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九尾の狐の菊の陰謀
19☆幼い頃の夢
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威津那は幼い頃の夢を見る。
夢なので多少脚色しているかもしれないが……
家族の夢……ささやかな幸せだったときの家族水入らずの縁日のお祭りの日の帰り道。
「ねえ、お父さん、お父さんの好きな人ってお母さんだよね。」
威津那の頭に留まるカラスになった妻を悲し気に見つめて。
お母さんを好きだけど、お母さんより好きな人がいるんだよ。
「えっ、浮気?」
幼い威津那は目を丸くする。
「この国そのものを愛してるんだ。長い歴史、独特の文化そして……」
父はうっとりしながら語る。
「我ら国民を愛してくださる祝皇陛下おわす日和を愛しているんだ。」
「ぼくも、陛下を好きだよ。素晴らしい方だって学校で教わってるよ」
「俺も!でも、俺陛下以上に偉い奴になりたい。」
「焔は処刑されても仕方がないな……」
父は笑顔を引き攣らせて子供の戯言だから聞き流そうとするが、いう言葉は怒りが現れている。
「処刑される前にやり返す。」
「不敬すぎるだろ!」
威津那は焔を気色ばみ叱る。
「あはは!お前のその歪んだ顔が俺は一番大好きだ。」
焔の反省の色よりも本気で喜ぶ姿に、威津那は辟易する
「僕は大っ嫌いだ!」
辟易するが怒らずにいられないのはもう癖だ。
反射的にやることなすこと気に食わない……
「俺は…お前が愛するモノ全て奪ってやりたい……俺だけを考えてくれるように…」
うっとりしている焔に威津那は困惑する。
「その気持ちが祝皇の親しみへ向けてくれたらな、とても力強いものになるぞ。」
やれやれと焔を本気で叱らず父は呆れて諭す。
「ふん、実際見たこともない人なんか、どうでもいい。」
焔は父に返す言葉は淡白だ。
「俺は威津那が好きだから…威津那さえいれば俺はそれでいいんだ…」
その表情はなぜだか今にも泣きそうだった。
そんな焔の頭にカラスの母親は乗る。まるで慰めるように頭を寄せる。
ぎゅっと焔は威津那の手を握る。
「焔はいつも意地悪するし嫌なことするけれど『兄弟は仲良くしなさい』って祝皇の言いつけだから仲良くしてあげるだけだから……」
「そのことを言った祝皇を俺は尊敬するぞ!
だって、俺たちの本当のおじいさんなんだろ?」
父は人差し指を口元に置いて優しく黙らせる。
今上帝と同じ年に密かに生まれた皇子ということは世間も宮中の者も知らない。
黒御足家に預けられそのまま育ち黒御足の当主として育てられた。
そして、イズナの一族の母と結婚し双子を成した。
母は幼い頃、焔を庇って事故で亡くなった。
それを見ていた威津那は焔のせいにして責めた時から狂ってしまっていると父から諭されて、威津那にも責任があると思うと複雑だった。
双子の兄弟だから、そばにいることは自然だった……
あの頃の父は穏やかでほんっとに優しい人だった…
けれど、変わってしまった……
日和国を愛していた父は破壊されることを良しとしなかった。
そして心まで狂うほど恐ろしい未来を見て壊れてしまった。
精神が多少壊れている焔のように…
焔は父の隠れた気性を表している性格なのだ。
「お前は日和国を導く神の力を使い、日和国を守る皇になれ……それしか我が国を守れぬ……だから皇の血をいただく我らが国を治めてもかまわぬはずだ……お前の子孫でも焔の血筋でも構わぬ…異能の力持つ我らが日和国を統べるべきなのだ。」
そう父は皇帝の如く命令をする。
黒御足の長である父の言葉は絶対だった….
「日和を取り戻す為に血を流しても構わぬのだ…それほどの痛みが新たに必要なのだ……でなければ元の日和を国を、取り戻せない」
十年経って、ほぼ日和国内は本来の民族性を破壊されつつある。
それはこの先百年たっても続いていく…いや腐っていくだろう……
腐る前に、日和国として、自国を他国に蹂躙されないように守らなくては英霊となった仲間たちに申し訳立たない国になる……
その事はとても憂うことに違いはないが……
だけど、僕は知ってしまったから……
ささやかな幸せを……
愛おしい人と心通じる楽しさを……
仲間との語らいを……
闇に落ちなくていい心地よさを……
大戦の不幸な時代が去って、ささやかだけど幸せな人生を橘と共に味わいたいんだ……
そういう時代を大切にしたっていいじゃないか……
幸せに生きることを望んではいけないのか……?
