147 / 161
九尾の復活
10☆枯れ果てて
しおりを挟む
橘の真っ白な腕は真っ赤に鮮やかに染まる。
そして、滴る血をぺろりと舐める。
「確かに…皇の血筋は入ってるな…」
菊は美味しそうに舐める。
その舐め方は色気があり誰をも魅了する。
「お前…もう人間じゃないな…?」
菊はそう言って焔の腹部を見る。
穴の空いた腹は管狐の細胞が蠢いて回復して元に戻っていた。
焔が人でなくなったのはあやかしの世界であやかしを食べたからだ。
誰よりも、威津那よりも強くなれるなら躊躇はなかった。
「威津那だけ人間離れするなんてずるいじゃないか…双子なのに…贔屓されてずるい……」
焔は悲しげに笑う。
その様は幼い頃の母にかばわれて威津那に責められたときの表情と同じだと威津那は思うと胸が痛くなりかなしげな顔をしたのを焔は見るとニヤリと笑い、
「だから、威津那のモノは俺のモノ!何もかも奪ってやる!おまえも!俺の血を舐めたなら……九尾は俺のものだ…っ!」
突然、乱暴に菊を抱き寄せて、興奮したように焔は菊の…橘の唇を奪う。
「焔!貴様!」
威津那はカッとなってカラスを出して焔にトドメを指すためにさし向ける。
焔はそういうやつだとわかっていたのに心を緩めた空きに嫌なことをするやつだ。
菊は手をカラスに向けて止めさせる。
「まぁ、まて……我に殺らせろ。言っただろ?」
菊は艶のある唇をぺろりと舐める。
そして一瞬口元が耳まで避けた。
焔は、菊の体に縋るように膝から崩れ落ちる。
「ウッ……?」
焔の体の水分がなくなりシワシワになっていく。
菊は金の瞳を煌めかせながら見下すように笑う。
「橘の寿命は十五年しか生きられないのをお前の精気、寿命で補わせてもらおうか……?」
菊はシワシワになる焔を見ながら鼻で笑う。
「本当は橘にしたように残虐に殺してやりたかったのだがなぁ…どうせなら利益の出る奪い方の方が良かろう?なぁ?」
菊は威津那に向き直りにやりと笑う。
「それは…いいことだが……」
正直橘の体で自分以外の男に唇を奪われるのはいい気がしないので複雑な気分だ。
「こんなに簡単に俺がやられるなんて呆気なさ過ぎない……か?」
焔は怒り狂うわけでもなく自嘲した。
「それがお前の宿命だ…知っていたから残虐なまでに好き放題をしていたのだろう……?」
菊は未来が見えるので図星をさす。
「当たり前だろう?そのほうが人生最後まで楽しいだろ?普通の人間にできないことをする…いい人生だった……」
焔は後悔のない笑みをする。
「まぁ、最後は人生ではないな。我に生気を吸われなければ醜く生き続けただろう?……ん?むしろその姿のまま生かし続けてやるのも一興か?どうする?主殿?」
橘はニヤニヤして威津那に尋ねる。
「そうしてやりたいのは山々だけどね……」
威津那の目の前に黒髪に淡い桃色の着物女性がいた。
威津那も正直驚く。
威津那の眷属のカラスに魂が宿っていたのは知っていたけれど母の姿のままの御霊で現れるとは思わなかった。
「かぁさん…?」
シワシワで枯れ果てている焔の瞳から涙があふれる。
焔自身、こんなことで胸が締め付けられ,心も体も枯れ果てているのに涙が溢れるなんて思ってもいなかった。
そして、滴る血をぺろりと舐める。
「確かに…皇の血筋は入ってるな…」
菊は美味しそうに舐める。
その舐め方は色気があり誰をも魅了する。
「お前…もう人間じゃないな…?」
菊はそう言って焔の腹部を見る。
穴の空いた腹は管狐の細胞が蠢いて回復して元に戻っていた。
焔が人でなくなったのはあやかしの世界であやかしを食べたからだ。
誰よりも、威津那よりも強くなれるなら躊躇はなかった。
「威津那だけ人間離れするなんてずるいじゃないか…双子なのに…贔屓されてずるい……」
焔は悲しげに笑う。
その様は幼い頃の母にかばわれて威津那に責められたときの表情と同じだと威津那は思うと胸が痛くなりかなしげな顔をしたのを焔は見るとニヤリと笑い、
「だから、威津那のモノは俺のモノ!何もかも奪ってやる!おまえも!俺の血を舐めたなら……九尾は俺のものだ…っ!」
