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未来の縁
6☆執着
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「……父さんの見る夢なんか…もう、どうでもいい……」
威津那は冷徹な声で呟くように言い、小刀で父の胸を突いた。
それはカーちゃんが焔を飲み込んだ時に威津那の元からの眷属のカラスに収めていたものだ。
「ぐっ……」
八那果は刺され血を流している事に驚愕する。
威津那は父が近づくのを待っていた。
ハルの神の力を使えば御霊を浄化させ威津那自身も穢れなかっただろうが、この手を汚さなくては父は止められないと判断した、冷徹な呪術者としての黒御足の神経回路に威津那は苦笑した。
呪術でも自らの手で命を奪うのも同じ……
ただ、この手を呪術ではなく実際に怪我したのは初めてだ。
神誓いの能力をつかえば奪われるのならば単純にこの手しかないだろう。
「こんな近くの未来さえも分からないのに……」
威津那は思考は冷徹になれるが心は冷徹になれず表情に悲壮な色を浮かべてしまう。
「……威津那……」
八那果は、赤黒い瞳ではなく能力のない優しげな瞳で威津那を見る。
一瞬の父の優しい表情に威津那は戸惑う。
「お前は私の愛おしい息子……父殺しなどさせはしない…ぞ……」
八那果は口元に血を垂らし小声でそう言った。
「だがな……裏切り者のお前に制裁を与えねば、長として示しがつかぬ…っ!」
八那果は小刀を胸から勢いよく抜き去り、吹き出す血潮と手に滴る血を円を書いて撒き散らす。
威津那から奪った闇の力で辺りを闇に変え、血の滴りに八卦が浮かび上がる。
「凶方位神、金神よ現れよ!」
光が浮かび上がり西洋の星座のように星が線繋ぎに武将を形取る。
威津那は陰陽師としては未熟で詳しくは知らないが、金神は方位の神で、一族を殺すと言う。
凶神とは恐ろしい神だと一応陰陽寮長や、高良から聞かされていた。
その方位に行かなければ凶神を避けられるものらしいが、その神の力を引き出し操ることができる父の本領発揮のようだと威津那は焦る。
まだ、微睡の中にいる橘を守るように抱き構える。
「一族の命を金神に捧げ、威津那に呪いをかける!皆のもの覚悟せよ!この裏切り者威津那に最大限の制裁を!呪詛をかけるのだ!」
金神は剣を一閃振り一族の全員の首を刎ねた。
「なっ!」
有無を言う事も出来ず命を奪われた一族は霊となり威津那と八那果の周りをぐるぐると囲む。
威津那を呪うための贄になった一族たちは恨みを強く込める。
長の力にさせられるために命を奪われるために集められたのだ。
命を突然奪われ恨みしか沸かないだろう。
怨嗟の声も念の力になる……
まさに狂気の呪詛だ。
それくらいしなくては、神誓いした威津那に勝てないと先見していたのだろう。
「全ては一族を裏切った威津那が悪い…恨むのならば威津那を呪え!呪うのだ!」
ウオオオオオ…!と地を這うような恨みの念は威津那の周りをぐるぐる回りながら指を差し呪いをかける。
《威津那を置いて愛おしいものは先に逝く!未来を変えることはできない!》
その言霊の発する声は耳障りで不気味で力のある言霊だった。
黒御足の一族は未来を見て運命を、宿命を変えることができる。
それは決定させることだって可能だった。
恨みの念は普通の御霊よりも力を持つ。
だが、その呪詛は威津那に実感はないと感じる……
神誓いしたハルの神の力のせいなのか、『今』掛かる呪詛ではないものだからだろうか?
父は赤い瞳で我が子を哀れむように見つめる。
「……金神の呪いは絶対だ…じわじわとお前の愛おしいものが全て死ぬまで呪いは消えない……」
そういうと、膝を折り地面を見て血を吐いた。
「父さん……あなたも僕にとって大切な一人だよ……」
朝敵で処罰しなくてはいけない親といえど、哀れむ方は父の方だと思った。
《私は哀れられる存在ではない……》
父の背に黒い翼が生えた。
「⁉︎」
いや、天狗の姿をした父の魂が己の力の具現をかたどっているのだ。
《お前の不幸になる宿命を変えることが私にはできる、いやお前のため、日和のために変えねばならぬのだ……》
八那果は不敵に笑う。
《それは、お前の若き体を我にさせ出せばいいことだ!》
「⁉︎」
そういって、威津那の体に入り込んできた。
(父さんの執着心はすざましいなっ!ほんっと恐れ入る!その強い思い、意思はうらやましいくらいだ!)
