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あやかしと神様の過去のこと

9☆逢引廊下の怪★4矜持

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 夜勤以外の職員は寝静まっている丑三つ時に三人は逢引廊下に集まる。
 廊下の柱にオレンジの常夜灯のライトが仄かに廊下を照らし幻想的でもあった。

「どうやっておびき出すのですか?」
 葛葉子は東に尋ねる。
そうだねぇと考えて、

「臣、頼める?」
「はい?」
 霊力も霊視も出来ない自分が頼まれる意味がわからない。

「経験なさそうだし。年頃で瑠香みたいなこと考えてるでしょ?」
「オレを例えになされても…」
 苦笑いするしかない。
 年頃の男は普通考えてるし妄想するものだろうと思う。

「はぁ…瑠香みたいな事ですか…?」
 臣は顔を真っ赤にした。
 しないわけではないけれど、瑠香のように、好きな女性に対しても無理やりしようとは思わない。

「いい機会だから経験してみなよ。」
 ニッコリと、とんでもない発言をなされた。

「なるほど、囮というわけですね、わかります」
 純朴な臣の肩を瑠香はニヤニヤして叩く。
 臣は顔をさらに引きつらせる。
人ではないものと交わるのはもっと嫌だと思ってる。

 そんな男達の会話を黙って聞いていた葛葉子は顔を真っ赤にして震えて、

「サイテーだっ!
 初めては初めて同士のほうがいいにきまってるよ!
 臣はそんな経験しなくていいよ!」
 と、廊下に葛葉子の叫びに似た抗議が響く。
 単なる不浄の念が具現化したものでも許せない!
 そんな純粋な葛葉子に、瑠香はふっとバカにした笑いをする。
 東もやれやれというポーズを取る。

「女の前でいざって時に恥をかけられないよ」
「いざってどんな時ですか?」
 意味がわからないから素直に聞く。
 東は困る。

「初めてどうしなら恥とかわかんないじゃないか!なっ!臣!」

 臣もなんと答えていいのかわからない。
 葛葉子以上に顔を真っ赤にしてのぼせてるようだった。

 瑠香はムキになる葛葉子の肩を抱き耳元で、

「その時になったら恥ずかしい思いをたくさんさせてやるから覚悟しておいて…」
 と、わざと意地悪をささやいた。
 実際になったら恥ずかしい思いはさせるかもしれないが思いっきり優しくするつもりだ。

 葛葉子はそのセリフにムッとする。

「じゃ、私も経験すればいいってことだな!?
 そしたら恥ずかしい思いをしなくていいんだな!」
「それはダメ!ぜったいに!許さないぞっ!」
 瑠香は眉を釣り上げ真剣に怒鳴る。
 怖い…
 本気で起こってる…

 葛葉子は怒られた理由が理不尽でムカつくし、情緒不安定になっていた。

パシンっ!

 と瑠香の頬をひっぱたいていた。

「私が!そんなことするわけないじゃないかっ!」
 ウルッと涙溜めて、

「瑠香のばぁぁぁぁかあ!」
 と言い廊下を無防備に駆けていった。

「葛葉子っ!」
「瑠香、追いかけて行っていいよ。
 ちゃんと仲直りして戻ってきてね」
 東はこの間みたいな雰囲気は懲り懲りなので素早く許し快く見送った。
 そして、臣の方を見る。

「で、囮してくれる?」
「…………なれるのならば…」
 臣は東に忠誠を誓っているので、拒否はしないけれど青ざめている。

「ん?」
 東より背の高い臣を見上げるとその後ろの柱の天井の近いところに紙がぺらぺらと浮いていた。

「あっ!思い出した!」
 と、突然東は叫んだ。
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