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1☆八尾比丘尼と流花とウカ様
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八尾比丘尼は桜満開の時期に阿倍野屋敷の門の戸を叩いた。
「流花様に義妹として認めてもらうために勝負をしていただきたく参りました」
「まぁ、遠路はるばるいらしても、認めることはございませんよ?」
流花は出来るだけ和やかに微笑みながら、はっきり拒否をする。
阿倍野の敷居を踏ませぬように門で立ちはだかってみせた。
「さしで勝負しましょうと、先日、約束なさいましたでしょ?」
八尾比丘尼はねっとりとした色気のある声音でいう。
それはおねだりをしているように流花は感じた。
「たしかに…けれど当家では勝負事は……」
流花は勝負することすらめんどくさいと思い、とにかく八尾比丘尼を追い出そうと策を巡らすが、
「なにも、阿部野屋敷で勝負などしなくてもよいのですのよっ」
「きゃっ!」
八尾比丘尼は流花の手を強引に引っ張った。
門の敷居から出た瞬間空間がぐにゃりと歪むと広い畳と真白な障子と艶やかな椿の金粉をふんだんに使った襖の屋敷に光景が広がり、流花はあまりのことにあんぐりと口を開けてしまっていた。
「お間抜けなお顔もなさるのですね」
「むむっ!誰のせいだと!」
「私の異界の素晴らしさのせいでございましょう」
八尾比丘尼は自慢できてご機嫌のようだ。
「あ、草履はおぬぎになってね」
「は、はい!」
流花は急いで埃で汚れた草履を脱ぐ。
八尾比丘尼は気に食わないけれどこんな美しい部屋を汚してはいけないと思う。
『おう、ワシがお前たちの勝負を見届けてやるぞ!』
瓢箪を加えた毛がふさふさした神々しいウカノミタマの神の化身の大神白狐のウカ様がいつの間に大きな座布団に寝そべっていた。
「勝負とは一体何をなさいますの?」
『酒飲み対決にじゃ!』
ウカ様は咥えた瓢箪を床に置く。
『これは祝福の酒じゃ。勝った者は最大限の祝福を約束されてある』
「望みが叶うお酒という事ですわね?希少なお酒を飲めるなんてそれだけでも祝福でございますわね!」
八尾比丘尼はお酒が好きなのか瞳が輝く。
《これは、神に定された勝負だよ…心して挑むように……と言っても審神者がいなければ私の言葉は伝わらないか……》
審神者の晴綛は神の声と姿を見る能力を持ち、悪しき神ならば陛下に近付かせなず祓う力を持っている。
今は宮中で陛下のおそば近くで護衛中だった。
流花は神を宿す器の巫女……器に入り操っても気を御霊の場所を譲っている状態のため、声を聞くことができない。
この間の山神の時のように晴綛と流花は共に仕事をする事に特化した能力なのだ。
巫女なのに孕んだために宮中外の日和に関わる重要事項の仕事を請け負う事をしている。
そんな巫女の仕事をしているのは以外と流花だけではなく、元々神社関係の力のある巫女も同じ仕事をしている。
そして、普段は家内を守る女主人だ。
八尾比丘尼はふふッと微笑み流花の背後に浮遊するルカの神を見上げて、
「私、ルカの神を見ることも声も聞くこともできますわよ?お伝えしてよろしいですか?」
ルカの神の言葉を八尾比丘尼は伝えて流花は神妙な顔をして勝負を承諾した
《八尾比丘尼はあやかしなのに神に近い力を得たね。海神の神の娘の血肉を頂いただけあるね》
「そんな力よりも、人間に戻って人生を全うすることが望みですけどね……」
八尾比丘尼は絶望感…諦めをため息に出す。
『そんなつまらぬ未来の夢を考えても無駄じゃ。今が楽しければ過去も未来も楽しいものじゃ!さぁ、勝負をするのだ!』
ウカ様は諌められず酒が飲めて、一人の男を射止める神誓いの勝負に瞳を輝かせる。
「ワシも参加したいが、晴綛は息子のようなものじゃしな。今回は真なる嫁が決まる戦いじゃ!楽しみじゃの』
「真なる嫁って…私は晴綛の嫁になるとは言ってないです…!このままの関係で……」
『……そのままは許さぬ…八尾比丘尼との勝負をせねば、この日和国の寿ぎを未来永劫無くすことになるぞ……?』
陽気なウカ様はとても真剣だった。
背筋にピリピリした圧も感じるほどに。
『流花が嫌ならば神にも近いあやかしの八尾比丘尼殿を晴綛の嫁に迎えてとんでもない力を持つあやかしができるのも楽しみじゃがの?』
「嫌だわーお義母様ったらっ!」
八尾比丘尼はすでに嫁気分だ。
『……わかりましたわ…その勝負に勝って、あなたに晴綛をあげません」
