あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

16☆晴綛,雪女に襲われる

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「もう、時間がないのじゃ……」

 わしの横にストンと座ると瞳を潤ませてそう言って腕を掴む。
(色気ないな…八尾比丘尼や流花と違って…)
 と率直に思う。
 大人としての魅力が足りない。
 雪女以前に初い娘だ。
 だからこそ雪として中途半端なのだ……と悟る。
 雪女というあやかしといえど神と人間の間に生まれた中途半端な存在。
 だからこそ、完璧な雪女になるために精気を欲するのだ。

 本格的な雪女になったならばその紅も冷たい青に染まる事だろう…

「私をりっぱな雪女にしてくれ……」
 慣れない品を作る仕草と操を捧げる様なことを言う。
「言う相手が違うだろ……」
 わしは素で冷たく言い放ってしまった。
 つい口に出す時ズバリと相手の痛いところをつく癖がある。
 それはひどく相手を傷つけて泣かせるか怒らせてしまう悪い癖だ。
 その言葉に雪女は顔を真っ赤にさせる。
「うっ……それはそうじゃ!だが、あやつはダメなのじゃ!颯太には死んでほしくないのじゃ!」
「そう言う感情的なところが雪女として中途半端なところだ」
 と分析までしてしまうほどわしは冷静だった。
 さらに少し見下す感じで黙って雪女に圧をかけるが、雪女は怯まなかった。
「あやかしの頭領の阿部野殿の…そなたの精気と魂がいいのっ!黙って私の糧になりゃぁ!」
 雪女は色気で攻める事を諦めて渾身の力でわしを押し倒して馬乗りになる。

「阿倍野殿を喰らい雪女になれば颯太と人並に添い遂げ暮らせるはずなのじゃ!」
 雪女は金縛りをするために真っ赤な妖力の瞳の視線を合わせる。
「お前は上物を狙いすぎじゃ……」
 わしは何も感情もなくため息を吐く。
(金縛りにあったフリでもしておちょくってやるかの)
 あやかしの頭領であり審神者のわしの魂はあやかしには極上のものだ。
 雪女以外のあやかしにも何度狙われた事だろうか……地位を欲するもの…血肉魂をくらい最強になりたいあやかしまで襲ってきた。
 だが覚醒遺伝の九尾の狐とウカノミタマの力を融合した様なわしに叶う存在などこの世には……いないとは言わないが、あやかしの頭領として負ける事はない。
 突然雪女はわしの着物の裾を捲り褌を見る。
「男の精気を吸い取る場所はここらしいの……」
 そう言って褌をも捲り無造作に男の象徴を摘まれた。
 わしは内心戸惑う。
 あやかしとはいえ乙女にまじまじと見られてしまったのだから。
「うわ、気持ち悪い……」
 雪女もそれを穢らわしいものを触ったとおもって手を拭う。
 わしは恥ずかしさと虚しさとなんとも言えない気分になって萎える。
「こんなものを喰らわなければいけないなんて…気持ち悪くて嫌じゃが颯太と添い遂げるためじゃ……」
 雪女は口を開けると氷の鋭いギザギザの歯を作り一気に食いちぎるつもりだ。
 男を知らない子供が考える精を食らうとは物理的に喰らうことだと考えたらしい。
「お、愚か者めが!男の象徴を食らった女と添い遂げたい男などいないわ!」
 わしは流石にゾッとして金縛りされているフリを解こうとした。
「う、動かない…?」
「ここは私の異界というより山神の異界じゃ…父様の力にはさすがの阿倍野殿も適うまい。」
 雪女はニヤリと笑う。
 その後ろに山神が雪女になる様子を見ているか感じているということだ。

 それは、わしの犠牲で流花は雪女にならないし春は巡る……誓約は成立する。
 
「そ、そんなの嫌だあああああああ!」

 わしは流石に焦り青ざめ、涙ぐみ渾身の力で叫んだ。
「あなたたち…ナニしているんですカァぁあ……?」
 キィぃいと厠の扉が開いた。
 その隙間から雪女より青ざめた顔で背後に闇の荒御魂の神気を放ち微笑む流花が様子を伺っていた。
 いや、むしろ雪女というより般若だ。
「厠にも鍵をして異界から閉じ込めておいたのに…!」
 雪女はこんな所を人に見られて焦る。
 誰にも見られてないからこそ、出来る精気を取る儀式なのに……!

 流花は確認の為わしの顔を見ると、乙女の危機の様にエグエグ泣いている。
 わしの顔と褌をめくって痴女の雪女を交互に見て、目に見えない角と般若の様な顔をしてス、ス、スとすり足で素早く近づき雪女をか弱い女の身で引き剥がして襟首を掴み顔を近づけて凄む。

「あやかしとはいえ……日和女子が何やってるんですかァ……?淑女として教育し直してサシアゲマスワ…」
「ひえっ」
 雪女はあやかしに容赦ないルカの神の依代の流花に言葉を察することができなかった。
 

《流花は八尾比丘尼にもそうだが、晴綛が女に言い寄られているのを見ると我慢できない……いつも我慢していることがあまりのことに爆発してしまっているのだよ。私も少しは力を貸しているがね》
 ルカの神は腹を抱えて笑うのを抑えるように晴綛に告げる、それは流花の本心はわしを好いているということが伝わる。
「た、たすかった……」
 わしはあまりの流花の覇気と股間の危機を回避して気が緩み気を失った。

 目が覚めた時には青白い額に赤いタンコブらしきものを生やして正座して雪女は、わしに謝ってきた。
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