腹ペコ吸血鬼と警察官

花咲蝶ちょ

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14☆望み

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「ルイさんっ!大丈夫か?」
 健十郎さんは狼男姿のままで柔らかな毛並みが心地よい……
「お、お腹……すいた…血をくださいぃ…」
 もう、思考も視点も曖昧になってきた。
 砂漠で干からびた瀕死の状態だと勝手に私は想像する……
 過去のことなどすっかり忘れているのに、この感覚は体に刻み込まれたもので忘れられないものらしい……
「早く俺の血を飲んで!」
「は、はい!じゃ遠慮なく!」
 狼姿のままの健十郎さんは首筋を差し出す。
 私は吸血鬼の本能で残りの力で牙をむき出しにして力で健十郎さんの首に手を回して太い首元に牙をたてた。

がぶっ!

「痛いっ!マジ噛みしたなっ!」

ジュルルルルルル…
 はしたないけれど音を立てて吸う。
 いつもならば少量でいいはずなのに、大量にほしい。
 健十郎さんの毛並みが逆立つ。
 それでも、構わず血を吸う私の背中をポンポンするのは赤ちゃんの背中を叩く感じか。
 ゲップもでてしまう。
 それでも、もっと吸いたくて二回も噛み付いて吸ってしまった。
「あ……俺の妖の力が吸い取られる…ちょ、これ以上は…!」
 無理やり引き剥がそうとする前に、健十郎さんから煙が湧き出て
 ポム!
 という音とともに、柴犬の子犬……ワンコになる。
 私は子犬の柴犬になってしまった健十郎さんを抱き上げた。
「わん!わん!わわん!きゅーん、きゅーん…」
 耳を下げてかなしげな顔がとても愛くるしい。
「あーあ。だいぶ妖力吸われちゃったわね。人間の言葉も喋れなくなるほどに……」
 哀れな瞳でミミさんは健十郎さんをみる。
 どうすれば人間になれるんですか?
「キスでもすれば戻るんじゃないの?」
 ミミさんが言うことは適当に感じた。
 それでも、とりあえず、ふわふわな獣の額にキスをする。
「もとに、戻って……」
 血を思いっきり吸ってしまった申し訳無さと感謝の祈りを込めてキスをした。

ポム!

 ……と再び煙がでると、手で支えられない重さになって質感が人の肌になっているのを感じ手を離す。
「あー。やっともとに戻れた、焦ったー…」
 健十郎さんはフーっとため息をはく。
「人間の姿が元の姿なのですか?」
 私は見てはいけないものを見て目をそらす。
「まぁ、一応な。狼男になれるの月が出ている晩で、妖怪食べる他に、月の光でも妖力が貯まるんだ」
 と、説明をしてくれた。
「ほい!さっさと服着ちゃいなさいよ!みっともない!」
「ありがとよ。」
 健十郎さんはミミさんが用意した素早く服を着る。

 果世さんとじゅんさんは今までの事は覚えているけれど、果世さんの望みどおり、体はきっと、襲われる前のきれいな体になって、薬の効果もなくなったようだった。
「このこと、誰かに言って喋ったりしたら、私達があんたたち二人を食べるから覚悟しておきなさいよ……!
 シャーーーー!!!!」
 ミミさんは口を裂けて牙を覗かし、二人を脅す。
 私と健十郎さんもミミさんにならって威嚇の意味を込めて鋭い牙をできるだけ覗かせておどした。

「こんな話、誰かに言っても信じてもらえないですよ……」
 あまり脅しになってないのは蜘蛛女の彼女のほうが怖かったからかもしれない。
「もし、また何かあったら犬のお巡りさん、助けてくれますか?」
 果世さんそう微笑んでいった。
「お、狼、だけどな。それがおまわりさんだから当然だな。俺が悪い人間を食ってやるよ」
(捕まえるん以前の問題発言だと思う……)
 と私は思った。
「ルイさん……ありがとうございました」
 果世さんは私に向かってお辞儀をした。順さんも同じく習う。
「あなたの望みが叶うことを祈ってます。」 
 果世さんは私の手をギュッと取ってそういった。
「わたしの…望み?」
 私はわからなくて首を傾げる。

 私の『望み』なんて、何もないけれど……

「『ルイさん自身になる』事」
 そう言われて、心臓が飛び跳ねる感覚がした。
 それは、呪文のような…洗脳のような…命令で抗えない言葉に思えた。
「それは一体どういうこと?」
 私だけではなく、健十郎さんもミミさんも乗り出して聞く。
「………あれ?ごめんなさい……うろ覚えですけど…あれ?なんてしたっけ?」
 私の血を吸って記憶にあった事が、突然パッとすっかり消え忘れてしまったようだ。
 果世さんは一生懸命思い出そうとするが逆に気持ち悪くて具合が悪そうになる。
「もう、無理しちゃだめです。
 忘れちゃったなら、仕方ないです。私はしょっちゅう記憶喪失ですし、気にしないでください!」
 と明るく慰めた。
「そこは、気にしたほうがいいところなんじゃないか……?」
 健十郎さんとミミさんは同時に言った。
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