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雪女とナマハゲ
19☆春の風は恋の始まり☆エンド☆
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《お前が雪女となるために糧にする人間か……ナマハゲの神の依代の人間に惚れるとはな……》
流花の体を借りる山神は満足げに笑う。
その雰囲気は娘との結婚を許そうとしている父親のようなものだと感じる。
《さあ、もう時間がない真の雪女となり来年の雪の季節まで眠ろうではないか…》
「……はい…」
父神の願いは絶対だ。
雪女はその願いを果たせず今まで命を中途半端のまま長らえてきた。
雪女になれば山神の一部になり、冬の精霊となり神に近い存在になる…
望めば人に化けて、男を惑わすあやかしにもなり御霊を食らう。
そういう死を与える存在になる。
最初の贄は颯太を選んだのだ。
八尾比丘尼の血を飲んだとしても生き返るかどうか一か八…
雪女には不安が胸をよぎる。
そんな雪女に颯太は優しく微笑み、
「もうお前と会えなくなるなら、春の暖かさで消えてしまうと言うのならば…俺の精気を吸って生きてほしい。」
颯太は柔らかく笑う。
「颯太…すまぬ…」
二人はしばらく抱き合って、ついに口づけを交わす。
そして、口を離すとそこから御霊を抜くような冷気が雪女の口に吸い流れる。
唇を重ねた瞬間に生気を吸い取るように雪女はなっていた。
颯太の精気を吸い、血肉をも氷に変えてしまったならば、血の効力は効かないかも知れぬ…とわしは険しい顔になる。
雪女の紅花を敷いた目元と口元は青く冷たい化粧になった。
颯太はそのまま凍ったまま息を引き取った。
「……これで誓約は成りましたな?」
わしは山神に確認する。
《ああ、春を約束しよう……》
流花の中に入った山神は頷く。
《誓約は叶った。これで無事季節が動く。》
寒さに凍った大地がざわめく気配が山に訪れる。
土から芽が活発に動き出すようなざわめく振動…冬萌えだ。
山神の雰囲気も変わる……
《冬の山神は眠る…雪女もこい…》
山神は瑠花から体を離れ大気と交わるような大きな御霊の手を雪女に差し出す。
『ごめんなさい…お父様…』
雪女は頭を振り、雪女は血の入った小瓶を飲み全ての妖力を込めて颯太に再び口付けをして息を吹きかける。
それは雪女として取り込んだ精気を返すのだ。
『雪女としての命を捧げるから!どうか!生き返って!』
雪女は全ての妖力を使って颯太を蘇生させる。
それは雪女として死ぬ事だが八尾比丘尼の血は半分人間の種族として甦る。
力尽きた雪女は颯太の胸に横たわる。
ちょうど心臓の鼓動が聞こえて安堵する。
そして、雪女の頭を颯太は優しく撫でる。
「雪女…無事か?」
「…はい!」
互いに涙して抱きしめ合った。
その様子を見ていた山神はため息を吐き、
《雪女として男の命を奪えないならば雪女失格じゃ。そのまま人として暮らすと良い》
だが言霊の雰囲気は満足げだ。
やはり神なのだからこういう結末の未来を見ていた。
だが宿命ではない。
恋や愛は運命。
まして人とあやかしの恋など実るものではない。
それを見事実らせたのだ。
神と人との間に生まれた雪女ならば成し遂げることもできないこともないが……と山神は自嘲する。
《その分お前たちはともに年を取り黄泉に共にいくのだぞ。
山守として我を祀れ崇めよ。
来年もお前たちを…国の恵みを寿ごう……》
朝日が山の端に差し掛かった。
春分になり冬の山神は満足げに笑いながら大気と共に大気の神の国に帰ると同時に春の山神が降りてきた。
山の御神体を共通するので、事情も何もかも共有される。
