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運命と宿命の縁
7★罪
しおりを挟む「というわけで、母は変わらず、桜庭家に骨を埋めるつもりので、師匠と共に暮らせません。」
翌日、李流は陰陽寮に戻るとハッキリと晴房に宣言する。
「それは、私はフラレたという事なのか?」
晴房は宣言されて、固まった笑顔だけど、瞳が潤んでいる。
「そうじゃなくて、師匠は責任とって母にプロポーズをしてください。」
李流は正座をし姿勢を正し、畳に手を付いて願う。
晴房は檜扇に顎を当てると首を傾げて
「プロポーズは最初にしたし、子どもできたら結婚決定ではないのか?」
「どこの時代の話ですかッ!」
晴房の狩衣の襟元をつかんで、李流は詰め寄った。
ほんとに、色んな意味で心配になってきた……
世間知らず過ぎるし時代錯誤すぎるし、こんな人を選ぶなんて……だが……
ふと、自分の最低な父を思い出し、だいぶマシだと思い直して、晴房を説得する。
「とにかく最高なロマンチックの告白の仕方してください!」
クリスマスの日に雪にプロポーズをすることになった。
宮中では祭事準備が忙しい中、時間を取って李流に言われたとおりする。
李流に事前に見繕われた現代の服を着せられた。
茶色の長いコートに、中はシャツと白ラインが細かく入ったグレーのベストにスラックス、首にまくマフラーはアクセントに、クリスマスカラーだ。
手には白いバラに柊とクリスマスローズのフラワーアレンジ。
そして、婚約指輪をポケットに忍ばせて、待ち合わせ場所でまつ。
皇居近くの公園前。
目の前には皇居と公園を分けるように車が通る道。
まるで現し世との天界の堺みたいだ。
皇居の外からてることも無いと思っていたのに……
こんなに己が変わるなんて……
晴房は尊き祝皇を守る神と宮中の巫女だった晴房の母は交わり生まれた存在……という事になっている。
実際には普通の人間の男だったのかも知れない。
神聖な神殿で自分は神とつながるよりしろの役目を持って生まれた。
巫女だった母はレッドスパイに洗脳されて、神聖な宮殿を穢すためにわざとやらかした可能性もあった。
我が国は神代から続く祝皇の国。
尊き我が国を国体自体を壊そうとする海外勢力が水面下で悪霊の如きに跋扈しているのだから、陛下側まで近づくレッドスパイや敵にはこの世から消えてもらった。
何事も冷徹に判断を下してきた。
最近では李流と法子様の恋に遊び程度に手助けしてスパイを処罰した。
この世にいたことすら無かったことにしてしまった。
それが自分の役割であり、そのための力を持った晴房の運命。
いや、それが皇を守る神と契約した宿命だ。
それなのに、雪と共にいたいと思ってしまう。
離れているだけで苦しい。
逢いたい……
祝皇陛下以外の人を本気で愛することなど無かった。
『敬愛と恋愛は違う』
確かにそうだ。
今はどちらに対しても命をかけて守りたいと思う……
しかも異国の神の誕生日に愛の告白とは皮肉な感じだ。
さらに自分と同じだ境遇の神。
異国の神は罪を背負って死んだそうだ。
よく知らぬが、それで世界の半分の最高神だ何て意味がわからない。
もし……自分に罪があるとしたら……
ブロロロッ!
遠くから異常な車の音が迫ってきた。
狂った走りをする車が走ってくる。
もしかしたら晴房を狙って突っ込んで来る計画なのかも知れない。
スパイも手強い。
祝皇という尊い存在の意味を理解しないできない不届きもの…
神などいない世界を目指す不届きもの…の輩だ。
このようなものにも祝皇の祈りはとどいてはいるのだろが感謝できないテロリスト…
晴房は怒りで心が冷たくなる。
冷徹な心になる…
慈悲や迷いの心など消えてしまう…
この世から消してやろう。
祝皇の優しき心を無下にする存在などこの国にいらない存在なのだから……
手をかざして滅せる力を出そうとした時、
目の前をなにも知らない子供が間に飛び込む。
ベタな偶然。
よくある不慮の事故。
いつもなら運命だと思い放置をする所なのに、勝手に身体が動いて、子供をかばった。
体に衝撃が襲う目の前が真っ白になる。
真っ白の中で思う…
これは…祝皇以外を守った大切にししたということになるのか…?
それは自分の存在を裏切ること…だ……
《祝皇以外を命をとして助けるは誓違いぞ……》
神の怒りの声が聞こえて意識が神の元へあがる…
その声は自分の声にも似ていた。
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