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あやかしと神様のお山修行
4☆サトリのあやかし
しおりを挟む夜の山はとても冷え、天候も変わりやすい。
二人は山小屋で一夜を過ごす。
香茂家のものが半年に一度点検に来るので非常食や布団もある。
葛葉子は疲れたのかぐっすり寝て起きる気配がない。
夜行性の狐なのに、はしゃぎすぎたらしい。
一つだけのベットを占領してる。
布団は三人分あるので床でも構わないが……
眠る葛葉子の頬をそっとなでて、唇にふれる。
何しても起きる気配がない。
(添い寝してやろうか……)
さらにその先を妄想して妄想が止まらないどころかいつの間に現実にしてしまう行動を起こしそうだ。
ダメダメ!と頭を振りふって瑠香は小屋の外に出た。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ…」
瑠香は盛大にため息を口にする。
葛葉子の裸を見て、まだまだ修行が足りないと感じる。
あの後、裸にもかかわらず殺意で葛葉子に襲いかかられて、白狐の強烈ビンタを食らって気を失う瞬間しっかり裸を見てしまった。
「意外といい体してる……」
つぶやくと、両手で顔を覆う。
そしてため息を吐く。
修行にならない。
逆に霊力が煩悩で削がれるかもと思う。
葛葉子を好きすぎて、煩悩を捨てきれない。
更に、年頃の男に辛い……
月でも見て心を落ち着かせようとここらがける。
空を眺めるのは好きだ。
手に入らないきらきら星…
それは葛葉子のようにも感じる……
そう思いながら眺めれば清らかさに近づける気がする……
横倒しにしてある大木の幹に座り空を眺め熱くなった頭を冷やす。
突然、森の影がざわめく、
葛葉子以外のあやかしの気配を感じる。
その妖気を探そうと振り向いたら、瞳の大きな毛むくじゃらな化物が瑠香の真横に腰を下ろしていた。
大きな瞳孔が真っ赤で禍々しい。
そういえば、葛葉子がサトリという妖怪がいると言っていたのを思い出す。
サトリは悟り……
人の心を言葉に出し、人の知られたくない心を読み人を迷わせ人を食らう妖怪だ。
対処方は無視して無心になることしかないと本で読んだことがある。
今の煩悩だらけの瑠香は一番会いたくないあやかしだ。
瑠香は瞳を青にきらめかせ神気を出し、あやかしに警戒する。
『お前は陛下より狐を好きだろう?心に嘘をつくな。正直になれ』
瞳の大きさとは対象的に小さな口をニヤニヤ顔でそう告げる。
神の化身である瑠香にその言霊を吐かせれば神との契約違反だ。
心を操り言わせるつもりか?
瑠香もテレパシーで、相手の気持ちを読む能力がある。サトリは神の化身の人肉を食らい力を獲ようとしている……
低級の妖怪など、皇室を守る神からみれば虫以下だ。
『あの狐を心の底から愛しているのだろう。祝皇陛下よりも……』
瑠香はテレパシーで
《だからなんだというのだ》
と返事してやる。
『なっ!』
瑠香は口を意地悪く斜めにしてバカにして笑い開き直る。
《言霊さえ言わなければいいんだよ。》
「オレの煩悩を覗いたなら、とくと覗けばいい……そして、この煩悩を持っていけ!」
瑠香の瞳は本気だった。
瑠香の煩悩をとくと人の心考えを読めるあやかしのサトリの脳内に叩きこむ。
ありとあらゆる葛葉子にしたい、やりたい卑猥で濃厚な妄想を……自分では口が避けても言えないくらいの言霊をさらにサトリに語らせようとする。
サトリは瞳をグリグリ回しのぼせすぎて鼻血をふき出し、涙目で、顔を真っ赤にさせて、
『この変態がっ!!乙女の敵!ばかぁぁぁ!鬼畜がァァ!』
そういい、暗闇に、消えていった。
その後サトリは恐怖で山から降りてこなくなったという。
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