山は不動だが季節で雰囲気がわかる大きな依代の恵みの神なのだから……
芽吹の春の山神は華やかなお姿をしていた。
衣は木々の花が美しく彩っている。
《山神の誓約として芽吹の幸御霊をお前たちに約束してやろう…冬の山神の願いなのでな…》
そういうと、まだ冷たかった颯太の体も雪女はの体も温もりをとりもどす。
《雪女…お前に現世に生きる人としての器の呪として、雪菜と名乗るが良い…命を芽吹かす春の神としての御霊を人として繋ぐ祝名じゃ》
「ありがとうございます!」
雪菜は人となったとしても元あやかしとして山神の娘として春の神の姿とお声が理解できた。
「わしとの誓約は雪女を山神の元に連れてくるということだったからの。
一応雪女に一瞬でもなったのだから制裁はなしですぞ」
冬の山神は天へ帰ったので春の山神に念をおす。
《わかっとるわ。さらに、春が司る恋の成就を見せつけてもくれたのでな、さらなる恵みを約束しよう。春に芽吹いた雪菜は私の娘でもあるのだからな》
春の季節の神は景気が良い性格をしている。
「はるか昔も今も娘思いなのは変わらぬ山の神よ……」
わしは思ったことを口にする。
《お前もな……》
春の山神は苦笑した。
「それはどう言うことですか?」
《未来が楽しみだな》
といい、大気に混じって姿を消した。
それは八那果が見る未来を裏付けるものだと思った。
春の恵みは日和国全体に広がった。
低気圧が一気に抜けたのだった。
雪の季節が終わってスキー選手たちは練習が終わって残念だが、颯太と雪菜の祝言を、満開の桜の下で行った。
そこに、わしも流花、三姉妹、鬼女将、八尾比丘尼も加わり寿いだ。
桜の花びらが流花の美しい髪にかかり髪に触れると、こちらを向いて瞳が合う。
流花の美しさに、春の気配のせいか尚更ドキドキしてしまう。
「は、花びらが…きれいじゃのぉー」
「そ、そうでしょうねっ」
互いになぜだかドギマギしてしまう。
少し前までは平静を保てていたのに…
わしと流花の心にも春の風が舞い込んでしまったのだった。
流花の体を借りる山神は満足げに笑う。
その雰囲気は娘との結婚を許そうとしている父親のようなものだと感じる。
《さあ、もう時間がない真の雪女となり来年の雪の季節まで眠ろうではないか…》
「……はい…」
父神の願いは絶対だ。
雪女はその願いを果たせず今まで命を中途半端のまま長らえてきた。
雪女になれば山神の一部になり、冬の精霊となり神に近い存在になる…
望めば人に化けて、男を惑わすあやかしにもなり御霊を食らう。
そういう死を与える存在になる。
最初の贄は颯太を選んだのだ。
八尾比丘尼の血を飲んだとしても生き返るかどうか一か八…
雪女には不安が胸をよぎる。
そんな雪女に颯太は優しく微笑み、
「もうお前と会えなくなるなら、春の暖かさで消えてしまうと言うのならば…俺の精気を吸って生きてほしい。」
颯太は柔らかく笑う。
「颯太…すまぬ…」
二人はしばらく抱き合って、ついに口づけを交わす。
そして、口を離すとそこから御霊を抜くような冷気が雪女の口に吸い流れる。
唇を重ねた瞬間に生気を吸い取るように雪女はなっていた。
颯太の精気を吸い、血肉をも氷に変えてしまったならば、血の効力は効かないかも知れぬ…とわしは険しい顔になる。
雪女の紅花を敷いた目元と口元は青く冷たい化粧になった。
颯太はそのまま凍ったまま息を引き取った。
「……これで誓約は成りましたな?」
わしは山神に確認する。
《ああ、春を約束しよう……》
流花の中に入った山神は頷く。
《誓約は叶った。これで無事季節が動く。》
寒さに凍った大地がざわめく気配が山に訪れる。
