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神誓いの儀式

7☆儀式前

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 ついに儀式の日の冬至。
 一番暗い時期から明るくなる始まりの日……
 その深夜、神誓いの儀式を始める。
 陰陽寮で神殿と同じ祭壇を作り行う。
 冬至は陰極まり陽が始まる日、陰陽道の理により、神誓いを行うのだ。
 控室に祭壇を作り真っ白な新品の褥が敷いてある。
 本来ならば陛下ご来臨のもと、神殿で行うものだが、とても大事な四方拝前に穢れでできたような人間を入れることはできぬ!と拒否された。
 威津那は曲がりなりにも、皇族の血筋が入っていることを掌典の職員は知っているが、正式ではないのだから仕方がない。
 一緒に儀式に立ち会って欲しいとは最初に言っておいたのにその事も頭にないようだ。
「まぁ、こっちでやるほうが気が楽だわい。本来の儀式のやり方忘れても知らぬからな」
 と、言ってやった。
 職員仲良くしなくてはならぬのだが、陰陽寮がやってることは陛下をお守りするために穢れも担っているのだから仕方ないと思うことにした。

(ハルの神もそれで構わぬと言っているのだし……)

 そんな心を見た高良は複雑だな……と思う。
「お前が寮長になった時、うまくやってくれればいいのだ。」
 そう言って頭をぽんぽん撫でた。
「まあ、掌典が陽なら我らは陰、同じ陛下をお支えする陰の神殿なのだからふさわしいことはふさわしいの…色々の……」
 晴綛は先々の事まで考えている。
 その考えをテレパシーで覗き理解して受け継ぐがことが重要だなと高良は理解する。
「まぁ、巫女に宿させる儀式でもないのだからの……我らで行うのも道理だな。八那果がそうであったようにな……」
 うんうんと晴綛は色々考えて納得するのだった。

☆☆☆

 祝皇陛下を支え穢れから守る存在の皇族を作るために皇族の血筋の神の依代を作る。
 それは霊的に皇族をお守りする最強の神の存在の依代になることだ。
 ルカの神は皇族をお守りする審神者を依代にする。
 ハルの神は太陽の神の分霊でもあるので皇族の血筋の者を好み神誓いをする。
 威津那は神を宿す器として血筋はふさわしかったと改めて晴綛から説明を受け納得する。
 神の依代になる事は威津那が生まれる前…いや、父が生まれた時からの計画だったのだ……
 神の依代のために生かされていた事は腑に落ちるし嫌気はない。
 これは宿命だったのだから……
 黒御足家のものは宿命を変える力があると言えど、この宿命は変える気はない、是非とも迎えたい事だ。
 だが….穢れ…この身の穢れが浄化した感覚はない。
 穢れ…呪力呪詛こそ威津那の力だからだ。
 未だに黒御足の力はある。
 それに『カーちゃん』が潜んでいる。
 カーちゃんは巫女であった母親の御霊だ。
 親子で霊力が共鳴して威津那が生まれた時から仕えていたカラスに御霊を宿した。
「そんなのは言葉の違いよ。呪力も妖力も神力も不思議な魂にいただいた誰もが大なり小なり持つものだ。まぁ…妖力は人の道を踏み外して人外となったものや遺伝でもあるがな。《志》が一番重要なことなのだよ」
 と、晴綛は言った。
 橘も、陛下を一番に思える事が一番の事、それがあれば神誓いは成功すると言っていた。
「志…か…」
 志が一番重要な事ならば……
(穢れたこの呪詛のみをも陛下のために使いたい…命、尽くしたい…)
 それは威津那の志しだと、改めて思えば不安などなくなった。

 それにしても……
「ほんとに、死と寝しそう……」
 と、体を震わせながら不吉な言霊を呟いてしまった。
 むしろ早く目の前の布団の中に入りたい!
 あまり不吉な言霊を言うのは厳禁だと思うが褥は当て字にすれば『死と寝』だと思う。
 威津那はガチガチ震えていた。
 体を柚子湯入りのお風呂を用意してもらって身を清め真白な狩衣を着る。
 狩衣は中に三重に小袖をきこんだとしても、真冬で湯冷めしてなおさら寒い……

 ☆

 今から少し前のこと体を清めるために高良にお風呂を炊いてもらった。
 そのお風呂の中には大きな柚子が浮かべられていた。
 柚子湯は体を温める。
「今日は冬至だからな。柚子湯で体をあたためなきゃな。
 凍死されても困るし。ぬる湯にゆっくり使ったほうが湯冷めしにくいらしいぞ。」
 高良は心遣いが細やかだ。
「ほんと、高良くんは優しくていい陰陽寮長になれるよ」
「………当然だ」
 ちょっと照れたような声音で可愛く思う。
 威津那は湯に浮かぶ柚子を二つつかんで自分の胸に押し当てて
(おっぱい)
と思った。
「ブハッ!」
 高良はお湯を沸かすために吹いていた筒に思いっきり息を吹き出し吹いて蒸せる。
「だ、大丈夫かい?」
「いや、天然ってすごいなと…ツボにハマる……」
 高良は涙を浮かべて腹を抱えて息も絶え絶えだ。
(股間にあてなくてよかった)
 と言うのを聞いて、また吹き出して高良はヒーヒー言って言葉にならない。
「高良くんの弱点見つけちゃった…下ネタがツボなのか…」
「いや。威津那殿が天然で不意に思いつくから……」
 天然のボケに弱い。
「オレも初めて弱点知った…」
 改めて威津那を見ると柚子二つ持ってこちらを見ていたものだから、高良がしばらく再起不能になっていたのを思い出して、体は寒いし緊張があったけれど、心はほっこりとして緊張が解ける威津那だった。
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