あやかしと神様のジジ様の物語

花咲蝶ちょ

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雪女とナマハゲ

3☆家族温泉旅行

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 久々に宮中へ出仕し、宿直を言い渡されて翌日の昼に自宅に帰って来れた。
 いつもならば春の宮中行事に忙しいのだがわしにしかできぬ任務を言い渡されての帰宅だ。

「お勤めお疲れ様です。昼食ご用意してありますよ。みんなでいただきましょう」
 よくできた兄嫁で仕事をして帰ってくることが幸せに思えてくる。
 本物の夫婦だったなら尚更幸せだっただろう……
 幸せと同時に複雑な気持ちを抱くことも罪悪感を抱くこともないのに……

 五人で洋館には似合わないちゃぶ台を暖炉の近くに置き、楽しくご飯をいただくのも好きだ。

 外観はかなり豪華な屋敷だが、庶民の心を忘れずに…というよりか給料が低い。
 食べられないわけではないが、代々陰陽寮長になる一族であるがまだ役職についていない職員なのだ。
 円形のちゃぶ台で流花の作る美味しいおかずと白米と味噌汁をいただく。
 流花の作るものは何でも美味しい。
 ほぼ屋敷にいながら裏庭に畑をつくり三姉妹と遊びに来たあやかしたちに手伝ってもらって畑仕事もこなしている。
 宮中の神を下ろした巫女にそんな仕事を任せてしまうのも申し訳ないとも思うが、流花自身とても楽しんでいることにホッとする。
 そんな家族欄団のなか、「ご馳走様でした」の後、わしは居住まいを正す。
 するとその様子を察した流花と娘達も居住まいを正す。

「お前たち、わしと一緒に雪山温泉旅行について来てくれないだろうか?」
 流花と三姉妹はきょとんとして、
「え、なんで?」
「山ってさらに寒くない?」
「死ねと?」
 寒さで暖炉で暖をとる幼い娘たちはあからさまに嫌がる。
 子供らしからぬが正論だ。
だが、
「まぁ、この寒さを納めるために陰陽寮の仕事でもあるのだ……」
 本来なら自分一人で任務を遂行するものなのだが、
「無理にとは言わぬがの、雪降る中温泉は乙なものとは聞いていたのでお前たちには温泉で楽しんでもらいたかったのだ」
 女というものは厳しい現実的な意見を幼い頃から身に付けてるなと思いつつ、三姉妹は瞳を輝かせる。
「そういうことなら早く言ってよね!」
「ぐうたらなおじさんの仕事っぷりも見てみたい!」
「監視してないと昼寝して仕事してなさそうだしね!」
 娘たちはわしのことをプー太郎だと認識してしまったようだ。
 いや、流花の口癖を真似したのかもしれない。
 昼間寝てばっかだとそう思われても仕方がない。
 我ながら情けなくて反省しよう。
「流花は如何か?」
 姪っ子たちは賛成のようだが、彼女の方を見ると瞳をキラキラさせて頬を好調させた。
「この寒い中温泉に入れるのはたのしみですわね!旅館とか予約は取れているのですか?」
 眩しおほどの嬉しい顔をされるとホッとするし嬉しくなる。
「陰陽寮…というより、陛下からの直々のご命令でな、このままでは桜が咲くのが遅れて田畑の実りもままならぬと占いで出てな…原因救命せよとの仰せでな。」
「確かに寒さが治まりませんものね……」
 阿部野屋敷はわしの妖力と式神の妖怪が手伝って春のように暖かい屋敷だが、外に出れば真冬そのものだ。
「緊急で旅館は取るのが難しいので鬼女将の旅館を借りることになるのだがの。」
「まぁまぁ!またあの女将さんに会えるのですね」
 鬼女将と流花は仲良い。
 三年前、流花を労うために、香茂の家の式神になった鬼女が温泉作りにハマって旅館を経営をしているのだ。
 それは、人間も妖も神ですら喜ぶ異界とも繋ぐ気運の良い場所でもある。
「ここのあやかしの鎮護は異界から鬼女の宿と繋げてわしの気をとおす。さらに、あやかしの四神に護らせるから流花も心置きなく旅行にいけるぞ。」
「あらあらまぁっ!お気遣いありがとうございます!」
 流花は三つ指ついて頭を下げてお礼を言う。
「久々にお外出られてよかったね!母様」
「余計なこと言わないの。このお屋敷にいることも幸せなんだから」
 アキの余計な一言に苦言する。
「わーい!りょこうりょこう!」
「おんせんおんせん!」
「おにごっこしてもらうー!」
 三姉妹は純粋に、大はしゃぎで、その様子をわしは微笑ましく笑い、流花も笑って瞳を合わせるとふふっと二人同時に笑いさらに幸せになった。

 そのわしらの微笑みを三姉妹たちは内心ニヤニヤしながら見ていたと言う。
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