あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

9☆ナマハゲ

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 十分温泉で体を温めたあと、わしと流花と起きて来た子供達とスキー選手たちと一緒に朝食の膳を囲むことになった。
 それは女将の手間を省かせることと、雪女について話を聞きたかったからだ。
 スキー選手たちは自分たち以外に客がいることにホッとする。
 昨夜、温泉で選手たちは、わしにはあったが、流花の浴衣姿を見せたくなかったので術を使って声だけしか聞こえて見えないようにした。
 そのため幽霊宿かと思い込んだらしい。
 実際は幽霊より怖い地獄の鬼女将の宿なのだが。

「夜中、おじさんと母さま、どこいってたの?」
「かわやさがしてもいなかった…」
「男女二人っきりだと子供できちゃうんでしょ?」
 食事中にそんな事を言うものだからスキー選手たちは妄想してニヤニヤしてしまう。
 その雰囲気に耐えられない流花は顔を真っ赤にして、
「いい加減変なことを言うのは、やめなさい!」
 スキー選手も慄くほどの甲高い怒鳴り声を上げる。

 だが、三人娘は、なぜだか怯まず喚いた。
「だって、妹が欲しいいんだもん!絶対にできるんだもん!」
「夢で何回も妹が生まれる夢見るんだもん!」
「カラスのおじさんが、妹できるって言ったもん!」
 幼いながら母親に毅然と楯突く意味がわかった。
「ああ…」
 わしは納得してため息をついてしまう。
 八那果の差し金か……と。
 あやつはわしにそうは予言していたが、三姉妹の前にも現れてそんな事を言ったのかと納得。
「あのカラスめ…娘達に余計な事を…」
 流花は八那果をよく思ってなく尚更その思いが募る。

「そういえば一人、足りないですわね?」
 女将はスキー選手が一人足りないことに気づく。
 御膳を数え間違えたかとは思う。
「あいつ途中で山道で落とした面を撮りに行ったようですよ。」
「面?」
「代々受け継ぐナマハゲの面らしいです。」
「あんな大きな面を持って歩くのですか?」
 雪国に温泉宿を営む鬼女将は地元の村の祭りにも参加している。
 東北には鬼に関する祭りがあるので人間達が鬼を神として崇め敬う姿が好きだった。
 その事を書物に記録するのも香茂家の鬼としての役目だった。
「想像するほど大きくないんですけどね、手品で仮面がでかくなるんですよ」
「手品…か」
《特殊な血筋の能力だよ。阿部野家と同じだよ》
 ルカの神がそう教えてくれた。
「ナマハゲの子孫と言ってたな」
「時たまその面をわざと被って人脅すタチの悪いこともしていてね」
「なまはげってなに?」
 娘達と流花は首を傾げる。
「鬼の妖怪かの?」
 わしも詳しくは知らなかったので興味が湧く。
 妖の頭領としてどんな妖なのか妖辞典に詳しく鬼女将のように記しておく義務もあるからだ。
「オラの噂かぁぁぁ?」
 すっと襖が開けられる。
 そしてその手には包丁が握られ顔は大きな鬼の怖いお面が現れた。
 外から来たせいか蓑に雪が積もっていた。
「ぎゃあああああーーーー!」
 ナマハゲを見た瞬間娘達は青ざめ絶叫した。
「親を困らせるわるいこわいいねぇか!お前達かーーー!」
 心当たりありすぎる三姉妹は
「ぎゃーーー!」
三姉妹は泣き叫びながら男に襲いかかった。
 それは予想外すぎてナマハゲは怯む。
「私たち悪い子じゃないんもん!」
「悪いのは人脅す妖怪だもん!」
「脅したら百倍返しなんだからねっ!」
 ナマハゲの動きを抑えるべく大の大人の体に同時に張り付いて、ミキは肩の方まで這い上りお面を引っ剥がした。
「お前たち食事中でもあるのだから落ち着きなさい!」
 流花は娘達の予想外の行動を叱りつける。
 叱られると言う事は悪いことをしているのだと、理解し三人はナマハゲの前に並んで頭をごめんなさいをする。
 だがミキはお面を手に取ったままだった。
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