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後日談
晴綛を眷属☆後編
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数日前不穏な影が日和国を覆った。
それは隣の国からの呪詛だと言うことで職員総出で呪詛を祓う儀式をやったが効果のほどはなく、晴綛が全身全霊かけてどうにかすると皆に宣言して、流花にそのことを伝えた。
「生きて帰れるかわからん……一つだけ、いいか…?」
いつもはおちゃらけている晴綛が珍しく真面目に照れて願い事を言う。
「女神の加護が欲しい…」
ルカの神の加護が欲しいならわかるのだけど、女神の加護とは…祈り姫様の加護かしら?
「私、正確には女神じゃなくて巫女ですけど…」
「流花の加護が欲しいんだ……」
晴綛は私の手をずっと取りとり口付けをする。
「こ、こんな感じで……」
流花はあまりのことに真っ赤になって手を引っ込めたが……どまどった晴綛にドキドキした。
あまりの純粋な少年みたいなことをされて流花は顔を赤くする。
でもその時は素直になれない少女のように振る舞ってしまって、
「ぶ、無事に帰ってきたらして差し上げます!」
照れてつい意地を張ってお願い事を叶えなかった。
夫婦でもないのにそんなことは不貞にも思えたし、なぜだか恥ずかしく思えた。
「そうか……」
晴綛は少し寂しげだった。
本当に生きて帰ってこれないかもしれないからこその願いだったのだと思うと切なくなった。
「か、帰ってきてください…必ず…そしたら、して差し上げます」
「ああ……頑張ってみせるよ」
夫婦なら抱擁もあるだろうが一線を引くのでもどかしさだけが残った。
目が覚めたのちどんな使役をされたのか聞くと人の姿では力の限界があると見込んだ黒御足が無理やり管狐の契約を結び呪詛を消し去ったそうだ。
その時晴綛にも呪詛が及び自慢の金毛並みは呪詛で焼けたが、呪詛を放つ者を晴綛は直接打ち取った。
その時晴綛についた国辱の呪詛はすべて黒御足が持ち去ったが、疲労困憊の抜け殻の晴綛だけ残ったと言うことだった。
娘たちが深く眠っている丑三つ時、晴綛は目を覚ました。
「もう、あんな人と付き合わないでくださいませ……」
「すまんの…仕事の付き合いでもあるののでな……でも、帰って来れてよかった……膝枕良いものだな」
狐の姿で弱々しくそう言った。
さらに甘えていると思う。
いつもなら一線置くため甘えられることは互いにないのに、今はとても甘えて欲しい。
「ほんと…帰ってくださって…よかったです……」
明綛の時のように帰って来なかったらどうしようと、不安になっていた……
「本当によかった……」
流花は本当に心底ホッとしてポロポロと涙を落とす。
「流花…もう泣くな…」
流花に頬を弱った体で涙を舐めようとしたところ、足がかくっとなった。
「だっ…っ!?」
大丈夫ですか!と言おうとした流花の口に間違えてぺろっと唇を舐める。
しかも、唇が半開きだったために舌が入った。
あまりのことに流花も晴綛も驚いたら、晴綛から煙が出て、流花に素っ裸の晴綛が流花を押し倒していた。
「人間に戻れた……ようですわね」
「偶然、か?」
《眷属の契約は舌を絡ませることだよ》
ルカの神はそう言った。
「わしはルカの眷属になってしまったらしいな…」
「さっきので?」
晴綛は頷く。
《ふふ、しばらくは流花の命令しか効かなくなるよ……》
ルカの神はいつも事後報告だ。
「流花よ…わしに命令してくれ……」
「え…?」
晴綛は艶っぽく青い瞳を流花の瞳に合わせて頬を触れて人として契約を交わそうとしている。
それは眷属になったから最初の命令のための行動か、それともイタズラか……でも、もし本当に眷属にできたらもうボロボロになることもない…黒御足に取られることはない…
(取られることってなに!?)
まるで、黒御足にヤキモチ妬いてるようだと思うと、気づいてしまう。
晴綛に恋をしていまったのではないかと……
「流花……命令してくれ…」
両手で頬を挟まれて唇を寄せようとする…
「き、着物着てください!」
「お、おう!」
晴綛は命令通りそばに畳んで置かれた着物を着る。
ほんとに命令は聞いてくれるらしい……
(調子に乗って良いのかしら?)
「手の甲を出して」
「はい…」
流花は晴綛の手の甲に口付けをする。
「帰ってきてくれたご褒美です。」
ニコッと微笑んでスッキリ顔をした。
心残りを果たせたと思うから。
「う、嬉しすぎる、ご褒美だ!」
晴綛は顔を真っ赤にして涙を流した。
「まさか…わざと眷属になったふりしましたか……?」
「そうじゃない!今解けたのじゃ!」
嬉しすぎて尻尾がパタパタしているのがいつも以上に激しい。
「もう、忠犬ハチ公みたいですわね…いえ、私の方がハチ公?」
流花は首を傾げて考える。
ずっと晴綛の帰りを待っていた。
夫の帰りも現在進行形だ。
「互いにハチ公で良いではないか」
「そうですわね、うふふ」
その夜は晩酌までして今まで以上にに、たわいもない話を語り合った。
兄嫁と義弟という一線引いた壁がまた崩れてまた一歩互いに近づいたのだった。
そして、夫婦となった今や……
宮中から帰ってきた晴綛の手の甲をとり、口付ける。
「無事に帰ってきてくれてありがとう…」
さらに娘たちが見ていなければ頬擦りする。
「じゃ、また宮中に行ってくるぞ!」
流花の手の甲を取り跡がつくくらいの口付けをする。
仕事に行ってきますと、ただいまは互いの手の甲にキスをするのが恒例になってしまった。
どこの夫婦にも負けないほど、おしどり夫婦になったのだった。
それは隣の国からの呪詛だと言うことで職員総出で呪詛を祓う儀式をやったが効果のほどはなく、晴綛が全身全霊かけてどうにかすると皆に宣言して、流花にそのことを伝えた。
「生きて帰れるかわからん……一つだけ、いいか…?」
いつもはおちゃらけている晴綛が珍しく真面目に照れて願い事を言う。
「女神の加護が欲しい…」
ルカの神の加護が欲しいならわかるのだけど、女神の加護とは…祈り姫様の加護かしら?
