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13☆真逆の吸血鬼?
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「吸血鬼の能力の瞬間移動かにゃ?」
ミミさんは首を傾げて冷静に分析していた。
(ルイさん…っ!)
健十郎さんは蒼白な表情だ。
そんな彼に私は振り向きできる限り微笑む。
「私も…吸血鬼……彼女の血を吸い取ってしまえば彼女の暴走を抑えられるかもしれないって考えたのですけど…吸われる立場になってしまうなんて…私、ドジな吸血鬼ですよね…」
ゴフッと、血が口から吹き出す。
「ぐっ…っ!」
果世さん…蜘蛛女が私の血を吸うのを感じる。
牙からは毒が注入されて体がしびれてだんだん痛みがわからなくなってきた。
体の体液ごと吸われ妖力が奪われる。
ミミさんが言ったとおり妖怪は妖怪を食らって力になる。
一段と蜘蛛の体が大きくなった。
いや、私の体を掴んでいた節ばった足は人の手に変わる。
ミミさんがあやかしのを食べれば人の姿を保つというように、彼女も人の姿に保とうとしている。
噛まれて血を吸われて彼女の悲しみが伝わってきた。
私の場合は真逆のようだ。
記憶を知ることもできるが流れ込むように伝わる…血が吸われる方が彼女の本当の心の望みが伝わる。
『もとに戻りたい……あの時のじゅんちゃんと恋人になったときに…その後、事件なんて何もない幸せな人生に……』
とてもささやかな願いだった…
私は、お腹に食い込んでいる彼女の頭をそっと撫でて、愛おしげに見つめる。
『……私…の血を吸ったなら、あなたが私の望みを叶えて……』
私の言霊は神気を宿し放った。
私の体は透けて神々しく光る。
まるで肉体などもとからなかったかのようだ。
夜闇を照らす月の光よりも朝日の光に近いほど眩しく神々しい。
さらに私の血を吸った果世さんの口元、体全体が光る。
その異変に気づいた果世さんは私の方を見て目を見開く。
目の前に互いに見えるのは鏡のように自身の姿。
私など、『ルイ』という存在などいなかったような感覚になる…目の前に居る果世さんになることが私の望みじゃない……
私の望みはこの果世になることではない…叶えられない望みである……
私は彼女を優しく見つめてなでて、抱きしめる。
せめて、私の罪を償わさせて……
記憶にない何がが…そう強く思う…
それは彼女の痛みを浄化させる力になった……
互いに同じ姿になった…いや、血を吸われて彼女に私の望みが伝わったと感じる……
その光景が信じられない健十郎さんは、
「ルイさんは……本当に女神様…なのか?ミロのビーナスなんてもんじゃなくて、マリア様…のようだ…」
ゆるくなった口元の蜘蛛糸を食いちぎっていた健十郎さんがそうつぶやいた。
「ルイちゃんって何者なのニャ?ほんとうに吸血鬼なの?」
ミミさんも、私の様子を見て驚愕する。
《あなたは、人に……元のあなたに戻って…幸せに暮らして……》
私は果世さんの望みを叶える。
あやかしにしてしまったのは……
私のせい……
その気持ちは
《辛い後悔と懺悔……》
私の中の私の知らない忘れた何ががそう叫ぶ…
だから
償うの……私が私自身になるために…
そっと、果世さんに触れると妖怪の皮がボロボロと剥がれてきれいな、果世さんに戻った。
「あ、彼氏さんの方の傷も治ってる」
毒に侵された痣も傷もきれいに消えていた。
「もしかして、ルイちゃんは薬を浄化させる血と力を持ってんじゃ……」
と、ミミさんは腕を組み素直に思ったことを口にする。
光は一瞬に大きく輝き一瞬で月夜照らす夜の世界に戻る。
「あら?あれ…?めまいが…ふわふわするぅ…」
透明な体は色を戻し、私は足元がおぼつかなく倒れそうになる。
具合悪い、頭がガンガンする…思考がまとまらない。
(これは貧血…だ…またすべてを忘れちゃう……)
急激なめまいと具合の悪さの貧血が襲ってきて体が思うように動かなくなるのを感じた。
ミミさんは首を傾げて冷静に分析していた。
(ルイさん…っ!)
