136 / 161
襲撃
7☆行き着く間
しおりを挟む
「そんな…っ!紺太が……っ」
橘は胸が締め付けられ涙が溢れて止まらない。
小生意気だけど気遣いは出来て、元気で宮中見回りにもよく付いてきてくれた紺太を咲羅子も思うと涙が止まらない。
「それに、陰陽寮長の父も負傷を負うなんて……宮中におわす陛下に危険が及んでしまうじゃない!」
咲羅子は気が気じゃない。
本来今すぐ警護の任につきたい所だが……
「そうよね…私も宮中で陛下をお守りしたいけど…私を狙ってるなら、宮中にはいない方がいいのよね……」
家の留守番をしていてよかったと思うが、そうでもない不安が押し寄せる。
香茂家が燃やされて、阿倍野に襲撃しない理由は何なのだろうか?
それにあの威津那に似た焔の事を思うとゾクリと震える。
「威津那……」
橘はいつも自分を守ってくれる愛しの威津那の名前を無意識につぶやく。
不安いっぱいな橘を高良は真剣な顔で見つめて手を握り、
「安心しろ、オレが威津那殿の代わりに守るよ。」
「そうよ。わたしも橘を守ってあげるわ!威津那が目覚めるまでね。」
「香茂の家をもやした恨みもはらさなきゃだしねぇ……」
牡丹は怒りに燃える。
致命傷どころじゃ済まさない雰囲気が話の重大さを聞いて付け足されている。
子供たちは母の怒りに怯える。
祖父母も母と同じ気持ちで香茂一族に喧嘩売ったことを後悔させてやるつもりだとテレパシーで伝わる。
「うん!わたしも守られてばかりはいられないから最大限警戒するわ!」
橘は早速腕すぐりのあやかしを召喚して屋敷の警護に当たらせ、寝ない決意をしたが……
☆☆☆
人の心を持たない人間にあやかしは力のない動物のようなものだった。
「やっと、辿り着いたけど、人間界じゃ一日も経ってないようだな」
夜明け前のくらい空をみて焔はそう判断した。
焔は阿倍野に召喚してした蛟の道標を見逃さず阿倍野屋敷にたどり着いた。
着いたそうそう眼鏡橋の鬼のあやかしに襲われるが一瞬で首を落とす。
黒御足家にもあやかしを瞬殺するような退魔刀を持っている。
それは小刀だが色々便利な代物だ。
帯刀も許されない世に隠し持つことができるのだから。
これで九尾の尻尾を切り落としたという伝説がある。
だが今はむしろ九尾を復活させる代物がほしかった。
なので常に阿倍野家の隣を座す香茂家を襲った部下たちが秘蔵の香木を手に入れ焔に渡す。
香茂家は九尾を引きつける力を呪物を持っているはずだということで、手当たりしだい盗み出し、その中でも呪力のある札つきの封印された香木を見つけ出したのだ。
威津那が香茂家の書物から唯一見つけた一文には
『香茂家は香の力で九尾を従わせた』
と書いてあった。
それは、威津那が文献で見た重要な唯一の一行だった。
それを、焔は瞳を通してみたのだ。
部下を向かわせ襲わせて奪ったが、香茂家は家宝よりも家族を選んだ。
「人間の本能ってそういうものだよなぁ。異界に迷った間に何度この女と交わって子をなしたことか……」
と、呟いた。
焔と一緒に異界に迷い込んだ女と交じり子をなし、命を繋がせるためにあやかしを食わせた。
体感的に三ヶ月彷徨い、あやかしを脅し従わせては生き延びたのも意外と楽しい経験だったと焔は思う。
一人だと流石につまらなかったかもしれないが、一族の嫉妬深い者に邪魔されず好みだった女と過ごせたのだから……
母方の一族の遠い血縁の娘で巫女の素質はかなりあった。
その神秘さが母の面影に似ていて気に入っていたが、今や腹に子をなすためだけの器で興味もない。
男の本能を満たさなくなった女は必要ないと切り捨ててしまうのは、常のことだった。
あやかしの世界で流石に疲弊しきった女を乱暴に部下に押し付ける。
「お前が世話をしろ。オレの子が宿ってる。わかるよな?」
「は、仰せのままに…」
部下の男は女を抱きかかえると組織の巣に戻っていった。
普段は興味など失せてしまうはずなのに異界であやかしを食わせ宿した自分の子はどれほどの力を得ただろうか?