土から芽が活発に動き出すようなざわめく振動…冬萌えだ。
山神の雰囲気も変わる……
《冬の山神は眠る…雪女もこい…》
山神は瑠花から体を離れ大気と交わるような大きな御霊の手を雪女に差し出す。
『ごめんなさい…お父様…』
雪女は頭を振り、雪女は血の入った小瓶を飲み全ての妖力を込めて颯太に再び口付けをして息を吹きかける。
それは雪女として取り込んだ精気を返すのだ。
『雪女としての命を捧げるから!どうか!生き返って!』
雪女は全ての妖力を使って颯太を蘇生させる。
それは雪女として死ぬ事だが八尾比丘尼の血は半分人間の種族として甦る。
力尽きた雪女は颯太の胸に横たわる。
ちょうど心臓の鼓動が聞こえて安堵する。
そして、雪女の頭を颯太は優しく撫でる。
「雪女…無事か?」
「…はい!」
互いに涙して抱きしめ合った。
その様子を見ていた山神はため息を吐き、
《雪女として男の命を奪えないならば雪女失格じゃ。そのまま人として暮らすと良い》
だが言霊の雰囲気は満足げだ。
やはり神なのだからこういう結末の未来を見ていた。
だが宿命ではない。
恋や愛は運命。
まして人とあやかしの恋など実るものではない。
それを見事実らせたのだ。
神と人との間に生まれた雪女ならば成し遂げることもできないこともないが……と山神は自嘲する。
《その分お前たちはともに年を取り黄泉に共にいくのだぞ。
山守として我を祀れ崇めよ。
来年もお前たちを…国の恵みを寿ごう……》
朝日が山の端に差し掛かった。
春分になり冬の山神は満足げに笑いながら大気と共に大気の神の国に帰ると同時に春の山神が降りてきた。
山の御神体を共通するので、事情も何もかも共有される。
山は不動だが季節で雰囲気がわかる大きな依代の恵みの神なのだから……
芽吹の春の山神は華やかなお姿をしていた。
衣は木々の花が美しく彩っている。
《山神の誓約として芽吹の幸御霊をお前たちに約束してやろう…冬の山神の願いなのでな…》
そういうと、まだ冷たかった颯太の体も雪女はの体も温もりをとりもどす。
《雪女…お前に現世に生きる人としての器の呪として、雪菜と名乗るが良い…命を芽吹かす春の神としての御霊を人として繋ぐ祝名じゃ》
「ありがとうございます!」
雪菜は人となったとしても元あやかしとして山神の娘として春の神の姿とお声が理解できた。
「わしとの誓約は雪女を山神の元に連れてくるということだったからの。
一応雪女に一瞬でもなったのだから制裁はなしですぞ」
冬の山神は天へ帰ったので春の山神に念をおす。
《わかっとるわ。さらに、春が司る恋の成就を見せつけてもくれたのでな、さらなる恵みを約束しよう。春に芽吹いた雪菜は私の娘でもあるのだからな》
春の季節の神は景気が良い性格をしている。
「はるか昔も今も娘思いなのは変わらぬ山の神よ……」
わしは思ったことを口にする。
《お前もな……》
春の山神は苦笑した。
「それはどう言うことですか?」
《未来が楽しみだな》
といい、大気に混じって姿を消した。
それは八那果が見る未来を裏付けるものだと思った。
春の恵みは日和国全体に広がった。
低気圧が一気に抜けたのだった。
雪の季節が終わってスキー選手たちは練習が終わって残念だが、颯太と雪菜の祝言を、満開の桜の下で行った。
そこに、わしも流花、三姉妹、鬼女将、八尾比丘尼も加わり寿いだ。
桜の花びらが流花の美しい髪にかかり髪に触れると、こちらを向いて瞳が合う。
流花の美しさに、春の気配のせいか尚更ドキドキしてしまう。
「は、花びらが…きれいじゃのぉー」
「そ、そうでしょうねっ」
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