「あげませんって……お子様みたいですわね。晴綛様を物扱いするあなたを私は気に食わないのですわ…」
視線が合うと見えない火花が散った。
「流花様に義妹として認めてもらうために勝負をしていただきたく参りました」
「まぁ、遠路はるばるいらしても、認めることはございませんよ?」
流花は出来るだけ和やかに微笑みながら、はっきり拒否をする。
阿倍野の敷居を踏ませぬように門で立ちはだかってみせた。
「さしで勝負しましょうと、先日、約束なさいましたでしょ?」
八尾比丘尼はねっとりとした色気のある声音でいう。
それはおねだりをしているように流花は感じた。
「たしかに…けれど当家では勝負事は……」
流花は勝負することすらめんどくさいと思い、とにかく八尾比丘尼を追い出そうと策を巡らすが、
「なにも、阿部野屋敷で勝負などしなくてもよいのですのよっ」
「きゃっ!」
八尾比丘尼は流花の手を強引に引っ張った。
門の敷居から出た瞬間空間がぐにゃりと歪むと広い畳と真白な障子と艶やかな椿の金粉をふんだんに使った襖の屋敷に光景が広がり、流花はあまりのことにあんぐりと口を開けてしまっていた。
「お間抜けなお顔もなさるのですね」
「むむっ!誰のせいだと!」
「私の異界の素晴らしさのせいでございましょう」
八尾比丘尼は自慢できてご機嫌のようだ。
「あ、草履はおぬぎになってね」
「は、はい!」
流花は急いで埃で汚れた草履を脱ぐ。
八尾比丘尼は気に食わないけれどこんな美しい部屋を汚してはいけないと思う。
『おう、ワシがお前たちの勝負を見届けてやるぞ!』
瓢箪を加えた毛がふさふさした神々しいウカノミタマの神の化身の大神白狐のウカ様がいつの間に大きな座布団に寝そべっていた。
「勝負とは一体何をなさいますの?」
『酒飲み対決にじゃ!』
ウカ様は咥えた瓢箪を床に置く。
『これは祝福の酒じゃ。勝った者は最大限の祝福を約束されてある』
「望みが叶うお酒という事ですわね?希少なお酒を飲めるなんてそれだけでも祝福でございますわね!」
八尾比丘尼はお酒が好きなのか瞳が輝く。
《これは、神に定された勝負だよ…心して挑むように……と言っても審神者がいなければ私の言葉は伝わらないか……》
審神者の晴綛は神の声と姿を見る能力を持ち、悪しき神ならば陛下に近付かせなず祓う力を持っている。
今は宮中で陛下のおそば近くで護衛中だった。
流花は神を宿す器の巫女……器に入り操っても気を御霊の場所を譲っている状態のため、声を聞くことができない。
この間の山神の時のように晴綛と流花は共に仕事をする事に特化した能力なのだ。
巫女なのに孕んだために宮中外の日和に関わる重要事項の仕事を請け負う事をしている。
そんな巫女の仕事をしているのは以外と流花だけではなく、元々神社関係の力のある巫女も同じ仕事をしている。
そして、普段は家内を守る女主人だ。
八尾比丘尼はふふッと微笑み流花の背後に浮遊するルカの神を見上げて、
「私、ルカの神を見ることも声も聞くこともできますわよ?お伝えしてよろしいですか?」
ルカの神の言葉を八尾比丘尼は伝えて流花は神妙な顔をして勝負を承諾した
《八尾比丘尼はあやかしなのに神に近い力を得たね。海神の神の娘の血肉を頂いただけあるね》
「そんな力よりも、人間に戻って人生を全うすることが望みですけどね……」
八尾比丘尼は絶望感…諦めをため息に出す。
『そんなつまらぬ未来の夢を考えても無駄じゃ。今が楽しければ過去も未来も楽しいものじゃ!さぁ、勝負をするのだ!』
ウカ様は諌められず酒が飲めて、一人の男を射止める神誓いの勝負に瞳を輝かせる。
「ワシも参加したいが、晴綛は息子のようなものじゃしな。今回は真なる嫁が決まる戦いじゃ!楽しみじゃの』
「真なる嫁って…私は晴綛の嫁になるとは言ってないです…!このままの関係で……」
『……そのままは許さぬ…八尾比丘尼との勝負をせねば、この日和国の寿ぎを未来永劫無くすことになるぞ……?』
陽気なウカ様はとても真剣だった。
背筋にピリピリした圧も感じるほどに。
『流花が嫌ならば神にも近いあやかしの八尾比丘尼殿を晴綛の嫁に迎えてとんでもない力を持つあやかしができるのも楽しみじゃがの?』
「嫌だわーお義母様ったらっ!」
八尾比丘尼はすでに嫁気分だ。
『……わかりましたわ…その勝負に勝って、あなたに晴綛をあげません」
「あげませんって……お子様みたいですわね。晴綛様を物扱いするあなたを私は気に食わないのですわ…」
視線が合うと見えない火花が散った。
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