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ジジ様の最期
ジジ様の最期(前半)
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「どうせ、なら……葛葉子の最期も…看取ってやりたかったの…」
晴綛は急に体の調子が悪くなり、数日寝込んで時期を迎える。
「占いでは、寿命の年は、出ていたから、驚きはせず当たったことに陰陽寮長としての誇りが湧くな…はは…」
わしの声は息も絶え絶えで弱々しい…声を出すのも苦しい…だけど伝えたいことが今更たくさんある……
「そんなこと言わないでよ…死んじゃやだよ…ジジ様…」
葛葉子は涙をボロボロ流してわしの手をぎゅっと命を引き止めるように繋ぐ。
反対側の手はひ孫の桂と薫が葛葉子と同じ顔をして握る。
「わしは、とても幸せだったぞ…最期お前に看取ってもらえてな…孫たち…ひ孫たちもたくさん、親戚も、前と同じに…いや倍に増えてうれしいのじゃ….仲良くなって…本当に…よかった…」
阿倍野の一族は流行病や寿命の短さや神誓いにより一族は減っていた……
阿倍野当主になった晴綛一人が両親、妻、妹娘、娘婿、孫までも…愛しい物を見送って来た…。
それはとても辛かった…とても…
だから、そんな辛い想いをさせたくなかったのに自分が最期みんなに辛い思いをさせてしまうとは……
「わしはいつまでも幸せだった……最後にとても最高潮に幸せじゃ……なぁ…流花……」
目の前に涙に濡れる美しい妻がいる……手を差し伸ばす手を取ると、肉体から抜けた魂は若々しい昔の自分の姿に戻った。
「晴綛……お疲れ様でした頑張りましたね…」
「ああ……ありがとう…迎えにきてくれて嬉しいよ」
流花を抱きしめてこの世から霊は離れる。
「ジジ様…じじさまぁあああああああっ!」
葛葉子は泣き喚く。
ひ孫たちはメソメソ泣いてくれる。
唯一の肉親なのだから……仕方ない。
御霊のわしの瞳からも涙が溢れる。
わしのために泣いてくれる事、もう会えない触れられない悲しさに……
ただ一人瑠香くんはこちらを見る。
幽霊は見えないはずだが、ルカの神が見えるように力を貸してくれていた。
「ジジさまは幸せに逝けて羨ましい…」
瑠香くんはそう呟いて一筋涙をこぼす。
瑠香くんはわしと同じに大切な人に置いていかれる宿命だからだ……
だが、流花のように葛葉子が迎えにきてくれるだろう……
それは寂しさ辛さを乗り越えたご褒美だ。
ほとんど先に行ったものは転生してこの世に生まれてしまうのだから……
強い縁がなくてはいつ同じような関係で来世結ばれるかわからないのが生まれ変わりの道理らしい…
みんなとても泣いてくれる……わしも貰い泣きをしたが……
「よく、幸せにお過ごしになられましたね。ずっと見てましたよ…」
「ああ、流花……愛してる…」
「私も晴綛を愛してます……」
抱きしめてキスをして、この世のしがらみを昇華した。
「ジジ様…ジジ様…」
葛葉子は心が崩壊して泣きじゃくる。
ジジさまが年なのも命が残りわずかなのもわかってた。
でも、十年そばにいてくれた。
母や父や姉よりも長く寄り添ってくれていたこと…改めて感謝と悲しさが胸を押しつぶす。
そんな葛葉子に瑠香はそっと背中を摩り、慰める。
「葛葉子…ジジ様は幸せに逝ったよ、ルカの神が見せてくれた…」
葛葉子も天へ召されるジジさまを見ることができるのに辛くて見ようとはしなかった。
(私も…瑠香に子供達にこんな悲しい思いさせたくないよ……!)
その思いが瑠香に伝わり胸が裂かれる思いは辛い瑠香も同じことを思ったからだ。
瑠香はジジ様が召される事にはたいして涙は出なかったが、葛葉子の時を思うととても辛い。
「かーさん!ジジ様言ってた!悲しんでる時間があるなら幸せに楽しく生きろって!」
「だから、楽しく生きよう!
