祈り姫

花咲蝶ちょ

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伝統の縁(でんとうのえにし)

6☆親友宣言

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「オレがあやかしだって学校で言うなよ!」
 李流は登校そうそう薫に体育館裏に連れて行かれて壁に拳をドンっ!と置いて逃げられないようにされた。
 脅しのつもりだろうけど、李流は全く怖くない。
 ただ少し突然だったから戸惑っているだけだ。
 香茂薫は学校では不良ではないが、一匹狼のようなところがある。
 昨日のような机を破壊することが時たまあるので指導される事があるらしく、さらに恫喝してきた不良をこの体育館裏のようなところでボコボコにした噂もある……

 もし、言おうものならボコボコにして言わさせないつもりなのかもしれないが…
 李流はひとつ大きくため息をはくと、改めて薫と瞳を真っ直ぐ合わせると、薫のほうが戸惑った。

「いわないよ。信じないだろ?普通。あやかしなんて……」
 その言葉に薫はムッとする。

「お前は?俺のこと信じてないのか……?」
 薫は悲しい顔をした。
 瑠香に似たキリリとした眉が下がる。

「あやかしだとバレるのも嫌だけど信じられないのも不服だ!」
 それは自分を信用されてないように感じる…自分の存在も否定されているようなもどかしい気持ちを抱いてしまうようだ。
 だけど李流は真面目に、真摯な瞳ではっきり告げる。

「この目で見たから信じるよ」
 最初は、信じられなかったけれどハル様や陰陽寮にいるものや家庭の事情は人それぞれその中の一つだと思うことにした。
 不思議なことは法子様と夢の中で神門の前でキスした事は忘れたくない不思議体験だ。
 そう思うと、あやかしである薫の存在をすんなり認めてしまう…

 薫はわざと殺伐とした雰囲気を醸し出していたが、ぱあぁあ!と花が咲いたように雰囲気が明るくなり頬を染めて李流を見つめて、

「そうか…そうかっ!じゃ!今日から俺達親友なっ!」
「は?」
 突然ニッカっと笑って背を叩かれた。
 李流は今度は本気で戸惑う…

「なんで、突然そうなるんだ?」
「お前親友いないだろ?」
 親友というものは宣言してなるものとは違うと思うけれど、そう言われたのは初めてだから正直分からないけれど、

「陛下を馬鹿にする奴らと言い争いしたくないから深く付き合わないだけだ…」
 陛下の話や国の憂いの話を正直、同い年と話してみたかったが、みんな興味がないみたいで、話してはいけない雰囲気に李流は飲み込まれていた…
 けれど、はっきり陛下を侮辱する者たちを正論で黙らせる薫に興味を持っていた…

 話せるやつかもしれない…
 語り合いたい…と思っていた…

 その思いをテレパシーで覗いた薫は頬をさらに赤くして、
 
「じゃ、やっぱり俺達親友な!陛下のお導きだな!」
「って、なんで陛下が出てくるんだ?」
「あ、俺、テレパシー使えて思いが流れてくるんだ。」
「あやかしだからか?」
「……香茂の家系の力だよ。親父も持ってんの知ってんだろ?」
 父親の話をするとき顔を少し引きつらせる。
 それほど瑠香様に会いたくないのか…と思う。
 まあ、自分も変わらないけど…

「桜庭も自分の親父嫌いだったのか!今度聞かせてくれ!」
「香茂も聞かせてくれたらな…」
「わかった、親友だから話してやるよ!」
 もう親友気分で突然、懐っこくする薫に戸惑う…

「兄さん以外で、陛下を愛するやつは李流が初めてだ!」
 遠慮無く、裏表なく、そう言われて照れる。
「そ、そんなふうに言うのは香茂しかいないよ。」
 李流は顔を赤らめて目をそらして、そう言った。

「李流はかっわいーな女だったらマジで惚れてた!」
「オレはゴメンだよ。親友ならいいけど…」
李流は裏表なく正直だと思うと薫は嬉しくなる。
「ぷはッ!マジで可愛いな!」
「かわいいとか言うな」
べしりと冗談で頭にチョップをされてさらに薫は喜んだ。

 優等生の李流が不良の薫に体育館裏に呼び出されたとクラス中で噂になっていたが、べったべた李流にまとわりつく子犬の様な薫を見たクラスメイトは桜庭が一番最強…裏を取り仕切る番長かもしれない…と更に近づき難くなったことは言うまでもない。


 昼休みに互いの父親のことを話して、一気に親近感がわく。

 正直…李流の父親のほうが酷かった。
 李流は、
「瑠香様は奥さんの事をとても愛してたんだから仕方ないじゃないかな?」
 と説得された…あの時は幼かったから父の気持ちを理解しなかった。
 兄である桂は許しているようだが父から謝らなくては会う気はないらしい。
 薫は同じ捨てられた身としても李流の話を聞くと父親を許せる気になっていた。

「仲良くなってよかったなっ!薫!この縁を大切にしてね…」
 この声は人には聞こえない。
 空に透けている薫の母であり縁結びの神をしている葛葉子は二人のようすを見て、

「うふふふっ」
 と、嬉しそうに笑った。
 お互い友達をいない、いらないと思っているフシがあることを心配していた。
 友達という縁を繋ごうと思ったが自然に繋がった事に満足だった。
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