「やめろ!入ってくるな!」
「そのように育てたのはこの私だ…このときのためにな……私の命令を聞かないお前が悪いのだ…」
霊体になった父に抗おうとも、有無を言わさず威津那の中に容赦なく入る。
肉体じゃないから尚更だ。
威津那の力は念を身のうちに宿す能力を持つために強い思念を持つ父を受け入れてしまった。
威津那は意識を失い、目の前が真っ暗になった。
「神を受け入れてもまだ余裕があるとはお前は……やはり普通の人間の器、御霊ではないのだな…」
八那果は威津那の運命宿命を全て知っている。
一族の呪いなどつゆにも感じないのはもとより辛い人生になるのがわかっているからだ。
だが、それは威津那自身の思考、御霊であるからこそだ。
「かわいそうに…その宿命…父が代わってやろう……」
そう、威津那の中に自分が入る事により威津那が迎える宿命を達成して八那果の希望は成就するのだ。
まだ微睡の中にいる橘に苦笑しながらそう言った。
「そして、私が九尾の娘と素晴らしき日和の世を作り出してやろうぞ……」
威津那は冷徹な声で呟くように言い、小刀で父の胸を突いた。
それはカーちゃんが焔を飲み込んだ時に威津那の元からの眷属のカラスに収めていたものだ。
「ぐっ……」
八那果は刺され血を流している事に驚愕する。
威津那は父が近づくのを待っていた。
ハルの神の力を使えば御霊を浄化させ威津那自身も穢れなかっただろうが、この手を汚さなくては父は止められないと判断した、冷徹な呪術者としての黒御足の神経回路に威津那は苦笑した。
呪術でも自らの手で命を奪うのも同じ……
ただ、この手を呪術ではなく実際に怪我したのは初めてだ。
神誓いの能力をつかえば奪われるのならば単純にこの手しかないだろう。
「こんな近くの未来さえも分からないのに……」
威津那は思考は冷徹になれるが心は冷徹になれず表情に悲壮な色を浮かべてしまう。
「……威津那……」
八那果は、赤黒い瞳ではなく能力のない優しげな瞳で威津那を見る。
一瞬の父の優しい表情に威津那は戸惑う。
「お前は私の愛おしい息子……父殺しなどさせはしない…ぞ……」
八那果は口元に血を垂らし小声でそう言った。
「だがな……裏切り者のお前に制裁を与えねば、長として示しがつかぬ…っ!」
八那果は小刀を胸から勢いよく抜き去り、吹き出す血潮と手に滴る血を円を書いて撒き散らす。
威津那から奪った闇の力で辺りを闇に変え、血の滴りに八卦が浮かび上がる。
「凶方位神、金神よ現れよ!」
光が浮かび上がり西洋の星座のように星が線繋ぎに武将を形取る。
威津那は陰陽師としては未熟で詳しくは知らないが、金神は方位の神で、一族を殺すと言う。
凶神とは恐ろしい神だと一応陰陽寮長や、高良から聞かされていた。
その方位に行かなければ凶神を避けられるものらしいが、その神の力を引き出し操ることができる父の本領発揮のようだと威津那は焦る。
まだ、微睡の中にいる橘を守るように抱き構える。
「一族の命を金神に捧げ、威津那に呪いをかける!皆のもの覚悟せよ!この裏切り者威津那に最大限の制裁を!呪詛をかけるのだ!」
金神は剣を一閃振り一族の全員の首を刎ねた。
「なっ!」
有無を言う事も出来ず命を奪われた一族は霊となり威津那と八那果の周りをぐるぐると囲む。
威津那を呪うための贄になった一族たちは恨みを強く込める。
長の力にさせられるために命を奪われるために集められたのだ。
命を突然奪われ恨みしか沸かないだろう。
怨嗟の声も念の力になる……
まさに狂気の呪詛だ。
それくらいしなくては、神誓いした威津那に勝てないと先見していたのだろう。
「全ては一族を裏切った威津那が悪い…恨むのならば威津那を呪え!呪うのだ!」
ウオオオオオ…!と地を這うような恨みの念は威津那の周りをぐるぐる回りながら指を差し呪いをかける。
《威津那を置いて愛おしいものは先に逝く!未来を変えることはできない!》
その言霊の発する声は耳障りで不気味で力のある言霊だった。
黒御足の一族は未来を見て運命を、宿命を変えることができる。
それは決定させることだって可能だった。
恨みの念は普通の御霊よりも力を持つ。
だが、その呪詛は威津那に実感はないと感じる……
神誓いしたハルの神の力のせいなのか、『今』掛かる呪詛ではないものだからだろうか?
父は赤い瞳で我が子を哀れむように見つめる。
「……金神の呪いは絶対だ…じわじわとお前の愛おしいものが全て死ぬまで呪いは消えない……」
そういうと、膝を折り地面を見て血を吐いた。
「父さん……あなたも僕にとって大切な一人だよ……」
朝敵で処罰しなくてはいけない親といえど、哀れむ方は父の方だと思った。
《私は哀れられる存在ではない……》
父の背に黒い翼が生えた。
「⁉︎」
いや、天狗の姿をした父の魂が己の力の具現をかたどっているのだ。
《お前の不幸になる宿命を変えることが私にはできる、いやお前のため、日和のために変えねばならぬのだ……》
八那果は不敵に笑う。
《それは、お前の若き体を我にさせ出せばいいことだ!》
「⁉︎」
そういって、威津那の体に入り込んできた。
(父さんの執着心はすざましいなっ!ほんっと恐れ入る!その強い思い、意思はうらやましいくらいだ!)
「やめろ!入ってくるな!」
「そのように育てたのはこの私だ…このときのためにな……私の命令を聞かないお前が悪いのだ…」
霊体になった父に抗おうとも、有無を言わさず威津那の中に容赦なく入る。
肉体じゃないから尚更だ。
威津那の力は念を身のうちに宿す能力を持つために強い思念を持つ父を受け入れてしまった。
威津那は意識を失い、目の前が真っ暗になった。
「神を受け入れてもまだ余裕があるとはお前は……やはり普通の人間の器、御霊ではないのだな…」
八那果は威津那の運命宿命を全て知っている。
一族の呪いなどつゆにも感じないのはもとより辛い人生になるのがわかっているからだ。
だが、それは威津那自身の思考、御霊であるからこそだ。
「かわいそうに…その宿命…父が代わってやろう……」
そう、威津那の中に自分が入る事により威津那が迎える宿命を達成して八那果の希望は成就するのだ。
まだ微睡の中にいる橘に苦笑しながらそう言った。
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