あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

12☆嫉妬

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 流花は晴綛と八尾比丘尼の親密ぶりを見て機嫌が悪かった。
 
(なんなんですの?なんで、私すごくイライラしてるんですの⁉︎)
 心が爆発するほどの怒りに流花は戸惑う。
 自分の心が抑えきれなくて誰かに当たってしまいそうなのを察して、玄関前の廊下まで来てしまった。
 また、客たちは食事をしているのだから玄関は誰もいない。
(晴綛に嫉妬する理由もないし、本当に好き合っているなら歓迎するべきなのに……)
 そう思うと涙が勝手に出てきた。
 流花は涙をゴシゴシ拭う。
 まるで子供みたいだと思いながら…
「面白くないですわ……」
 それは単なる怒りでは無くて嫉妬……自分にはできないことをやってのけている八尾比丘尼への嫉妬だ…
 義弟である晴綛がどんな女と付き合おうとも文句は言えないのだ。
(いえ、多少は文句や小言は言ってもいいと思うけれど…)
 流花は悶々として玄関廊下をウロウロしていた。
 子供達にも誰にも会いたくないどうしょうもない気分だからだ。
 子供達に最悪当たってしまう。
「流花さま」
 鬼女将がにやにやして流花の肩を叩く。
 気配なく背を叩かれて流花はびっくりする。
「何やら複雑なお心をお持ちですわね…」
 誰にも知られたくない心のうちを女将は見抜いていると流花は感じる。
さらに、にやにやしながら口元を押さえて
「この宿は私のは異界の中…恋愛模様を見るのが好きでして、素直な心ならば尚更燃え上がり、捻くれた心ならば嫉妬と複雑な心が吹き上がるように細工してありますのよ。さらに複雑な気持ちは私の脳の中に入ってきますの。滅多にない物語が繰り広げられるのは楽しいものですもの!」
 鬼女将は興奮して瞳は爛々に輝き、頬は紅潮していた。

「なんと厄介な……」
 いつもは心をひた隠しにできていたのに、抑えが効かない理由がわかって青ざめる。
(このまま中にいたら変なことを口走りそう…)
 今のままの関係を崩したくないと思った流花は、
「外で頭冷やしてきます!」
「冷えたら温泉をまたご使用くださいな」
 女将もそう快く見送ってくれた。
 無理強いに恋愛を勧めようとはしない女将の心意気でもあった。
 あくまで自然体で恋に落ちていくのを見るのを楽しみにしているようだ。
 流花は外に出て頭を冷やし心を落ち着かせよう、雪が溶けかけている庭を散歩してみる。太陽も上り雪が溶け始めている。季節は変わろうとしている。
放っておいても春は来ることは宿命だ。
 誓約などしなくても春は巡るのに……
 温泉の裏庭の寒い中でも太陽の暖かさに桜の花を咲かせた一輪を見てみようと裏手にまわった。
「きゃああああああ!」
 鬼の女将の宿は山の崖近くにあること雪が積もりすぎて平にみえてしまったために滑落していった。
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