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思い募る
6☆一線越えて覚悟決まる
しおりを挟む「阿部野家は女子から襲われるとわしのような半妖ができるんじゃが、母もきっとこの媚薬を飲まされたんじゃろうな…」
女から襲う…神話でいう女神から声をかけると人ではない者が出来るという理かと改めて思う。
「うふふ、あなたそっくりな娘が欲しいわ…」
下腹部に二人で手を当てる。
宿ってほしいと願いながら……
「宿命は本当に変えられないのだな……」
晴綛はそう呟いた。
「流花……わしは未来を変えたかったんじゃ……わしの子が出来れば奴の予言通り娘は白狐になる……それは寿命が短いということなのじゃ……そして、わしは残される未来が怖いんだ……」
晴綛は流花を後ろから抱きしめて秘めていた不安を吐露する。
大切なお前の血縁はお前を残して先に死んでいく……
やつは意地悪か闇堕ちした己を誰かに……わしに止めてほしいのか未来を予言しよった……
流花と恋仲になる…いや夫婦になる予言も…わしの方が長生きして子孫を見送る予言も……
全てを見通すあの赤い瞳に呪われた気分だった……
「ならば、わしさえ子を残さなければ奴の望みは潰えると思っておったが、神の導きの定めは変えることはできないらしい……だが流花と結ばれて後悔は一切ない…」
そう言って尚更抱きしめる。
流花はその腕にそっと触れて頬を寄せる。
「そうね、その定めで私たちはこうして結ばれて、娘を成せるというのならば全てが悪い予言ではないわ」
私は子供ができるなら幸せだしずっとあなたと一緒にいられるなら幸せよ。
そして、この子は望んだ幸せを掴める人生を歩む子になるわ」
膨れていないお腹に晴綛の手を重ねて撫でさせる。
「そうだな…わしもそう確信することができたよ。だが、白狐にしないように努力するがな」
「幸せな未来は自ら叶えていくものよ。いずれみんながあなたを置いていっても……それまで幸せに思い出をたくさん作っていきましょう。寂しくないように。」
「そうだな、楽しく生きて行こう…絶望なんて勿体無いことはせぬと決めたぞ!」
「そうよ、絶望する時間なんてもったいないわ。」
晴綛と流花は同時に意気投合して「えいえい!おー!」と腕を上げて鼓舞して笑い合った。
「流花…好きだよ…」
「私も……」
ならば、思いっきり己の好きに生きて大切なものを命の限り守るそれしかないではないか……
今宵の契りは神々に望まれて逢瀬を重ねて夫婦と定められたもの……
晴綛は未来が怖かっただから、境界線を引いて流花に懸想をしていた……
けれど一線を超えてしまったならば未来への覚悟を決意した。
そして、もし明綛が今世に帰ってきても流花を絶対に譲らない……
愛を思い存分味わって現世に帰ったら物忌期間も過ぎていた。
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