突然、乱暴に菊を抱き寄せて、興奮したように焔は菊の…橘の唇を奪う。
「焔!貴様!」
威津那はカッとなってカラスを出して焔にトドメを指すためにさし向ける。
焔はそういうやつだとわかっていたのに心を緩めた空きに嫌なことをするやつだ。
菊は手をカラスに向けて止めさせる。
「まぁ、まて……我に殺らせろ。言っただろ?」
菊は艶のある唇をぺろりと舐める。
そして一瞬口元が耳まで避けた。
焔は、菊の体に縋るように膝から崩れ落ちる。
「ウッ……?」
焔の体の水分がなくなりシワシワになっていく。
菊は金の瞳を煌めかせながら見下すように笑う。
「橘の寿命は十五年しか生きられないのをお前の精気、寿命で補わせてもらおうか……?」
菊はシワシワになる焔を見ながら鼻で笑う。
「本当は橘にしたように残虐に殺してやりたかったのだがなぁ…どうせなら利益の出る奪い方の方が良かろう?なぁ?」
菊は威津那に向き直りにやりと笑う。
「それは…いいことだが……」
正直橘の体で自分以外の男に唇を奪われるのはいい気がしないので複雑な気分だ。
「こんなに簡単に俺がやられるなんて呆気なさ過ぎない……か?」
焔は怒り狂うわけでもなく自嘲した。
「それがお前の宿命だ…知っていたから残虐なまでに好き放題をしていたのだろう……?」
菊は未来が見えるので図星をさす。
「当たり前だろう?そのほうが人生最後まで楽しいだろ?普通の人間にできないことをする…いい人生だった……」
焔は後悔のない笑みをする。
「まぁ、最後は人生ではないな。我に生気を吸われなければ醜く生き続けただろう?……ん?むしろその姿のまま生かし続けてやるのも一興か?どうする?主殿?」
橘はニヤニヤして威津那に尋ねる。
「そうしてやりたいのは山々だけどね……」
威津那の目の前に黒髪に淡い桃色の着物女性がいた。
威津那も正直驚く。
威津那の眷属のカラスに魂が宿っていたのは知っていたけれど母の姿のままの御霊で現れるとは思わなかった。
「かぁさん…?」
シワシワで枯れ果てている焔の瞳から涙があふれる。
焔自身、こんなことで胸が締め付けられ,心も体も枯れ果てているのに涙が溢れるなんて思ってもいなかった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
桜井兄弟のばあい
染西 乱
キャラ文芸
桜井さんちの男三兄弟が幸せに恋愛したりする話
三兄弟の兄ハジメは小学生の頃友達だっためぐむに告白される。好きとか付き合うとかまだわからないとめぐむを振ったハジメは、もう一人の親友であるイチコに「ずっと友達でいてくれ」と頼むが、イチコには「出来ないかもしれない約束はしない」と言われてしまう。
高校受験を控えたハジメは、遅くまで予備校で勉強して帰宅していた。家の近くで揉み合っている男女に気づくと、それはイチコで……
普段はコメント欄閉じてるタイプなんですが、読書キャンペーンが同時開催しているのでコメント欄開けてます。
感想考えるのは大変なので、ここのコメントは「読んだで、よかったで!」「おもしろかったで!」「途中までがんばったわ」ぐらいの感じでいいので、読書キャンペーン用にどうぞ。
※当方も適当に返事したりしなかったりします。私が読んで不快なコメントは予告なく削除します。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
14 Glück【フィアツェーン グリュック】
隼
キャラ文芸
ドイツ、ベルリンはテンペルホーフ=シェーネベルク区。
『森』を意味する一軒のカフェ。
そこで働くアニエルカ・スピラは、紅茶を愛するトラブルメーカー。
気の合う仲間と、今日も労働に汗を流す。
しかし、そこへ面接希望でやってきた美少女、ユリアーネ・クロイツァーの存在が『森』の行く末を大きく捻じ曲げて行く。
勢い全振りの紅茶談義を、熱いうちに。
冥府の花嫁
七夜かなた
キャラ文芸
