あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

10☆乱入

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「あらっ!」
 鬼女将と流花は目を見開いて驚き顔を赤らめる。
 とても男として色気を放つ美丈夫な顔をしていた。
 色白で線が細く艶のある美しい男だった。
 むしろ雪女の子孫の方が納得がいく。
 女将もナマハゲには目が合わないよう逸らしていたので初めてまじまじと見つめて息を呑む。
「恥ずかしいから仮面を返してくれる?」
「うん…ごめんなさい…」
 仮面はいつのまにか小さくなっていて盾のような大きさではなく顔を覆うくらいの大きさになっていた。
 ナマハゲ男はミキからお面を返してもらい顔を覆うのではなく額の方にずらして紐で縛る。
 それも影がある色気を漂わせている。
 そんなナタハゲの化身をみて、わしは好敵手に思い、
「まぁ、わしには負けるがな。」
 前髪を掻き上げて格好をつけてみたが、女たちはわしを無視しナマハゲに釘付けだった。
「おじさんは繊細さ無い」
 アキは率直に
「でも、狐と鬼の違い。甲乙つけ難し」
 サキは慰めているつもりだがズレている。
「私は狐の方が好きだよ」
 ミキはそう言ってくれたので頭を撫でてやった。
「わたくしも…晴綛様の方が好みですわ…」
「ひぇっ!」
 わしは突然のことに情けない声をあげる。
 後ろから柔らかい感覚と椿の匂いに細くか細い白い腕がわしに絡みつく。
「まぁ、突然のご訪問は今日はダメだと言っていましたでしょ!八尾比丘尼さん」
 わしの背後を取って体を密着してくる尼僧と鬼女将は知り合いらしい。
 ただでさえ大人数で騒がしいく、ナマハゲが子供に襲われられ、さらにはその家族の長たる男が色気漂う尼僧に抱きつかれている光景は混沌としていて、スキー選手達は朝食どころではなくら唖然としてしまいせっかくの善が冷めてしまうことを察した鬼女将は三姉妹とスキー選手を隣の部屋に誘導して「おとなしくわたくし特製の御膳を召し上がれ…お嬢様もナマハゲさんもね」
 鬼の角は見えないが鬼の圧に怯んで皆大人しく朝食を取ることになった。
 そして、襖を閉ざしてこちら側の声が聞こえないように術を施した。
「あの…失礼ですけど…どなたですか…?」
 流花は不審な目をしてわしを抱きしめている八尾比丘尼を見る。
(尼のくせに男に媚びるなんて……)
 と声に発しなくてもそう言う顔をしている。
 八尾比丘尼はわしから離れると、流花の姿をじっと観察してふっと微笑し口元を抑える。
「わたくし、八尾比丘尼と申します」
「八尾比丘尼…まさか人魚の肉を食べて永遠の命をいただく……?」
 流花は伝説は知っていた。
「本当に存在していたとは……」
 しかも、超絶妖艶美女である。
 流花も女神なだけあって美しいが美しさの質が違う。
 牡丹と百合のような違いだ。
 いや椿と百合というべきか…
「あなたがという……義姉さまですわね…?」
 その言葉は優しいが、見下している。
 流花自身も八尾比丘尼に対して同じようなことを思っていたのでお互い様だが……
 宣戦布告と受け取った流花の瞳に殺意が宿る。

(女の自尊心の戦いは…恐ろしいのだ…!)

「義姉…とは?どういうことですの?私には義妹など一生出来る予定などありませんが?」

「今日は限定のお客様ばかりなので来店はご遠慮してくださいと申していたはずですよ?突然前触れもなく異界を通ってきて何か急用でもありましたか?」
 鬼女将も八尾比丘尼の突然の来客に憤りを覚えている。
「それは、大変申し訳ありません、わたくし晴綛様のお手伝いをしたかったのです。」
「お手伝い?」
 三人とも首を傾げる。
「義姉様が晴綛様の手伝いをできないということがあったら一大事、わたくしが代わりに手伝いに…と思って失礼かと思いましたが来てしまいました…」
「もしかして、晴綛ににされてた方ですか?」
 流花はわしの言葉を覚えていたらしい……
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