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雪女とナマハゲ
7☆口実
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部屋に案内されて一息をつく。
部屋の中は鬼火が四方に灯してあり温かい。
女将曰く、地獄の業火の火力のかなり弱い火を使っているという。
「生きながら地獄の苦しみを少し味わう乙な経験も我が宿の特徴ですわ」
暖かく過ごしやすいが地獄の業火の温かさは居心地が微妙になる。
温泉も雪露天風呂で子供達も大興奮ではしゃいでいるのを岩で区切られた男湯で聞いて連れてきてよかったとは思うが、流花を連れ出す口実だったことを言えなかった……
そんなことを悩んでいたら、例のスキー選手たちも入ってきて、婦女子の声が気になるのは男のさがだが…
「お主ら、覗き見したら、命がないと思え?」
わしは一糸纏わぬ長身で筋肉隆々の体を見せつけ注意したら、おとなしく湯船に入った。
狐耳と尻尾は見えないようにしたが、一人だけわしの姿をみて、
「狐のあやかし……」と狐耳以外には聞こえない様にボソリと呟いた。
鬼女将が警戒していた男だと確信する。
わしよりは劣るが美丈夫だと思うし、何より背後にナマハゲの神が宿っていた。
審神者のわしには神の姿が見える。
特殊な人間はどこにでもいる。
女将の姿を察したのは同族の鬼のせいだと察する。
わしの姿をみてもみんなに言いふらさない思慮深い性格だと思い、とりあえず温泉を楽しんだ。
鬼女将の美味しい料理も振る舞ってもらい、旅行に満足し、ゆったりとした時間をすごしたが、覚悟を告げようとする事にわしはそわそわしていた。
狐耳を下げ尻尾が不安げに揺れていることを流花は見抜いた。
「何を隠しているんですか?何か言いたいことがあるんですか?何か後ろ暗いことがあるんですか?」
流花は笑顔で凄んできた。
はっきり言って怖い。
ルカの神の依代のためか、半妖のわしは正直に言いづらいことを告げることにした。
「実は…山神に頼むために力を貸してほしいのだ…旅行と言ったのは本心だが、男神の山はわしの言葉が聞こえるか不安での…女神でルカの神の加護のあるお前たちがいる方が神が答えてくれると思うのだ…」
「そうことは旅行前に言ってくださればいいのに…」
流花はため息を吐く。
「楽しみな旅行に仕事を口に出すことが出来なくてな…すまぬ…仕事を手伝うことが疲れるのならば、代わりになるあてはあるのじゃが……」
むしろ立候補をしてくれたが気が引けてそのあてをあてにしたくないというのが正直なところなのだ。
「そんな…わざわざ人様をあてにしなくてよろしいのよ?」
流花は優しい。
「阿部野に嫁ぐということは鬼門を守るということでルカの神の役目でもあります。さらに、神への陛下の勅使ならば元巫女といえど神の依代の私の出番でしょ?ぜひ手伝わせてくださいませ」
「ありがとう…ほんとすまぬ。今度は仕事以外でみんなで遊びに……」
「いえ、仕事が優先です。」
キリっと仕事人になり流花は大変真面目だった。
改めてそんな巫女を兄は無理やり嫁にしたと思うと兄の推しの強さは双子とはいえ違うと思った。
部屋の中は鬼火が四方に灯してあり温かい。
女将曰く、地獄の業火の火力のかなり弱い火を使っているという。
「生きながら地獄の苦しみを少し味わう乙な経験も我が宿の特徴ですわ」
暖かく過ごしやすいが地獄の業火の温かさは居心地が微妙になる。
温泉も雪露天風呂で子供達も大興奮ではしゃいでいるのを岩で区切られた男湯で聞いて連れてきてよかったとは思うが、流花を連れ出す口実だったことを言えなかった……
そんなことを悩んでいたら、例のスキー選手たちも入ってきて、婦女子の声が気になるのは男のさがだが…
「お主ら、覗き見したら、命がないと思え?」
わしは一糸纏わぬ長身で筋肉隆々の体を見せつけ注意したら、おとなしく湯船に入った。
狐耳と尻尾は見えないようにしたが、一人だけわしの姿をみて、
「狐のあやかし……」と狐耳以外には聞こえない様にボソリと呟いた。
鬼女将が警戒していた男だと確信する。
わしよりは劣るが美丈夫だと思うし、何より背後にナマハゲの神が宿っていた。
審神者のわしには神の姿が見える。
特殊な人間はどこにでもいる。
女将の姿を察したのは同族の鬼のせいだと察する。
わしの姿をみてもみんなに言いふらさない思慮深い性格だと思い、とりあえず温泉を楽しんだ。
鬼女将の美味しい料理も振る舞ってもらい、旅行に満足し、ゆったりとした時間をすごしたが、覚悟を告げようとする事にわしはそわそわしていた。
狐耳を下げ尻尾が不安げに揺れていることを流花は見抜いた。
「何を隠しているんですか?何か言いたいことがあるんですか?何か後ろ暗いことがあるんですか?」
流花は笑顔で凄んできた。
はっきり言って怖い。
ルカの神の依代のためか、半妖のわしは正直に言いづらいことを告げることにした。
「実は…山神に頼むために力を貸してほしいのだ…旅行と言ったのは本心だが、男神の山はわしの言葉が聞こえるか不安での…女神でルカの神の加護のあるお前たちがいる方が神が答えてくれると思うのだ…」
「そうことは旅行前に言ってくださればいいのに…」
流花はため息を吐く。
「楽しみな旅行に仕事を口に出すことが出来なくてな…すまぬ…仕事を手伝うことが疲れるのならば、代わりになるあてはあるのじゃが……」
むしろ立候補をしてくれたが気が引けてそのあてをあてにしたくないというのが正直なところなのだ。
「そんな…わざわざ人様をあてにしなくてよろしいのよ?」
流花は優しい。
「阿部野に嫁ぐということは鬼門を守るということでルカの神の役目でもあります。さらに、神への陛下の勅使ならば元巫女といえど神の依代の私の出番でしょ?ぜひ手伝わせてくださいませ」
「ありがとう…ほんとすまぬ。今度は仕事以外でみんなで遊びに……」
「いえ、仕事が優先です。」
キリっと仕事人になり流花は大変真面目だった。
改めてそんな巫女を兄は無理やり嫁にしたと思うと兄の推しの強さは双子とはいえ違うと思った。
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