杷佳(わか)は、鬼子として虐げられていた。それは彼女が赤い髪を持ち、体に痣があるからだ。彼女の母親は室生家当主の娘として生まれたが、二十歳の時に神隠しにあい、一年後発見された時には行方不明の間の記憶を失くし、身籠っていた。それが杷佳だった。そして彼女は杷佳を生んですぐに亡くなった。祖父が生きている間は可愛がられていたが、祖父が亡くなり叔父が当主になったときから、彼女は納屋に押し込められ、使用人扱いされている。
そんな時、彼女に北辰家当主の息子との縁談が持ち上がった。
自分を嫌っている叔父が、良い縁談を持ってくるとは思わなかったが、従うしかなく、破格の結納金で彼女は北辰家に嫁いだ。
しかし婚姻相手の柊椰(とうや)には、ある秘密があった。
恋愛が運命を決めないとしたら平和かもしれない
三谷朱花
キャラ文芸
茜はある本を読みたいと思ったことをきっかけに前世の記憶が戻ってきて、この世界が茜の知っている前世の世界とは違うことに気付く。この世界は、恋愛の概念がない世界で、「好き」も「不倫」も「略奪愛」も存在しえない。だからその本も存在しない。前世の記憶を思い出したことから茜の平穏だった生活に変化も出てきて、茜の思わぬ方向に…。そんな中でもその本を読みたい茜と、周りの個性的な人々が織りなすお話。
※アルファポリスのみの公開です。
※毎日大体夜10時頃に公開します。早かったり遅かったりしますが、毎日します。
帝国海軍の猫大佐
鏡野ゆう
キャラ文芸
護衛艦みむろに乗艦している教育訓練中の波多野海士長。立派な護衛艦航海士となるべく邁進する彼のもとに、なにやら不思議な神様(?)がやってきたようです。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
※第5回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます※
TAKAMURA 小野篁伝
大隅 スミヲ
キャラ文芸
《あらすじ》
時は平安時代初期。小野篁という若者がいた。身長は六尺二寸(約188センチ)と偉丈夫であり、武芸に優れていた。十五歳から二十歳までの間は、父に従い陸奥国で過ごした。当時の陸奥は蝦夷との最前線であり、絶えず武力衝突が起きていた地である。そんな環境の中で篁は武芸の腕を磨いていった。二十歳となった時、篁は平安京へと戻った。文章生となり勉学に励み、二年で弾正台の下級役人である少忠に就いた。
篁は武芸や教養が優れているだけではなかった。人には見えぬモノ、あやかしの存在を視ることができたのだ。
ある晩、女に救いを求められる。羅生門に住み着いた鬼を追い払ってほしいというのだ。篁はその願いを引き受け、その鬼を退治する。
鬼退治を依頼してきた女――花――は礼をしたいと、ある場所へ篁を案内する。六道辻にある寺院。その境内にある井戸の中へと篁を導き、冥府へと案内する。花の主は冥府の王である閻魔大王だった。花は閻魔の眷属だった。閻魔は篁に礼をしたいといい、酒をご馳走する。
その後も、篁はあやかしや物怪騒動に巻き込まれていき、契りを結んだ羅城門の鬼――ラジョウ――と共に平安京にはびこる魑魅魍魎たちを退治する。
陰陽師との共闘、公家の娘との恋、鬼切の太刀を振るい強敵たちと戦っていく。百鬼夜行に生霊、狗神といった、あやかし、物怪たちも登場し、平安京で暴れまわる。
そして、小野家と因縁のある《両面宿儺》の封印が解かれる。
篁と弟の千株は攫われた妹を救うために、両面宿儺討伐へと向かい、死闘を繰り広げる。
鈴鹿山に住み着く《大嶽丸》、そして謎の美女《鈴鹿御前》が登場し、篁はピンチに陥る。ラジョウと力を合わせ大嶽丸たちを退治した篁は冥府へと導かれる。
冥府では異変が起きていた。冥府に現れた謎の陰陽師によって、冥府各地で反乱が発生したのだ。その反乱を鎮圧するべく、閻魔大王は篁にある依頼をする。
死闘の末、反乱軍を鎮圧した篁たち。冥府の平和は篁たちの活躍によって保たれたのだった。
史実をベースとした平安ダークファンタジー小説、ここにあり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる