127 / 161
神誓いの儀式
8☆不安と思惑と覚悟
しおりを挟む
儀式には陰陽寮長と古参の職員と高良と皇太子殿下がいらしていた。
「陛下も禊の時期ですしね。僕が陛下の代わりに見届け役として来ました。よろしくお願いします」
恐れ多くも頭を下げて礼をなされた。
「殿下がいらしたら、威津那の闇の力も抑えられますし、何より次代の祝皇になられるのですから、良い経験になりますよ」
すでに晴綛は人の姿になっていた。
「ところで、神の依代は一生神の依代なのでしょうか……?」
威津那は晴綛に尋ねる。
「いや、若き後継者がいれば引き継ぐことができる、神の化身にならなければな……」
「依代と化身は違うのですか?」
「一度死に、『いきかえった』時に神の化身になる。
神の具現化した肉体になるのだ。
依代は神の力のみ貸してもらえるな…まぁ、どちらも対して変わらんがな」
と、晴綛は結論づけるが、
「陛下以外に『愛してる』とは言えない契約が死ぬまで続くというだけだな」
なんともないことのように言う。
「僕は依代の方なのですよね?」
とりあえず確認すると、晴綛は頷き、
「新しい依代ができたら言えるから安心しろ。」
晴綛はニカっ!と笑った。
「ワシも、無事依代の任務が終わったら流花に囁きまくるぞ。そして、五人目最後できるかもなぁ」
ひゃっひゃと想像して笑う。
儀式を行う晴綛こそ心身禊をした方が良いと威津那は思う。
「レッドスパイを殲滅しろと言った通り、無茶難題をわざと突きつけた意地悪だが能力者の部隊は、ほぼ壊滅に追いやったお前の信頼と橘を思う気持ちを考慮して無事、神誓いをしてめざめたならば、新年明けて一族職員総出で結婚を祝ってやるからな、頑張れ」
晴綛の言葉にまだ伝え忘れている注意事項に気がついた。
「数時間で終わるものではないのですか?」
威津那は首を傾げる。
「人の世と神の世の時間は違うじゃて、長くて七日眠りから覚めないとも聞いたことがある。その場合は職員交代で威津那が目覚めるのを待つだけじゃ」
そんな長く眠るなんて聞いていない。
本当に依代になるだけの儀式なのだろうか…?と不安になる。
「っ!」
威津那は瞳を痛みで反射で瞼を押さえる。
突然瞳の奥で痛みを感じ、一瞬焔の姿を見た。
(これは、未来か?だが、動きはなく、いつもの気持ち悪い笑い……?)
さらにもっと不安なことが一瞬胸にやどった。
「レッドスパイを壊滅させたとはいえ……黒御足の一族の一番厄介なのがまだ残ってます……」
威津那は深刻な顔をする。
やな予感が拭えない。
「僕の兄の焔が襲撃するかも……」
赤い瞳よりも、感が伝える。
今さら儀式を取りやめてはいけないことだろうか?
と言おうとしたら、
「一層宮中の守りを強化する、安心しろ」
と晴綛はポンポンと威津那の肩を叩き、
「お前の代わりに焔を操り人形にしてやるのも一興じゃ」
と言って小指を見せた。
それは安心させるためだろう。
晴綛は希代の陰陽寮長。
万が一のことも考えて行動しているのだ。
晴綛の強さは威津那が一番知っている。
けれど、焔のこともよく知っているのだ……
(あいつはこの国を陛下を陥れるためならきっとなんでもやる…手を下す……)
いや、あいつを霊的に生まれ変わらせるための力を得るために…陛下をお守りする為の神の力を威津那は依代として貸していただく為に更に決意して儀式のために褥に入り眠りについた。
陰陽寮長の晴綛は臨時の掌典職員も兼ねているので秘儀を知る。
それは妻の流花を神の依代にした秘儀でもあった。
高良はその儀式を自分の代でするかはわからないがよく見て忘れないようにする。
威津那の体の上にハルの神があぐらをかき瞳を閉じている。
威津那の魂と繋がろうとしているのだろう。
瞳が開いた時、儀式は完成だ。
もし、神誓いがうまくいかなければ、ハルの神は威津那の体ごと消滅させてしまうかもしれない。
それほど厳しさと激しさ…そして、我が国を憂う慈悲深さを持ち合わせた神だと審神者の晴綛は見極める。
「力強い…神ですね……」
殿下は神の姿をはっきりと見る事が出来た。
「ですな。国一つ消すことすら簡単にできるほどの神です。その神は威津那をこの世に宿命づけた…」
「何のために…?」
殿下は薄々感じていることを思わず言霊に出してしまった。
晴綛はニヤリと苦笑して、
「将来、祝皇になられる、殿下の対となるために……」
「………うん…そうなんだね……」
晴綛の言葉はハルの神が伝えたものだと殿下は感じて改めて『世を継ぐ』重さを覚悟なさった。
「陛下も禊の時期ですしね。僕が陛下の代わりに見届け役として来ました。よろしくお願いします」
恐れ多くも頭を下げて礼をなされた。
「殿下がいらしたら、威津那の闇の力も抑えられますし、何より次代の祝皇になられるのですから、良い経験になりますよ」
すでに晴綛は人の姿になっていた。
「ところで、神の依代は一生神の依代なのでしょうか……?」
威津那は晴綛に尋ねる。