健十郎さんは蒼白な表情だ。
そんな彼に私は振り向きできる限り微笑む。
「私も…吸血鬼……彼女の血を吸い取ってしまえば彼女の暴走を抑えられるかもしれないって考えたのですけど…吸われる立場になってしまうなんて…私、ドジな吸血鬼ですよね…」
ゴフッと、血が口から吹き出す。
「ぐっ…っ!」
果世さん…蜘蛛女が私の血を吸うのを感じる。
牙からは毒が注入されて体がしびれてだんだん痛みがわからなくなってきた。
体の体液ごと吸われ妖力が奪われる。
ミミさんが言ったとおり妖怪は妖怪を食らって力になる。
一段と蜘蛛の体が大きくなった。
いや、私の体を掴んでいた節ばった足は人の手に変わる。
ミミさんがあやかしのを食べれば人の姿を保つというように、彼女も人の姿に保とうとしている。
噛まれて血を吸われて彼女の悲しみが伝わってきた。
私の場合は真逆のようだ。
記憶を知ることもできるが流れ込むように伝わる…血が吸われる方が彼女の本当の心の望みが伝わる。
『もとに戻りたい……あの時のじゅんちゃんと恋人になったときに…その後、事件なんて何もない幸せな人生に……』
とてもささやかな願いだった…
私は、お腹に食い込んでいる彼女の頭をそっと撫でて、愛おしげに見つめる。
『……私…の血を吸ったなら、あなたが私の望みを叶えて……』
私の言霊は神気を宿し放った。
私の体は透けて神々しく光る。
まるで肉体などもとからなかったかのようだ。
夜闇を照らす月の光よりも朝日の光に近いほど眩しく神々しい。
さらに私の血を吸った果世さんの口元、体全体が光る。
その異変に気づいた果世さんは私の方を見て目を見開く。
目の前に互いに見えるのは鏡のように自身の姿。
私など、『ルイ』という存在などいなかったような感覚になる…目の前に居る果世さんになることが私の望みじゃない……
私の望みはこの果世になることではない…叶えられない望みである……
私は彼女を優しく見つめてなでて、抱きしめる。
せめて、私の罪を償わさせて……
記憶にない何がが…そう強く思う…
それは彼女の痛みを浄化させる力になった……
互いに同じ姿になった…いや、血を吸われて彼女に私の望みが伝わったと感じる……
その光景が信じられない健十郎さんは、
「ルイさんは……本当に女神様…なのか?ミロのビーナスなんてもんじゃなくて、マリア様…のようだ…」
ゆるくなった口元の蜘蛛糸を食いちぎっていた健十郎さんがそうつぶやいた。
「ルイちゃんって何者なのニャ?ほんとうに吸血鬼なの?」
ミミさんも、私の様子を見て驚愕する。
《あなたは、人に……元のあなたに戻って…幸せに暮らして……》
私は果世さんの望みを叶える。
あやかしにしてしまったのは……
私のせい……
その気持ちは
《辛い後悔と懺悔……》
私の中の私の知らない忘れた何ががそう叫ぶ…
だから
償うの……私が私自身になるために…
そっと、果世さんに触れると妖怪の皮がボロボロと剥がれてきれいな、果世さんに戻った。
「あ、彼氏さんの方の傷も治ってる」
毒に侵された痣も傷もきれいに消えていた。
「もしかして、ルイちゃんは薬を浄化させる血と力を持ってんじゃ……」
と、ミミさんは腕を組み素直に思ったことを口にする。
光は一瞬に大きく輝き一瞬で月夜照らす夜の世界に戻る。
「あら?あれ…?めまいが…ふわふわするぅ…」
透明な体は色を戻し、私は足元がおぼつかなく倒れそうになる。
具合悪い、頭がガンガンする…思考がまとまらない。
(これは貧血…だ…またすべてを忘れちゃう……)
急激なめまいと具合の悪さの貧血が襲ってきて体が思うように動かなくなるのを感じた。
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