子供達は泣きながら母を慰める。
「うん、そうだね。」
「ジジさま今まで本当にありがとう……ジジさまがいてくれてとても楽しかった…心強かったよ…」
そう逝ってようやく朝日に透け消えるジジ様を眺めた。
「これから葬儀とか、いろいろあるからね!悲しんでられないね……!」
ジジ様の葬儀を明るく楽しいものにしよう。
葛葉子は無理矢理でも明るく己を奮い立たせる。
「五〇日の間はこの世に彷徨ってらしいしな。彼岸もお盆も帰ってきてくれるよ」
「盆正月帰って来てきたら、また呪術おしえてもらうんだ!」
「オレも!」
「いや、亡くなった御霊に呪術教わったらダメだろ……御霊が消滅しかねない」
高良が神道の葬儀をしてくれて畏れ多くも祝皇陛下の使者が遣わされて、東殿下も臣も槐寿も桜庭季節夫婦も来た。
宮中を、退職されたまだ存命の同期も親交のあったあやかしたちは人の姿をして訪れ晴綛が亡くなって悲しむ。
年取って交流を経っていたのに皆、晴綛を覚えていて慕っていたのだ。
そのことに晴綛は満足で己の葬儀を阿倍野屋敷で眺めていた。
晴綛は急に体の調子が悪くなり、数日寝込んで時期を迎える。
「占いでは、寿命の年は、出ていたから、驚きはせず当たったことに陰陽寮長としての誇りが湧くな…はは…」
わしの声は息も絶え絶えで弱々しい…声を出すのも苦しい…だけど伝えたいことが今更たくさんある……
「そんなこと言わないでよ…死んじゃやだよ…ジジ様…」
葛葉子は涙をボロボロ流してわしの手をぎゅっと命を引き止めるように繋ぐ。
反対側の手はひ孫の桂と薫が葛葉子と同じ顔をして握る。
「わしは、とても幸せだったぞ…最期お前に看取ってもらえてな…孫たち…ひ孫たちもたくさん、親戚も、前と同じに…いや倍に増えてうれしいのじゃ….仲良くなって…本当に…よかった…」
阿倍野の一族は流行病や寿命の短さや神誓いにより一族は減っていた……
阿倍野当主になった晴綛一人が両親、妻、妹娘、娘婿、孫までも…愛しい物を見送って来た…。
それはとても辛かった…とても…
だから、そんな辛い想いをさせたくなかったのに自分が最期みんなに辛い思いをさせてしまうとは……
「わしはいつまでも幸せだった……最後にとても最高潮に幸せじゃ……なぁ…流花……」
目の前に涙に濡れる美しい妻がいる……手を差し伸ばす手を取ると、肉体から抜けた魂は若々しい昔の自分の姿に戻った。
「晴綛……お疲れ様でした頑張りましたね…」
「ああ……ありがとう…迎えにきてくれて嬉しいよ」
流花を抱きしめてこの世から霊は離れる。
「ジジ様…じじさまぁあああああああっ!」
葛葉子は泣き喚く。
ひ孫たちはメソメソ泣いてくれる。
唯一の肉親なのだから……仕方ない。
御霊のわしの瞳からも涙が溢れる。
わしのために泣いてくれる事、もう会えない触れられない悲しさに……
ただ一人瑠香くんはこちらを見る。
幽霊は見えないはずだが、ルカの神が見えるように力を貸してくれていた。
「ジジさまは幸せに逝けて羨ましい…」
瑠香くんはそう呟いて一筋涙をこぼす。
瑠香くんはわしと同じに大切な人に置いていかれる宿命だからだ……
だが、流花のように葛葉子が迎えにきてくれるだろう……
それは寂しさ辛さを乗り越えたご褒美だ。
ほとんど先に行ったものは転生してこの世に生まれてしまうのだから……
強い縁がなくてはいつ同じような関係で来世結ばれるかわからないのが生まれ変わりの道理らしい…
みんなとても泣いてくれる……わしも貰い泣きをしたが……
「よく、幸せにお過ごしになられましたね。ずっと見てましたよ…」
「ああ、流花……愛してる…」
「私も晴綛を愛してます……」
抱きしめてキスをして、この世のしがらみを昇華した。
「ジジ様…ジジ様…」
葛葉子は心が崩壊して泣きじゃくる。
ジジさまが年なのも命が残りわずかなのもわかってた。
でも、十年そばにいてくれた。
母や父や姉よりも長く寄り添ってくれていたこと…改めて感謝と悲しさが胸を押しつぶす。
そんな葛葉子に瑠香はそっと背中を摩り、慰める。
「葛葉子…ジジ様は幸せに逝ったよ、ルカの神が見せてくれた…」
葛葉子も天へ召されるジジさまを見ることができるのに辛くて見ようとはしなかった。
(私も…瑠香に子供達にこんな悲しい思いさせたくないよ……!)
その思いが瑠香に伝わり胸が裂かれる思いは辛い瑠香も同じことを思ったからだ。
瑠香はジジ様が召される事にはたいして涙は出なかったが、葛葉子の時を思うととても辛い。
「かーさん!ジジ様言ってた!悲しんでる時間があるなら幸せに楽しく生きろって!」
「だから、楽しく生きよう!
子供達は泣きながら母を慰める。
「うん、そうだね。」
「ジジさま今まで本当にありがとう……ジジさまがいてくれてとても楽しかった…心強かったよ…」
そう逝ってようやく朝日に透け消えるジジ様を眺めた。
「これから葬儀とか、いろいろあるからね!悲しんでられないね……!」
ジジ様の葬儀を明るく楽しいものにしよう。
葛葉子は無理矢理でも明るく己を奮い立たせる。
「五〇日の間はこの世に彷徨ってらしいしな。彼岸もお盆も帰ってきてくれるよ」
「盆正月帰って来てきたら、また呪術おしえてもらうんだ!」
「オレも!」
「いや、亡くなった御霊に呪術教わったらダメだろ……御霊が消滅しかねない」
高良が神道の葬儀をしてくれて畏れ多くも祝皇陛下の使者が遣わされて、東殿下も臣も槐寿も桜庭季節夫婦も来た。
宮中を、退職されたまだ存命の同期も親交のあったあやかしたちは人の姿をして訪れ晴綛が亡くなって悲しむ。
年取って交流を経っていたのに皆、晴綛を覚えていて慕っていたのだ。
そのことに晴綛は満足で己の葬儀を阿倍野屋敷で眺めていた。
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