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あやかしと神様のドキドキ同居

1☆香茂家の人々

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 葛葉子は月のモノ期間は人間になれことを今日初めて知った。
 この半年間『あやかし』である事が長かった為に忘れていた。
(ど、ど、どうしよう……)
 顔が青くなる。
 すごく焦る。

 その慌てた思いが瑠香にも届いた。

「生理になったのか?」
 ストレートにいい当てた。
 葛葉子は顔を真っ赤になって口を震わす。

「なんで、わかった……?」
「匂いで……」

 瑠香は鼻がいいことを忘れてた……
 恥ずかしさのあまり、涙目になる。

(そんな男と隣の部屋で過ごせるわけないじゃないか!)

 瑠香が近づこうとすると、逃げる。

「来るな!臭うだろ!ついでにお前は神の化身だ!お前が穢れるし!」
 じりじり近づく瑠香に壁際に追い込まれ膝を抱えおびえる。

 そんな必死な葛葉子に苦笑する。
 一番困ってるのは葛葉子のはずなのにこっちの心配をするとは。

「穢れないよ。穢れても一日くらい力が使えなくなるだけだ。」
「なんで、わかる?」

 瑠香はいつもの意地悪そうな顔をしていない。
 むしろ困っている感じた。

「家に姉がいるからな。何度かそういうことがあって分かった」
「お姉さんがいるのか?」

 意外な家族情報だった。
 だから、多少、女性の状況が分かるのだった。

「父に相談してきてやるよ」
そういい、陰陽寮長のもとへ行ってしまった。
 ホッとするものの恥ずかしさは収まらない。
 でも、男の子の瑠香がそういうこと言うのも恥ずかしいものだからお互い様か…と思った。

 ということで、陰陽寮長の計らいで、一週間の間、香茂家にお世話になることになった。
 護衛のお仕事もしばらく休みで、いいとも言われた。
 月のモノ期間は『穢』と言われ神聖な職業のものは忌嫌われるが、『物忌』として休みを与えられる。
 女性をいたわる日和国の伝統でもあった。

 瑠香も陰陽寮長も暦や運勢的に、物忌期間に入ると宮中ではなく、実家で暮らす。
 葛葉子の家も同じ状態たったから事情はわかる。
 葛葉子も人だった時はそうしていたが今は阿倍野に帰りたくない…
 香茂の実家に瑠香も付きそう。
 距離をおいて歩いたら、瑠香にそっと手を握られた。
葛葉子は咄嗟に手を解こうとする。
「恥ずかしいし、困る……瑠香の神が穢れる」
「穢ついでだ…」
 
 困ったようにこめかみを掻き、

「いや、でもその言葉は女性に対して失礼だな……ごめん」

 ポケットから小さいお守りのような香り袋を手渡す。
 和柄で可愛い。
 ちょっと、ほつれ感がある。

「あと、これ持っていろ」
「これ、買ったのか?」

 買うところなんか、なかったのに。
「オレが作った。香りも込めておいたから気になるなら持っていればいい。」
「あ、ありがとう!」

 葛葉子はほんとに嬉しそうに瑠香を見つめた。
 その視線が可愛くて、照れてそっぽを向きながら、

「もうちょっと時間があったら綺麗な物を縫えるけどとりあえずこれで我慢してくれ」
「縫物もできるなんて凄いな!瑠香って!ほんとにありがとう!」

 菊の香りがする……その香りを葛葉子は好きだ。
 ほんといい香りだ。
 気分が良くなったのか、葛葉子から手を握って、腕まで絡めてきた。
 嬉しくなると態度で示す葛葉子は、素直で可愛いと思いながら昨夜の雨が地面を濡らす自宅への道を歩いた。
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