祈り姫

花咲蝶ちょ

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願いと妄想の夢違え

7☆心踊る中務の宮

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「少し待っていろ、瑠香を起こして直ぐに夢に送ってやる」
「いや、もう来たぞ。」
 瑠香は、二人の局に遠慮なく入ってきた。
 そして後ろにもう一人。
「大丈夫かい?すごい、うなされ方だったね。瑠香の局まで届いたよ」
「な、中務の宮殿下!」
 李流は慌てて床におでこを付けるくらい平伏した。
 中務の宮は陛下に神事、吉凶を報告するお役目をなさり、奥では陰陽寮を直接管理、陛下皇室の祭祀を滞りなく取り仕切ることをお役目になさっておられてご多忙で忙しく在られ、更には法子内親王殿下の父君であらされられる。

「な、中務の宮に置かれましてはぁぁゴゴキゲンウルワシュッ……!」
 あまりの緊張で口が回らなくなって顔を真っ赤にして恥じる。
 嬉しさと恥ずかしさの涙をぐっと我慢する。
 数回お声をかけてもらって個人的な会話を為さられたことはあるがいつも李流は緊張してしまう。
 式部の宮雅殿下に久々におあいした時も同じように平伏して薫に「親しき仲にも礼儀ありって言うけど、土下座ありみたいだぞ……」
 と言われてドン引きされた。 
 だが本来そのくらいする事が重要だと李流は思う。
 実際そうさせるオーラを持っている方々なのだから……
 その様子に中務の宮は苦笑して、
「そーんなに、平伏しないでおくれ、今、僕はoffモードなんだよ。
 気軽に接してくれるとうれしいなぁ」
 中務の宮はしゃがんで李流の肩をポンポンと親しげに叩き、優しく微笑まられた。
「は、はい……」
 我慢してた涙がポロポロと落ちてしまった。
 それは敬愛する皇族殿下のおそばにおられることの感無量なことと慈悲のオーラに圧倒されてのことだった。
「李流くんは可愛いね。瑠香がお気に入りの気持ちが分かるよ。」
「これは、私の息子だ!誰にも渡さぬ!」
 晴房は李流を肩から抱きしめて何故か中務の宮に警戒する。
「不敬だぞ、ハル。」
 瑠香は晴房を軽く叱って、ふーっとため息を吐き、
「李流君の見た夢を話しておくれ」
 瑠香は話がはぐれて飛ばないように促した。
 李流は今度は落ち着いて夢の出来事を整理して話した。
 神二柱は深刻そうに唸るが、中務の宮は玩具を見つけた子供みたいに満面の笑みで、
「何か、面白そうな事が起こっているみたいだね!」
 声を弾ませて本心をそう仰った。
 自分の娘の危機も重大だが、この世のものとはかけ離れた不思議な事件が起こっている事に久々に胸を踊らせている。
「久々に悪い癖が出てますよ……」
 瑠香は窘めるが、中務の宮の若かりし時のご性格は健在で懐かしさに苦笑した。
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