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15☆希代の祈り姫
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半世紀以上も昔。
今の法子より少し年が上の頃宮を抜け出す通路を通り外に出ようとした。
どうしても今日会わねば、二度と会えない気がして、 彼女に会えない後悔の方が怖くて、 自ら宮の外に一人で出たことのない私は勇気を振り絞って、満月のみが照らす通路を必死に通り抜けようとしていた。
その途中、祈りの宮の塀を通る時、月の女神のような神秘的な雰囲気を醸し出す美しい人にあった。
各国が集う晩餐会で会ったことがある李国に嫁いだ宮姫様だった。
日和国がコメリカの占領下に置かれて、日和国の統治下だった李国は戦争になった。
李国の国王、貴族は半島に出来た新政府によって帰国は許されず李国王、その血族は日和の保護を受けることになった。
李国の妃である宝子(ほうこ)は待っていたかのように微笑んで、私に話しかけられた。
「……あなたも宮から外へ出るためにこの通路を通るの?」
見破られてドキリとする。
「しかも、好きな女の子がいるのね…」
それも見破られた。
終戦から数年たっていてもお付のものをつけなければ 皇子と言えど命を狙われる。
乱れた世なのだ。
けれど、宮仕えで親しくしていた、あの娘は待っていてくれると信じてるからお忍びで会いに行く決意をした。
彼女は家の事情で宮仕えを辞した。
いや、傍目から皇太子である自分と恋仲になられるのは困る者からのさしがねだった。
皇族の血は特別。
皇族は皇族と結婚し血を残す風習がある。
コメリカの支配下以前なら側室になら許されたかもしれないけど今の世では許されない。
自分も彼女を差し置いて后を頂くことも考えたくなかった。
何もかも見破る宝子に驚きの目で見るのとともに、さすがは希代の祈り姫と言われた方だと感心した。
見破られたからと言って引き返す臆病者じゃないと思われたあの方は、
懐かしそうに微笑まられて、
「あなたの願いは叶うわ……私が叶わなかった、叶えなかったことを叶えて」
その言葉の意味はあとでわかる事だが・・・
励まされてる、勇気をもらったのだ。
こくりと何も言わずに私は頷いた。
その瞳は希望に月の光星の光のように輝いて見えたことだろう。
「遠い未来にあなたがこの国の帝になられた後に私の子孫があなたと同じにこの宮を目指すわ。
その時は許してあげてね。」
と美しく微笑み、見送ってくれた。
そんな彼女は今思えば誰かを待っているようだった・・・
その誰かに会えたのか、今となってはわからない。
私があの月夜に愛を告げた娘は皇后になった。
法子の祖母だ。
あの時の出会いがなければ、今の私もなく、法子もこの世にいなかっただろう。
その思いをずっと感謝していてあの夜の事が忘れられなくてね。
「それが、李流くん、君に会えるのを楽しみにしていたのだよ」
太陽が薄雲に隠れて、憧れの陛下のお顔がとても嬉しそうに微笑んでいた。
自分が存在することが予言されていた事と陛下のお優しい微笑みとなんとも言えない不思議感が心を締め付けて、涙が止まらなかった。
運命って本当にあるのだと思った。
ぎゅっとペンダントを握る。
それは運命を確実に見抜いていた曾祖母への感謝と運命という見えない縁をつかむように……
「李流!お祖父様!」
法子が必死の形相で李流と陛下の間に割って入るように走ってきて李流の前に大きくてを広げて守るように立ちはだかる。
「李流は悪くないの!悪いのは私なの!だから李流を怒らないで!」
今の法子より少し年が上の頃宮を抜け出す通路を通り外に出ようとした。
どうしても今日会わねば、二度と会えない気がして、 彼女に会えない後悔の方が怖くて、 自ら宮の外に一人で出たことのない私は勇気を振り絞って、満月のみが照らす通路を必死に通り抜けようとしていた。
その途中、祈りの宮の塀を通る時、月の女神のような神秘的な雰囲気を醸し出す美しい人にあった。
各国が集う晩餐会で会ったことがある李国に嫁いだ宮姫様だった。
日和国がコメリカの占領下に置かれて、日和国の統治下だった李国は戦争になった。
李国の国王、貴族は半島に出来た新政府によって帰国は許されず李国王、その血族は日和の保護を受けることになった。
李国の妃である宝子(ほうこ)は待っていたかのように微笑んで、私に話しかけられた。
「……あなたも宮から外へ出るためにこの通路を通るの?」
見破られてドキリとする。
「しかも、好きな女の子がいるのね…」
それも見破られた。
終戦から数年たっていてもお付のものをつけなければ 皇子と言えど命を狙われる。
乱れた世なのだ。
けれど、宮仕えで親しくしていた、あの娘は待っていてくれると信じてるからお忍びで会いに行く決意をした。
彼女は家の事情で宮仕えを辞した。
いや、傍目から皇太子である自分と恋仲になられるのは困る者からのさしがねだった。
皇族の血は特別。
皇族は皇族と結婚し血を残す風習がある。
コメリカの支配下以前なら側室になら許されたかもしれないけど今の世では許されない。
自分も彼女を差し置いて后を頂くことも考えたくなかった。
何もかも見破る宝子に驚きの目で見るのとともに、さすがは希代の祈り姫と言われた方だと感心した。
見破られたからと言って引き返す臆病者じゃないと思われたあの方は、
懐かしそうに微笑まられて、
「あなたの願いは叶うわ……私が叶わなかった、叶えなかったことを叶えて」
その言葉の意味はあとでわかる事だが・・・
励まされてる、勇気をもらったのだ。
こくりと何も言わずに私は頷いた。
その瞳は希望に月の光星の光のように輝いて見えたことだろう。
「遠い未来にあなたがこの国の帝になられた後に私の子孫があなたと同じにこの宮を目指すわ。
その時は許してあげてね。」
と美しく微笑み、見送ってくれた。
そんな彼女は今思えば誰かを待っているようだった・・・
その誰かに会えたのか、今となってはわからない。
私があの月夜に愛を告げた娘は皇后になった。
法子の祖母だ。
あの時の出会いがなければ、今の私もなく、法子もこの世にいなかっただろう。
その思いをずっと感謝していてあの夜の事が忘れられなくてね。
「それが、李流くん、君に会えるのを楽しみにしていたのだよ」
太陽が薄雲に隠れて、憧れの陛下のお顔がとても嬉しそうに微笑んでいた。
自分が存在することが予言されていた事と陛下のお優しい微笑みとなんとも言えない不思議感が心を締め付けて、涙が止まらなかった。
運命って本当にあるのだと思った。
ぎゅっとペンダントを握る。
それは運命を確実に見抜いていた曾祖母への感謝と運命という見えない縁をつかむように……
「李流!お祖父様!」
法子が必死の形相で李流と陛下の間に割って入るように走ってきて李流の前に大きくてを広げて守るように立ちはだかる。
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