていて、お姉さまが、また出仕するなら吉凶を占うためにで、データが必要なんですっ…!」
すべての職員を網羅して不吉なものを排除する陰陽寮には必要なものだとごまかした。
桔梗は自分のことを喋ることをあまり好まない人だったことを思い出した…
だから、咄嗟に慣れないことを言って聞き出そうと思った。
「黒御足桔梗子ですわ。『子』抜かしただけですけれどね…
ふふっ葛葉子と少し似てますわね」
意外とすんなり答えてくれた。
「くろみあしききょうこ…
黒御足…あれ?父様と同じ?」
父は阿倍野の婿養子だ。
そして、旧姓は黒御足と言っていたような…
「昔は陛下をそば近くでお守りする一族だったのですけれどね、武士の時代に将軍に仕え、城を皇居宮中にする時陛下のそばに再びお仕えする事になった一族…ですわ」
「イズナの一族って言われてたのは知っているけれど…」
父様はあまり自分の実家のことは話さない。
阿倍野家の一員として皇居宮中の陰陽師として務めていた。
陛下を愛し神誓いをしたほどだ。
やはり知らされていないようね……
「あなたのお父様は…私のお父様の弟なのよ。」
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