「私、正確には女神じゃなくて巫女ですけど…」
「流花の加護が欲しいんだ……」
晴綛は私の手をずっと取りとり口付けをする。
「こ、こんな感じで……」
流花はあまりのことに真っ赤になって手を引っ込めたが……どまどった晴綛にドキドキした。
あまりの純粋な少年みたいなことをされて流花は顔を赤くする。
でもその時は素直になれない少女のように振る舞ってしまって、
「ぶ、無事に帰ってきたらして差し上げます!」
照れてつい意地を張ってお願い事を叶えなかった。
夫婦でもないのにそんなことは不貞にも思えたし、なぜだか恥ずかしく思えた。
「そうか……」
晴綛は少し寂しげだった。
本当に生きて帰ってこれないかもしれないからこその願いだったのだと思うと切なくなった。
「か、帰ってきてください…必ず…そしたら、して差し上げます」
「ああ……頑張ってみせるよ」
夫婦なら抱擁もあるだろうが一線を引くのでもどかしさだけが残った。
目が覚めたのちどんな使役をされたのか聞くと人の姿では力の限界があると見込んだ黒御足が無理やり管狐の契約を結び呪詛を消し去ったそうだ。
その時晴綛にも呪詛が及び自慢の金毛並みは呪詛で焼けたが、呪詛を放つ者を晴綛は直接打ち取った。
その時晴綛についた国辱の呪詛はすべて黒御足が持ち去ったが、疲労困憊の抜け殻の晴綛だけ残ったと言うことだった。
娘たちが深く眠っている丑三つ時、晴綛は目を覚ました。
「もう、あんな人と付き合わないでくださいませ……」
「すまんの…仕事の付き合いでもあるののでな……でも、帰って来れてよかった……膝枕良いものだな」
狐の姿で弱々しくそう言った。
さらに甘えていると思う。
いつもなら一線置くため甘えられることは互いにないのに、今はとても甘えて欲しい。
「ほんと…帰ってくださって…よかったです……」
明綛の時のように帰って来なかったらどうしようと、不安になっていた……
「本当によかった……」
流花は本当に心底ホッとしてポロポロと涙を落とす。
「流花…もう泣くな…」
流花に頬を弱った体で涙を舐めようとしたところ、足がかくっとなった。
「だっ…っ!?」
大丈夫ですか!と言おうとした流花の口に間違えてぺろっと唇を舐める。
しかも、唇が半開きだったために舌が入った。
あまりのことに流花も晴綛も驚いたら、晴綛から煙が出て、流花に素っ裸の晴綛が流花を押し倒していた。
「人間に戻れた……ようですわね」
「偶然、か?」
《眷属の契約は舌を絡ませることだよ》
ルカの神はそう言った。
「わしはルカの眷属になってしまったらしいな…」
「さっきので?」
晴綛は頷く。
《ふふ、しばらくは流花の命令しか効かなくなるよ……》
ルカの神はいつも事後報告だ。
「流花よ…わしに命令してくれ……」
「え…?」
晴綛は艶っぽく青い瞳を流花の瞳に合わせて頬を触れて人として契約を交わそうとしている。
それは眷属になったから最初の命令のための行動か、それともイタズラか……でも、もし本当に眷属にできたらもうボロボロになることもない…黒御足に取られることはない…
(取られることってなに!?)
まるで、黒御足にヤキモチ妬いてるようだと思うと、気づいてしまう。
晴綛に恋をしていまったのではないかと……
「流花……命令してくれ…」
両手で頬を挟まれて唇を寄せようとする…
「き、着物着てください!」
「お、おう!」
晴綛は命令通りそばに畳んで置かれた着物を着る。
ほんとに命令は聞いてくれるらしい……
(調子に乗って良いのかしら?)
「手の甲を出して」
「はい…」
流花は晴綛の手の甲に口付けをする。
「帰ってきてくれたご褒美です。」
ニコッと微笑んでスッキリ顔をした。
心残りを果たせたと思うから。
「う、嬉しすぎる、ご褒美だ!」
晴綛は顔を真っ赤にして涙を流した。
「まさか…わざと眷属になったふりしましたか……?」
「そうじゃない!今解けたのじゃ!」
嬉しすぎて尻尾がパタパタしているのがいつも以上に激しい。
「もう、忠犬ハチ公みたいですわね…いえ、私の方がハチ公?」
流花は首を傾げて考える。
ずっと晴綛の帰りを待っていた。
夫の帰りも現在進行形だ。
「互いにハチ公で良いではないか」
「そうですわね、うふふ」
その夜は晩酌までして今まで以上にに、たわいもない話を語り合った。
兄嫁と義弟という一線引いた壁がまた崩れてまた一歩互いに近づいたのだった。
そして、夫婦となった今や……
宮中から帰ってきた晴綛の手の甲をとり、口付ける。
「無事に帰ってきてくれてありがとう…」
さらに娘たちが見ていなければ頬擦りする。
「じゃ、また宮中に行ってくるぞ!」
流花の手の甲を取り跡がつくくらいの口付けをする。
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