あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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威津那と晴綛の対決

晴綛と威津那の対決☆4☆エンド

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「死んだら結ばれなくなるがな……そうすれば娘の運命は宿命は変わるだろう……」
 晴綛は容赦する事をしない。
 大切な娘が死ぬという運命は受け入れたくない。
 威津那を殺せば、八那果に予言されたことは無効になる。
 だが、先程から威津那の背後にハルの神が降りている。
《このものは我の器にしたい…処すな…》
 晴綛の背後に自分に似た神がそう諭す。
 ハルの神は宿命を定め日和を導く神……
 導く者として晴綛を分祀のように作り生みし神。
 そんな親神の命令は絶対だった。
 逆らいたくても逆らえないのが晴綛の最大の宿命。
 晴綛はため息を吐く。
 糸を少し緩めると、威津那は咳き込んで不思議そうにこちらをみる。
 本来なら殺されても仕方がないのだから…
「お前を神の依代にする…そのため生かしてやる。」
「……は?」
 威津那は意味がわからない。
「……後々説明してやる。わしの命令を聞く傀儡になるのならば娘を紹介してやってもいいぞ」
 さらに突然の柔軟さに威津那は首を傾げるが、望みが叶うことを理解すると、
「はい!なります!」
「あと、レッドスパイを辞めろ。でなきゃ娘に合わせない」
「レッドスパイ辞めます。」
「即答かよ…」
 晴綛は呆れる。
 煙管でぐいっと顎を持ちあげて威津那の瞳を見る。
 未来を見ない時は日和人独特の黒い瞳だ。その瞳の中に濁りを感じる。
 八那果の呪詛が血に縛られているのかもしれないと思うと危険を感じるが、後ろでハルの神がどうしても威津那を器にしたいと、宣言される。
 数日前にハルの神から威津那を器にと言われていた。
 (神のお導きだ…どうにかなるだろう…)
 つい本気になって、器なる前に破壊するところだった。
「お前がわしの娘を殺すものならばすぐさま首を掻っ切る。この糸を切ればお前の命も切れるからな。」
 左の小指の糸を引く。
 すると、威津那の喉元に食い込みが発生する。
「いや、僕のお嫁さんになる人を殺すわけないじゃないですか。僕の言いなりにするだけ…」
「ふんっ!」
「ぐげっ…」
 威津那は首の赤い糸を思いっきり引っ張られてそのまま息が止まるかと思ったが、晴綛は威津那の襟首を引き寄せるよると再び目が合う。
 晴綛の瞳は金ではなく青かった。
 それも冷徹さを思わせる冷たい色。
「特別娘に紹介してやるが無断で娘に手を出すんじゃないぞ……」
 すごく冷静で冷たい声だった。
 父親なら当然の答えだと威津那は思う。
「将来僕の子供が娘だったら同じこと言いますね」
 思った事を口に出してしまった。
「おまえ……今それをいうか?」
「…あっ」
 威津那は慌てて口を押さえる。
「お前、諜報者とか、全く向いとらんな…」
「よく言われます…」
 先ほどまでの殺戮、呪詛を背負うような雰囲気などかけらなど見せなくなったのはさすがだと思うが。
「根は正直な奴だな、父親と違って」
「父も根は良い人ですよ?」
「知っておる。長い付き合いだったからの」
「いつか、その時の話聞かせてください」
「慣れすぎ…口の利き方も調教せねばな」
 晴綛は調教のために少し糸を締め上げ黙らせた。
(まぁ、橘にこの男を紹介したらどんな反応するかの…十年間この男のことばかりで、憧れ妄想がうんざりするほどだったからの……)
 晴綛はこれから娘に威津那を紹介する事を楽しみにした。

 神誓いするなら遊び程度に恋をしていればいい…
「橘もそれでおとなしくなるかも知れぬしな……」
 と晴綛はぼやく。
 威津那の橘に対する執念に根負けした。
 橘も威津那のことを未だに忘れられず妄想まで繰り広げているくらいなのだ。
(まだ本気とはいかんだろうが娘を希望の光だというくらい強い気持ちも持っているし、こやつは覚えてるかわからんが幼い頃ころから橘が生まれるのを心待ちにしておってしな…)
「まぁ、とりあえずわしには劣るが強いから娘に合わせてやるから覚悟しろ」
(覚悟ってなんだろ……)
 威津那は意味不明な言葉に不安になった。
 その後、橘と再開した威津那は橘から猛アタックをされるのだった。
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