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神誓いの儀式

6☆純粋に感じて(番外編)

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「威津那の子供のような純粋さを見ると、呪詛を操っていた男とも思えないわよね。」
 咲羅子は威津那が陛下とお会いした後の様子を見て神妙に言う。
「呪詛をちょくちょく仕掛けてこられた日々が嘘みたいだわ…」
 仕掛けてきたレッドスパイを絶対に手を穢しても成敗する!と躍起になっていたことを思い出す。
「とくに、夏の怪談話の後の幽霊は怖かったわよね……」
 夏の暑い夜に太刀の者達と陰陽寮職員数人で百物語をした。
 怪奇な力を持つ者たちはそんな話です幽霊が来てすぐに退治出来る思っていたけれど、威津那の仕掛けた念は地から這うような声や不気味さでみんなをビビらせた。
 なんとかみんなで寄ってたかって退治出来た……と思う。
「うん。私もう少しで宮中を火事にさせるかってほどの狐火出しちゃったくらいビビったもん。」
「橘が大罪犯すところだったわね…」
 それを思うと別の意味でゾッとする。
「何話してるの?」
 威津那は自分を話題にしている事らしいので気になって尋ねる。
「あんたが悪さしてた時の話をしてたのよ!」
 咲羅子はその時の思いをぶつけるように威津那を怒鳴る。
「ご、ごめんなさい。」
 しゅんとして威津那は謝る姿は幼子の雰囲気だ。
「なんか、私がいじめたようじゃない……というか、わざと嫌味は言ったけど……ごめん…なさい」
 咲羅子は威津那を信用できなくて意地悪言ってしまう事に謝りたくはなかったけど謝った。
「い、いや。ほんとにごめん,申し訳ない」
 気位の高い咲羅子に謝れると思わなかったので威津那は尚更誤った。



「ほんと、最初に比べれば殺気やどこか危険な印象はなくなったわよね……刀もそう言ってるわ」
 咲羅子は刀を見つめてそう言った。
 咲羅子は刀の神の声が聞こえるし殺気を含むのも刀の影響で、邪気を放つ威津那に終始警戒していたのはそう言うことだ。
 橘は陰陽寮に来た時の威津那をおもいだすが、
「元から純粋な心の持ち主だったわよ!」
「それ、惚れた弱みじゃないの?」
 咲羅子はすかさず突っ込む。
「純粋な性格だからこそ、威津那殿は思いを感じてしまうし、呪詛を取り込むことも、神誓いもできる力を持ってるんだよ。」
 高良も二人の話に加わって言う。
「他にどうしてやろう、こうしてやろう、もっと痛めつけてやろう……とかじゃないな。本当にいたずらを楽しんでた子供だったんだよ」
 と高良はいう。
「こ、子供って…否定は出来ないけど…」
 一回り以上も年下に言われるのは、かなり複雑だ。
「オレが組織の人間だったら先のことまで考えて、やる。」
 高良はそんな自分を想像して意地悪くニヤリと笑う。
「あんたがまともな組織の人間でよかったわ……」
「そうね」
 改めて高良が将来の陰陽寮長でよかったと思う。
「あの時は、悲しみ憎しみの思いを抱く彼らの気持ちを陛下に聞き届けてほしかった…と言う方が強かった……」
 威津那は己を省みて告白する。
 それは、威津那じゃなくてもあの戦争の悲惨さを思えば理解できる。
 やるせない思いを持つ者が多かった。
 たとへ、未来の日和のために立ち上がる為の玉音に触れてもだ……
 さまざまな辛く悲しい思いは忘れられないし消せないのだ……
 威津那はふっと柔らかく微笑んで橘の狐耳に触れる。
「そんな悲しみの念に未来の言葉を橘はたくさんかけてくれた……伝えてくれた。」
 その時の言霊は威津那の胸に忘れられないものでもある。
「そのせいでだいぶ力削がれちゃったよ」
「そ、そうなの?」
 橘は威津那に優しく見つめられて撫でられるものだから照れる。
「僕は国を思い残された人たちの念を操って宮中にいたずらかけた時、いつも君は言ってたんだよ。」
《早く降伏していれば死なずに済んだのに…》と言う思いを操った時、
『命をかけて戦ったのは我が国を家族を守るために命をかけて散っていたのよ!その人たちの気持ちを汲まないでそんなこと言わないで!』

