あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

15☆警戒心

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「晴綛さん…起きてください!」
「はっ!」
 わしは流花の声でぱちっと意識が戻る。
「近いです…」
「む…わしとしたことが眠っておった…かっ!?」
 流花をだき抱えながら眠りに落ちて起きた時目の前に流花の谷間があった。
 しかもよだれまで垂らして流花の襟元を濡らしていた。
 かなりべちょべちょだ。わしの欠点は異様によだれが多い事だ。
「すまん!」
 そう言って袖で胸元を慌てて拭く。
「!」
 不意に乳房の頂点を触ってしまった。
「すまんっ!わ、ざとじゃないんじゃ!」
 思わず両手を上げて手を振る。
「わかってますから落ち着いて!」
 流花は体勢を崩しそうになり慌て、襟を掴んで体勢をとる。
 互いに心臓を抑えて落ち着く。
「着物乾きました,着替えるので後ろ向いていてくださいね」
 流花はそう言って着替え終わるとまた距離を置く。
 顔が真っ赤になっていて、こちらに向きたくないらしい。
「……クシュん」
 だが、すぐに体を冷やしてしまうためにくしゃみが出る。
「…おいで。」
 わしは腕を広げてまた腕の中に誘う。
 流花はやはり警戒しているが静々と膝の上にのった。
 まるで猫みたいな流花に微笑んでしまう。
 やはり三姉妹と変わらない子供みたいだ……というか、母親なのに乙女で可愛すぎる!ぎゅっと抱きしめたい衝動を抑えるために己の両膝を掴む。
 二人黙って揺れる焚き火を見る。
 ここが異界ということを忘れてしまっていた。
 時が緩やかに感じる。
 互いの鼓動だけを感じるのみ。
 チラチラと上目遣いでこちらを見る流花が可愛く思う。
 汚れない乙女にしか見えない…子供もいる大人の女性なのに……
 穢したくないと思う気持ちは流花の素の姿だからだ。
 罪悪感すら超越して契りを結んだ兄を今更ながら恨めしく思う。
「簡単な仕事だと思えたのだがなかなかに困難が待ち受けているな…」
 沈黙に耐えきれずわしは仕事のことを持ち出してため息を吐く。
 これも遭難も困難試練のうちの一つだと思う。
 誓約というものは困難に耐え抜いた先の約束が果たされることが神にとって誠実なことになる。
 さらに、時間を過ぎたら流花を雪女にする手筈まで整っているとは気持ちが焦ってしまう…

「ごめんなさい…足手纏いになって…」
「いや、ここの山神は女子がいないと話にならぬからの付いてきてもらったのはわしの方だ。流花が気に止むことはない…」
 やはり流花の体は冷たく感じる……
(雪女にさせてたまるか……)
 寒さに震える流花を腕の中にさらに閉じ込めた。
 華奢で柔らかく良い香りもする……
 これが女というものだと思うと、

 下心はないといえば嘘でしかない。
 わしの体は正直すぎて尻尾で誤魔化してその上に座布団のように流花を座らせ寒さ防ぐが、肩を抱きしめた時ふくよかな乳房に触れてしまった。
「す、すまぬ…故意ではないのだ」
 わしは流花の耳元で謝る。
「わ、わかってますから……」
 互いに体温と心臓の速さを感じてしまう。
 流花は顔を真っ赤にして戸惑って涙目になっていた。
 そんな女神に理性を保つことにわしは必死だった。
 流花は太ももをもじもじさせる。
 わしから瞳を逸らして戸惑う表情は艶っぽく感じる。
「晴綛さん……もう、私、限界です……」
 そして困惑した表情でわしを見上げる。
(こ、この感じはまさか……わしの男としての魅力にやられたか⁉︎)

 わしはなぜか期待で胸の高鳴りが止まらない。

 この恋心は一生隠し通すつもりだった……

 流花は兄の明綛の妻。
 二人の子供の三つ子娘たちとの関係を崩さぬ唯一の方法であり自分なりの愛の形だと誓ったのに……


 誓いが揺らいでしまうではないか……

 流花の肩を少し強く力を入れた時、


「あの…あの…お花を摘みに行きたいのです…」

 流花は顔を真っ赤にして告白した。

「お花?雪山の異界に花など咲いてないし詰めないぞ?」
 わしは予想外の不思議なことを言う流花に首を傾げる。
 足をモゾモゾしながら、顔を真っ赤にして、すくっと立ち上がる。
「もう我慢の限界です!お粗相をしてきます!」
 そう言ってわしの腕の中から飛び出して厠に向かった。
 厠は内側からも入れるようになっていた。
「勘違いした……」
 わしは恥ずかしくてため息をついた。
 厠に急いで流花は行ってしまったが、
「ずっと見てたのだろ…雪女…」
 狐火の届かぬ小屋内の影から全身真っ白の着物を着た美しい雪女が現れた。
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