腹ペコ吸血鬼と警察官

花咲蝶ちょ

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9☆猫のお巡りさん

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「あー大丈夫。不良グループが来ても、俺が蹴散らして彼女を守るから」
 健十郎さんは女の子にヘラヘラしてそう返した。
 女の子はチッ!と顔を歪ませ嫌な表情をする。
 すると、いつのまにか健十郎さんの襟首を引っ張り睨みつける。
「そんな話をしてんじゃないことくらいわかるわよね?」
 彼女の声は可愛いのに怒りを滲ませて言う。
「ああ……」
 健十郎から不穏なオーラも感じる。
「それに、ここは俺の管轄なわばりなんだよ…余計なことすんなよ?ホテルで手をださなかったんだからな」
「それは、あんたがこの人と楽しんでたのが悪いんでしょ?私はあんたにあげるって言ったわよね?遊び人の浮気者が!」
「それは、その、悪かった…」
 健十郎さんは素直に謝る。
「ひどいわよ、私一人にホテルで張り込みさせて一人は恥ずかしかったんだから……責任取りなさいよ!」
 ラブホテルで一人で待っていた?どう言う事?
「この女の子とも、ホテルでデートだったんですか?」
 私は彼女さんよりも怒りの込めた声で健十郎さんに問い詰める。
「まって、勘違いだ!こんな気の強い女命いくらあっても足りないし!タイプじゃないし!腐れ縁なだけだし!」
「そうよ、勘違いよ!こんな粗野なやつとなんて、まっぴらごめんだわ!」
 二人は言ってる事は本心のようだ。
「じゃ、あの…お知り合いなんですか?」
 私はおずおずと聞いた。
「まぁ……同職同類ってやつだ。」
「と言う事は、刑事さん?女子高生じゃなくて?」
「女子高生の格好が大好きだけなばばあ…」
 と健十郎さんが言ったら顎に女の子の蹴りが入った。
「ばばあ…と言う事は女子高生ではないのですね。びっくりしました」
「あんた、失礼ね、このバカとお似合いね….んー?」
 女の子はクンクンと私の体の匂いを嗅ぐ。
 また臭いとか言われたらやだな…と思う。
「ふにゃ…いい匂いだにゃ……」
 仕草は猫っぽい。瞳も猫のよう縦の瞳孔になった。
 私と同じ人間じゃないと思う。
 健十郎さんが妖怪に縁があると言っていたのは本当のことだったのか……
「そうですか?ありがとうございます」
「ふーん。あんたも私たちと同類ぽいけど…でも、あっち側の感じもするわね…不思議な人間?……じゃないのかな?」
 といって、ニヤッと笑う。
 けれど、表情を消して、
「………もし、敵側だったら容赦しないから…」
 といって、猫がシャーっと威嚇するような表情をした。
「この女は猫田ミミ。猫娘でさっきのラブホあたりの管轄のお巡りさん」
 猫田ミミさんはビシッとと突然敬礼して一瞬警官らしい雰囲気になる。
「よろしくであります。」
「私はルイです。よろしくです…」
 挨拶の握手も改めてする。
「…こいつと付き合うってことは、体ボロボロにされるってことだから気をつけなよ…ね、今度こそ大切にしなよ、柴田犬…太郎さん?」
「余計なこと言うな!ボロボロなんかしたことないし!」
 顔を真っ赤にして怒る。
 嘘を言うなと言わなかった事はほんとかと疑ってしまう……
「で、奴はここに逃げ出したのか見たのか?人数は?」
 健十郎さんは気を張り詰めながら仕事をする。
「そうね、一番この場所が印象に深いのでしょうね……」
 といって、神妙な顔をする。
「強い恨み、無念、原因になった場所だからね。犯人はこの公園の中に居るのは確かよ…残念だけどあんたに譲るからさっさと解決しちゃいなさい」
「上司でもないのに命令すんな!」
「じゃ、もしあんた達二人死体になってたら、私が美味しく処してあげるから安心してね~」
 そういって、ぴょんと飛ぶと暗闇に消えた。
「まぁ、結界だけは張っておくから早く始末しちゃいなさいよ」
と声だけ響く。
「健十郎さんも…まさか…」
 話の端々、不思議な気配、現象、夜になる、闇が深くなる時刻になるたびに増してくる……記憶がなくなってしまってもこの感覚はわかる……そして鋭くなってくる。
 それが普通の感覚……
 じっと、はっきり、自分の存在を言わない健十郎さんを見つめた。
 その視線に気づいて、バツが悪くなったように目を逸らし、
「まぁ、おいおいな…」
 と言って健十郎さんはため息を吐いた。
「ぁぁぁぁ……」
 という、うめき声が響くようにこだまする。
「な、なんなのですか?突然これは…」
「結界の中だからな…」
 と言って真剣な顔で鼻をひくつかせ、私の手を引いて声の本体に近づいていった。
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