上 下
159 / 161
未来の縁

11☆運命の未来を星空に宿命に愛を告げる☆エンド☆

しおりを挟む
「うっ、くっ……!はっ!はぁっ!はぁ!」

 威津那はうなされてガバリと起きる。

 気がつけば冷や汗がひどい。
「嫌な夢だ……いや…夢ではない…か…」

 父の呪いか、一族の呪いのせいでか、悪夢を見た。

 八那果や菊が威津那の未来を見せた未来を……

 菊との寿命の契約は切れて橘は亡くなり、悲しみのあまり闇に囚われ陛下を裏切り、九尾をあやつり日和を滅ぼす未来………

 決してあってはいけない未来だ。
 あの時は《宿命》として受け入れたけれど……

 『今』ならまだ、『未来』を変えることができる……
 威津那は顔を覆って冷静に深く考える……
「ごめん……橘…僕はやっぱり耐えられそうにない……」

 寒空に美しい星々がキラキラと輝いて、三日月の細い月が刃物のように光って見える……

(縁を結ぶ月の神が、悪い未来を断ち切ってくれれば良いのに……)
 月は縁や未来を図る星だ……
 悪い未来など来ないように心底願う…
 陛下を守るための力を貸すハルの神はそういう力を貸してくれないのだから….

「行くのか?」
 晴綛が計ったように庭で待っていた。
 威津那はまだ迷っていて頷くことすら出来なかった。
「晴綛様は全てを知っているのですか?」
 黒御足の力を持ってはいなくても未来を予測して動く晴綛に疑問を持っていた。
 もう、何も驚くことはない、威津那もだいたいの事は想像はついていた。
 晴綛は手にしていた煙管を吸い、間を置いて夜空の星々に煙を吐き、
「お前の父の助けにもなりたくて、全てを見せてもらっていた……」
 晴綛は悲しそうに苦笑する。
 いつも明るい晴綛の、もう一つの顔だと思う。
「わしの最悪の未来は自分の血族を……娘ならず孫をも犠牲にして日和のために陛下のために審神者としての使命を果たすようだ」
 煙管をまた吸い、吐く。
「ま、当然じゃかの」
 迷いのない晴綛の覚悟の芯の強さを感じる。
「宿命を覚悟しているのですね…」
 威津那はその覚悟が足りない事に不甲斐なさを感じた。
「わしはお前や黒御足のように未来は見えない。
 だが、で良い方向に導くことができると自負している。」
「陰陽寮長….」
 名前ではなく役職名を威津那は敬意を持ってつぶやく。
 晴綛なら『出来ると』そうしてくれると信頼できる実力があるからだ。
 晴綛はニカっと照れたように笑い、威津那の頭をポンポン撫でる。
「ま、わし一人ごときが運命など変えられるわけないのだがな!」
 晴綛は煙管で冴え渡る星空を指し威津那の視線を星の煌めきに集中させて、
「なぜなら、この世はこの星々のように多くの人生があるのだからな、この世は一人のものではないという事だ」
「たしかに……」
 威津那は自分一人が陛下にあだなし成功させてしまう事が宿命だと思い込んでいた……

 そんな未来を今、変えられるのならばこれは《宿命》ではなく、それは《運命》だ。
 将来は変えられるのだ……
「未来を……運命を良い方に変えるのはお前を囲む暖かい縁と、子孫たちの幸せだ…その事を今後考えていけばいいだけじゃ」

 晴綛の言の葉でみんなのキラキラした言霊と、橘のキラキラとした瞳を思い夜空の星の美しさに重ねると未来の悪夢の不安は不思議と消えていった。

 未来の不安が消えたのもホッとしたのも束の間、後ろから橘にドンっと体当たりするように抱きつかれた。

「そんなに不安なら私があなたをまた抱いてあげるから逃げないでよ!」
 怒りとあやかしの力任せに腹を絞める。
「た、橘、苦しい、ちょっと緩めて……お願いっ!」
「やだっ!逃がさないんだからっ!ばかばかばか!嘘つき威津那さんなんか嫌いになっちゃうんだからぁあ!うわーーん!」
 橘は、わざと子供のように泣いた。
「ごめん、橘、ちょっと、夜風にあたりに外に散歩しに行っただけだから…」
「うそつけ。」
「晴綛さまっ!」
 威津那は大いに慌てる。

 逃げてしまおうとしたのも本当だし、やっぱりやめようと思ったのも本当だからだ。

「もう、未来が辛いなら何度も言うわ!あなたが暗い未来を見ると言うなら私がそんな未来無くしてあげる!だからそばにいて!」
 橘は威津那の腹に回していた手を離して、威津那を涙目で見て、
「今度こそ私から逃げないで!」
 そして正面から体当たりして地面に押し倒された。
「もう…逃げないよ、その代わりもう君は僕から逃げられないんだからね?」
 威津那は橘の頬を両手で振れる。
 涙を優しく拭うと、橘は微笑み、
「五寸釘と藁人のように?」
 橘は、わざとあの時のことを言う。
 威津那は、ふふっと楽しげに笑い、
「夫婦としてこれから共に歩んでほしい。
 たとへ、黄泉に逝ったとしても僕は君を恋焦がれ続けるよ…どんな未来が待っていようとも、君との縁は想いは永遠なのだから……」

 そう言って、誓いのキスをする。

☆☆☆

 橘と体を重ねた……
 愛おしい気持ちが溢れてつい言葉に出してしまいそうになる。
 その度に言葉にできない思いを、互いに抱きしめて魂から一つになりたいほど体があることがもどかしいほど狂おしいほど抱きあった……

 一つに溶けあいたい…
 溶けてしまいたい……
 もう、離れないように……

 正直、陛下よりも愛おしく感じ、この先の未来の辛さが増してしまう……

 君は将来、僕を置いて先にどうしても逝くのならば……

 僕は、宿命を変えない…変えることはないだろう……

 必ず訪れる絶望の先に君が待っていてくれると信じているから……

 今、この手から溢れ落ちる希望の光を再び取り戻せるのならば……


 その時は君に愛を告げるよ


 愛してると…何度でも……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...