すでに数人、子はいるが、特殊に宿した子供の能力に期待をしてしまう……
父が子に期待する気持ちを少しは理解できた気分になる。
「もっと、期待に答えなくてはな……」
フフッと笑って、あやかしたちが守る屋敷を獲物を捕らえた瞳で楽しげに見つめた。
橘は胸が締め付けられ涙が溢れて止まらない。
小生意気だけど気遣いは出来て、元気で宮中見回りにもよく付いてきてくれた紺太を咲羅子も思うと涙が止まらない。
「それに、陰陽寮長の父も負傷を負うなんて……宮中におわす陛下に危険が及んでしまうじゃない!」
咲羅子は気が気じゃない。
本来今すぐ警護の任につきたい所だが……
「そうよね…私も宮中で陛下をお守りしたいけど…私を狙ってるなら、宮中にはいない方がいいのよね……」
家の留守番をしていてよかったと思うが、そうでもない不安が押し寄せる。
香茂家が燃やされて、阿倍野に襲撃しない理由は何なのだろうか?
それにあの威津那に似た焔の事を思うとゾクリと震える。
「威津那……」
橘はいつも自分を守ってくれる愛しの威津那の名前を無意識につぶやく。
不安いっぱいな橘を高良は真剣な顔で見つめて手を握り、
「安心しろ、オレが威津那殿の代わりに守るよ。」
「そうよ。わたしも橘を守ってあげるわ!威津那が目覚めるまでね。」
「香茂の家をもやした恨みもはらさなきゃだしねぇ……」
牡丹は怒りに燃える。
致命傷どころじゃ済まさない雰囲気が話の重大さを聞いて付け足されている。
子供たちは母の怒りに怯える。
祖父母も母と同じ気持ちで香茂一族に喧嘩売ったことを後悔させてやるつもりだとテレパシーで伝わる。
「うん!わたしも守られてばかりはいられないから最大限警戒するわ!」
橘は早速腕すぐりのあやかしを召喚して屋敷の警護に当たらせ、寝ない決意をしたが……
☆☆☆
人の心を持たない人間にあやかしは力のない動物のようなものだった。
「やっと、辿り着いたけど、人間界じゃ一日も経ってないようだな」
夜明け前のくらい空をみて焔はそう判断した。
焔は阿倍野に召喚してした蛟の道標を見逃さず阿倍野屋敷にたどり着いた。
着いたそうそう眼鏡橋の鬼のあやかしに襲われるが一瞬で首を落とす。
黒御足家にもあやかしを瞬殺するような退魔刀を持っている。
それは小刀だが色々便利な代物だ。
帯刀も許されない世に隠し持つことができるのだから。
これで九尾の尻尾を切り落としたという伝説がある。
だが今はむしろ九尾を復活させる代物がほしかった。
なので常に阿倍野家の隣を座す香茂家を襲った部下たちが秘蔵の香木を手に入れ焔に渡す。
香茂家は九尾を引きつける力を呪物を持っているはずだということで、手当たりしだい盗み出し、その中でも呪力のある札つきの封印された香木を見つけ出したのだ。
威津那が香茂家の書物から唯一見つけた一文には
『香茂家は香の力で九尾を従わせた』
と書いてあった。
それは、威津那が文献で見た重要な唯一の一行だった。
それを、焔は瞳を通してみたのだ。
部下を向かわせ襲わせて奪ったが、香茂家は家宝よりも家族を選んだ。
「人間の本能ってそういうものだよなぁ。異界に迷った間に何度この女と交わって子をなしたことか……」
と、呟いた。
焔と一緒に異界に迷い込んだ女と交じり子をなし、命を繋がせるためにあやかしを食わせた。
体感的に三ヶ月彷徨い、あやかしを脅し従わせては生き延びたのも意外と楽しい経験だったと焔は思う。
一人だと流石につまらなかったかもしれないが、一族の嫉妬深い者に邪魔されず好みだった女と過ごせたのだから……
母方の一族の遠い血縁の娘で巫女の素質はかなりあった。
その神秘さが母の面影に似ていて気に入っていたが、今や腹に子をなすためだけの器で興味もない。
男の本能を満たさなくなった女は必要ないと切り捨ててしまうのは、常のことだった。
あやかしの世界で流石に疲弊しきった女を乱暴に部下に押し付ける。
「お前が世話をしろ。オレの子が宿ってる。わかるよな?」
「は、仰せのままに…」
部下の男は女を抱きかかえると組織の巣に戻っていった。
普段は興味など失せてしまうはずなのに異界であやかしを食わせ宿した自分の子はどれほどの力を得ただろうか?
すでに数人、子はいるが、特殊に宿した子供の能力に期待をしてしまう……
父が子に期待する気持ちを少しは理解できた気分になる。
「もっと、期待に答えなくてはな……」
フフッと笑って、あやかしたちが守る屋敷を獲物を捕らえた瞳で楽しげに見つめた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【完結】イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
あさきゆめみし
八神真哉
歴史・時代
山賊に襲われた、わけありの美貌の姫君。
それを助ける正体不明の若き男。
その法力に敵う者なしと謳われる、鬼の法師、酒呑童子。
三者が交わるとき、封印された過去と十種神宝が蘇る。
毎週金曜日更新

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。
(お気に入り登録いただけると通知が行き、便利かもです)
その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。
(その前に、仮まとめ版が出る場合もある、かも、しれない、可能性)
物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる