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あやかしと神様の恋縁(こいえにし)

16☆言祝ぎ

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 ジジ様の異界に無事たどり着く。

「ほれ、ハンコ押しておいたぞ」

 保護者の許可の書類をもらって無事に結婚できることに素直に何故か喜べなかった。
 一応、威津那は認めてはくれたけれど複雑だ。本気で認めてない。
 別れるようなことを予言されたことに腹が立つ。

 そんな様子の二人にジジ様は意地悪く微笑み、

「クソジジイ!と言われて押すのをよそうかとも思ったがの、威津那のもとに一人で葛葉子を救いに行った心に感銘したぞ。
 だから、勇気を持って結婚するが良い!」
「ありがとうございます!」
 ジジ様にそう言われると心が晴れる。

「威津那はあのとおりだから認めぬと思うが、我ら阿倍野は香茂家と近くなる事を寿ぐよ。
 どちらにしても同じ血筋なのだからな。」
 ジジ様は、ひゃひゃひゃ!と満足に笑って小さな皺くちゃな手を二人に差し出して力強く握る。

「ジジ様ありがとう」
 葛葉子は感極まってジジ様に抱きつく。
 ジジ様は葛葉子の背と頭を優しく撫でる。

「もし、できたら、阿倍野家の跡取りとして一人欲しいな。」
「うん…早く曾孫見せにいくから、ジジ様。長生きしてネ。」
「当たり前じゃい。
 来年辺り、曾孫ができるのを楽しみにしておるわい。」
 もう、曾孫来年できることは決定事項にされてしまったなと瑠香は苦笑する。

「祝言には呼べよ。
 腹の中に曾孫いてもいいから結婚式はしろ!いいな」
 さらに既成事実化してしまえということか……
 儀式を重んじる陰陽寮長の父にも怒られてしまうではないか。
 まあ、いいけど…と瑠香は思った。

 うんうん!とジジ様に葛葉子は抱きついて頷く。
 父親に怖いこと言われた分ジジ様の言葉は祝福で浄化された気分になって嬉しくて涙が止まらない。

「ところでジジ様は今世に出てこないの?」
「この姿じゃ世間に白い目で見られるしの。
 それに、娘の橘が愛した男だから、最後までワシくらいはそばにいてやりたいのじゃ」

 いつも明るいジジ様は悲しげに笑った。

「人に戻せるのはババ様だけだからの。
 ババ様の迎えが来るまで異界で隠居じゃ。」
 そう言うジジ様にルカの神はぎゅっと抱きしめたのを瑠香はみた。
 審神者ではなくなったジジ様には見えないが感じる。
 葛葉子と同じくルカの神の力の影響で人の姿に戻れていたらしい。
 懐かしき思い出を大切にしているルカの神はジジ様に祝福の言霊をあたえる。

『きっと、瑠花は迎えに来てくれることだろう…生まれ変わらずに待っている。
 それまで生きることを楽しんでおくれ』

 ルカの神は優しく慈悲深い。
 そんな神の化身になれたことを誇りに思ったし、自分もルカの神のようになり葛葉子に、優しく愛したいとも思った。
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