「僕は念と同じ思い考えだったからハッとしたよ……何のために戦っていたのか忘れていた。敗北した無念を強く抱いていたからね……」
 自分一人では運命をかえられなかった驕った気持ちに絶望もしていた。
 だが、橘の言霊で国を守るために亡くなった戦友たちの思いをちゃんと代弁してくれて感謝してくれたとに、嬉しさと罪悪感があった。
「恨むばかり、嘆くばかりでは、命をかけて守った国は良くならない、腐るだけになるのでは…と…」
 と悲しげに告白する。
 新しく生まれるのではなく腐り落ちる……
 父がやろうとしていることは果樹の根元根幹の木までも切り落とすことなのではないか…と思い返す事もあった。
 国民の腐る思いは、年々増えて皇室に憎しみ向ける念が多い。
 それは今も……これからも増え続けて、陛下の命を奪うために実行するものも現れるだろう……
 赤い瞳、煌めかせて顔を歪める。
 威津那はそのことに鬱になる。
 そんな威津那の手をとって真っ直ぐ見つめて、
「そんなこと長くは続かないわ…だって、私たちは日和国民だもん。」
 橘は当然のように真っ直ぐ言う。
 それは懸念を払拭させる言霊だった。
 理由もちゃんとしてなくても納得してしまう。
「そうだね、簡単な事だね。難しく考える必要なかったね、高良くん?」
「なんで、オレにふるんだ……?」
 高良、自身未来は見えなくてもが反日教育に懸念していたからだ。
 たった十年なのに、みんな日和国、陛下が悪いと思い込んでいるのだから……
 だが、橘の言霊はこの場にいるもの達の将来の日和国への懸念を、不安を払拭してしまうほどだった。
「橘はかわいいね」
 といって、改めて威津那は頭を撫でる。
「ほんっと可愛いわよ!橘の真っ直ぐなところ好きよ!」
 咲羅子は橘に抱きつく。
「僕も!」
 紺太はひょっこり出てきて軽く言う。
「オレもっ!す、すきだよ…」
 高良は顔を真っ赤にして便乗する。
「高良くんもかわいいよ」
 そう言って伸びた髪の毛を触って数本むしった。
「オイ!やめろ!返せ!」
「ふふ、友情の証」
「なんだそれは!オレを敵視したからだろ!」
「もう、威津那も高良も二人ともおもしろーい!」
 橘はくすくすと笑う。
(ほんと、可愛いよ……ずっとみていたい…その笑顔を守りたい……)
 こんな思いをもっていた戦友もたくさんいたのだと改めて気づく。
 元に季節は国を咲羅子の未来を守るために戦ったのだ。
 その願いが今叶っている……
 この平和な日和国を守ること…陛下を国を守ることは大切な人たちの穏やかな日々を過ごすこと…
(ああ…陛下の座す日和国のなんて愛おしいことか……)
 日和国に、陛下がこの幸せを祝福して国民を幸せを願われ祈られ巡り幸せが国民に行き渡る……
 些細のことでも幸せで、陛下は国民の幸せを祈られていることに気がつけば一人不幸という事はないのだ。
 己が操った念たちが殿下の祈りでさえ浄化してしまう意味が改めてわかる。
 冬に向かう秋の過ごしやすい日差しの中で、ワイワイ賑やかな和やかの日差しの良い日々がとても愛おしく楽しい威津那だった。

「あ、ちなみに夏バテして八月は悪さしてなかったよ?」
「え?」
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