「いや、若き後継者がいれば引き継ぐことができる、神の化身にならなければな……」
「依代と化身は違うのですか?」
「一度死に、『いきかえった』時に神の化身になる。
神の具現化した肉体になるのだ。
依代は神の力のみ貸してもらえるな…まぁ、どちらも対して変わらんがな」
と、晴綛は結論づけるが、
「陛下以外に『愛してる』とは言えない契約が死ぬまで続くというだけだな」
なんともないことのように言う。
「僕は依代の方なのですよね?」
とりあえず確認すると、晴綛は頷き、
「新しい依代ができたら言えるから安心しろ。」
晴綛はニカっ!と笑った。
「ワシも、無事依代の任務が終わったら流花に囁きまくるぞ。そして、五人目最後できるかもなぁ」
ひゃっひゃと想像して笑う。
儀式を行う晴綛こそ心身禊をした方が良いと威津那は思う。
「レッドスパイを殲滅しろと言った通り、無茶難題をわざと突きつけた意地悪だが能力者の部隊は、ほぼ壊滅に追いやったお前の信頼と橘を思う気持ちを考慮して無事、神誓いをしてめざめたならば、新年明けて一族職員総出で結婚を祝ってやるからな、頑張れ」
晴綛の言葉にまだ伝え忘れている注意事項に気がついた。
「数時間で終わるものではないのですか?」
威津那は首を傾げる。
「人の世と神の世の時間は違うじゃて、長くて七日眠りから覚めないとも聞いたことがある。その場合は職員交代で威津那が目覚めるのを待つだけじゃ」
そんな長く眠るなんて聞いていない。
本当に依代になるだけの儀式なのだろうか…?と不安になる。
「っ!」
威津那は瞳を痛みで反射で瞼を押さえる。
突然瞳の奥で痛みを感じ、一瞬焔の姿を見た。
(これは、未来か?だが、動きはなく、いつもの気持ち悪い笑い……?)
さらにもっと不安なことが一瞬胸にやどった。
「レッドスパイを壊滅させたとはいえ……黒御足の一族の一番厄介なのがまだ残ってます……」
威津那は深刻な顔をする。
やな予感が拭えない。
「僕の兄の焔が襲撃するかも……」
赤い瞳よりも、感が伝える。
今さら儀式を取りやめてはいけないことだろうか?
と言おうとしたら、
「一層宮中の守りを強化する、安心しろ」
と晴綛はポンポンと威津那の肩を叩き、
「お前の代わりに焔を操り人形にしてやるのも一興じゃ」
と言って小指を見せた。
それは安心させるためだろう。
晴綛は希代の陰陽寮長。
万が一のことも考えて行動しているのだ。
晴綛の強さは威津那が一番知っている。
けれど、焔のこともよく知っているのだ……
(あいつはこの国を陛下を陥れるためならきっとなんでもやる…手を下す……)
いや、あいつを霊的に生まれ変わらせるための力を得るために…陛下をお守りする為の神の力を威津那は依代として貸していただく為に更に決意して儀式のために褥に入り眠りについた。
陰陽寮長の晴綛は臨時の掌典職員も兼ねているので秘儀を知る。
それは妻の流花を神の依代にした秘儀でもあった。
高良はその儀式を自分の代でするかはわからないがよく見て忘れないようにする。
威津那の体の上にハルの神があぐらをかき瞳を閉じている。
威津那の魂と繋がろうとしているのだろう。
瞳が開いた時、儀式は完成だ。
もし、神誓いがうまくいかなければ、ハルの神は威津那の体ごと消滅させてしまうかもしれない。
それほど厳しさと激しさ…そして、我が国を憂う慈悲深さを持ち合わせた神だと審神者の晴綛は見極める。
「力強い…神ですね……」
殿下は神の姿をはっきりと見る事が出来た。
「ですな。国一つ消すことすら簡単にできるほどの神です。その神は威津那をこの世に宿命づけた…」
「何のために…?」
殿下は薄々感じていることを思わず言霊に出してしまった。
晴綛はニヤリと苦笑して、
「将来、祝皇になられる、殿下の対となるために……」
「………うん…そうなんだね……」
晴綛の言葉はハルの神が伝えたものだと殿下は感じて改めて『世を継ぐ』重さを覚悟なさった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【完結】イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
あさきゆめみし
八神真哉
歴史・時代
山賊に襲われた、わけありの美貌の姫君。
それを助ける正体不明の若き男。
その法力に敵う者なしと謳われる、鬼の法師、酒呑童子。
三者が交わるとき、封印された過去と十種神宝が蘇る。
毎週金曜日更新

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。
(お気に入り登録いただけると通知が行き、便利かもです)
その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。
(その前に、仮まとめ版が出る場合もある、かも、しれない、可能性)
物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる