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あやかしと神様の学園ライフ

7☆過去の夢

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「お前をいじめていいのはオレだけだからな。
 オレ以外の誰かが葛葉子をいじめるのは許さん。」

 瑠香は本気で怒ってるみたいだった。
 羨ましがられないように、葛葉子に近づけないもどかしさもある。
「なんだ、その理不尽な理屈は!」
「だから、なにかあったらオレに言え……」

 葛葉子の肩に置いた手がいつもより力強いと感じる。
 少し切な気に、まゆを下げ、そっとキスをする。
《すぐに駆けつけるから……》

 唇だけの軽いキスなのに長い。
 なごり惜しそうに少し押し付けて、

 ドヤ顔してペロリとキスしたばかりの自分の唇を舐める。

(おいしそうに舐めるな!)

 と葛葉子は、思って顔が赤くなる。
《もう一度、味見をしたいくらいだ》
 葛葉子は頭を覗かれて睨む。

「試した。
 このくらいのキスだと通信ができるかもな」
「どんだけ万能の魔法なんだよ……」
 でも、どこか心細く寂しいと思った心が軽くなった。


 しとしと、とした
 雨の音が心地が良い。
 また夢を見る。
 先生は葛葉子を叱らない。
 先生もこのごろ葛葉子を無視をする。

 なんなんだろうか……
 この感覚。
 でも身に覚えはある。

 今度は自分の夢だ。

「不浄の上に不浄を重ねるのか!」

 葛葉子は寒い部屋に閉じ込められる。
 自分は不浄じゃない。
 穢てない。
 だけど、裏切ろうとした……
 晴房を連れ帰って、ここに戻る気はなかった。
 ここに居なくても皇室を遠くで愛していけるから。
 でも見つからなくて……
 男と一緒に探したからと、不浄とみなされた。
 
 葛葉子は巫女としての能力はたかく、神の依代。
 神職も兼ねる陰陽師の少年といたところを咎められた……

 その男は、まだ少年ぽさが残っていた瑠香だった……

 元から体が弱くて、肺に病を持っていたことを忘れてた……

 ただ助けてくれたのは……

 白狐だけだった……
 依代になれる巫女だったから魂に宿ることができたのだ……


 佐保子は寝ている葛葉子に抱きつく。

 クラスのみんなも気が付かない。瑠香も霊力の瞳を閉じている。

 その事に葛葉子は気づかない。

「葛葉子ちゃんの事好きだけど羨ましいの…」

 そして、力をもらえる。
 勇気だけじゃなくて、神様のような力を貰える。

 何でも出来てずるい……
 羨ましい


 眠っている葛葉子に覆いかぶさるように透明の女の子が抱きついているのを、東は見つめて考える。

 あれは『死霊』ではないなと……
 葛葉子は白狐、獣の神だからやはり品が少し低いから気づかないらしい。
 瑠香の言うとおりだが、東と同じ引き寄せる体質だ。
 東の場合は引き寄せ刺激してしまう事が多々ある。
 前世の魂が覚えている真言や陀羅尼は唱えることは出来るが心もとない時がある。
 そのための、瑠香や臣、葛葉子がいる。
 感謝している。
 部下だけれど『自分』を理解してくれる学友だ。
 そんな葛葉子がいじめられている原因を取り除くのが今回学校に来た運命だと感じた。
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