幸せに生きること自体が父が一番に愛する陛下の希望だったはずだ……
きっと今も祝皇を尊く思っているはずだ……
僕にはわかるんだ……
夢なので多少脚色しているかもしれないが……
家族の夢……ささやかな幸せだったときの家族水入らずの縁日のお祭りの日の帰り道。
「ねえ、お父さん、お父さんの好きな人ってお母さんだよね。」
威津那の頭に留まるカラスになった妻を悲し気に見つめて。
お母さんを好きだけど、お母さんより好きな人がいるんだよ。
「えっ、浮気?」
幼い威津那は目を丸くする。
「この国そのものを愛してるんだ。長い歴史、独特の文化そして……」
父はうっとりしながら語る。
「我ら国民を愛してくださる祝皇陛下おわす日和を愛しているんだ。」
「ぼくも、陛下を好きだよ。素晴らしい方だって学校で教わってるよ」
「俺も!でも、俺陛下以上に偉い奴になりたい。」
「焔は処刑されても仕方がないな……」
父は笑顔を引き攣らせて子供の戯言だから聞き流そうとするが、いう言葉は怒りが現れている。
「処刑される前にやり返す。」
「不敬すぎるだろ!」
威津那は焔を気色ばみ叱る。
「あはは!お前のその歪んだ顔が俺は一番大好きだ。」
焔の反省の色よりも本気で喜ぶ姿に、威津那は辟易する
「僕は大っ嫌いだ!」
辟易するが怒らずにいられないのはもう癖だ。
反射的にやることなすこと気に食わない……
「俺は…お前が愛するモノ全て奪ってやりたい……俺だけを考えてくれるように…」
うっとりしている焔に威津那は困惑する。
「その気持ちが祝皇の親しみへ向けてくれたらな、とても力強いものになるぞ。」
やれやれと焔を本気で叱らず父は呆れて諭す。
「ふん、実際見たこともない人なんか、どうでもいい。」
焔は父に返す言葉は淡白だ。
「俺は威津那が好きだから…威津那さえいれば俺はそれでいいんだ…」
その表情はなぜだか今にも泣きそうだった。
そんな焔の頭にカラスの母親は乗る。まるで慰めるように頭を寄せる。
ぎゅっと焔は威津那の手を握る。
「焔はいつも意地悪するし嫌なことするけれど『兄弟は仲良くしなさい』って祝皇の言いつけだから仲良くしてあげるだけだから……」
「そのことを言った祝皇を俺は尊敬するぞ!
だって、俺たちの本当のおじいさんなんだろ?」
父は人差し指を口元に置いて優しく黙らせる。
今上帝と同じ年に密かに生まれた皇子ということは世間も宮中の者も知らない。
黒御足家に預けられそのまま育ち黒御足の当主として育てられた。
そして、イズナの一族の母と結婚し双子を成した。
母は幼い頃、焔を庇って事故で亡くなった。
それを見ていた威津那は焔のせいにして責めた時から狂ってしまっていると父から諭されて、威津那にも責任があると思うと複雑だった。
双子の兄弟だから、そばにいることは自然だった……
あの頃の父は穏やかでほんっとに優しい人だった…
けれど、変わってしまった……
日和国を愛していた父は破壊されることを良しとしなかった。
そして心まで狂うほど恐ろしい未来を見て壊れてしまった。
精神が多少壊れている焔のように…
焔は父の隠れた気性を表している性格なのだ。
「お前は日和国を導く神の力を使い、日和国を守る皇になれ……それしか我が国を守れぬ……だから皇の血をいただく我らが国を治めてもかまわぬはずだ……お前の子孫でも焔の血筋でも構わぬ…異能の力持つ我らが日和国を統べるべきなのだ。」
そう父は皇帝の如く命令をする。
黒御足の長である父の言葉は絶対だった….
「日和を取り戻す為に血を流しても構わぬのだ…それほどの痛みが新たに必要なのだ……でなければ元の日和を国を、取り戻せない」
十年経って、ほぼ日和国内は本来の民族性を破壊されつつある。
それはこの先百年たっても続いていく…いや腐っていくだろう……
腐る前に、日和国として、自国を他国に蹂躙されないように守らなくては英霊となった仲間たちに申し訳立たない国になる……
その事はとても憂うことに違いはないが……
だけど、僕は知ってしまったから……
ささやかな幸せを……
愛おしい人と心通じる楽しさを……
仲間との語らいを……
闇に落ちなくていい心地よさを……
大戦の不幸な時代が去って、ささやかだけど幸せな人生を橘と共に味わいたいんだ……
そういう時代を大切にしたっていいじゃないか……
幸せに生きることを望んではいけないのか……?
幸せに生きること自体が父が一番に愛する陛下の希望だったはずだ……
きっと今も祝皇を尊く思っているはずだ……
僕にはわかるんだ……
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