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九尾の狐の菊の陰謀
9☆殿下の恋事情
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「この妖術を解くにはどうしたら良いの?」
根本的な問題を橘は紺太に聞く。
「眠る狐に妖術を解かせるのが一番なんだけど…それは無理っぽいからね…」
紺太はわざとらしく考えるように顎に手を当てて、うーんと天を仰ぐ。
閃いたように指を鳴らして、
「この術を特には二人同時、運命の相手にキスをすることなんだ!」
「ええええええええええ!同時にって⁉︎」
橘と殿下は同時に驚きの声を上げる。
「紺太!それは嘘ついてないわよね?」
「ばーちゃんの伝言を疑う気?」
不服そうに頬をわざとらしく膨らませる。
空を見上げていたのは交信していたらしい。
「いや、ウカノミタマの伝言なら疑わないよ…」
殿下はそう言って紺太を信じることにしたご様子だ。
(私は全然余裕だから大丈夫だけど……)
橘が心配なのは殿下の恋の方だ。
「あの……殿下はいらっしゃるのですか?好きな人……恋をしている方が…」
橘は恐る恐る尋ねる。
年頃の殿下はいろんなお妃様候補が推薦されている。
家柄の良い方々、皇族の血筋の方もいらっしゃるとお聞きするけれど、どの方も殿下は渋っていらっしゃるとも雑誌や新聞でささやかれてもいる。
実は、殿下のお相手は父様率いる陰陽寮の縁結びの占いで決めているのも事実だから、殿下の恋の事情はある程度知っていた。
「いるよ……十年前、侍女見習いの女の子…」
と、殿下はぽつりと心に決めているお相手の事を語る。
この長年の思いは誰にも告げず一人胸の中で思い続けていらっしゃるようだった。
十年前幼いながらも宮中の侍女見習いとして仕事をしている女の子がいた。
それなりの家に生まれた娘だけど、愛人の子ということで無下にされて宮中の侍女見習いとして仕事をしていた。
殿下と同い年で民間の子供と接する機会を陛下はお与えになってくれて、彼女と友達でもあった。
その時から運命を感じていた。
けれど、家の事情で、どこかの養子として預けられることが決定したらしく、仕事を辞めることになって……
「これを預けるから、届けに来てください。今度は大人になって…また会おう…約束ですよ?」
と、皇族だけが持つことが許されたペンダントを彼女に渡して別れた。
月日が経ち、殿下は道祖神がなくなった逢引き廊下なる職員たちの馴れ初めの場を訪れた時、侍女寮から仕事に向かう侍女が、あの子に面影が似ていた。
「いや、間違えなく、彼女だったのだけれどね。」
橘は頬を染めて殿下の馴れ初めを興味津々で聞いていた。
(なんて偶然!私と威津那の関係みたい!同い年だからかしら?縁の運命が似ているのは!)
と陰陽寮長の娘らしくそう考える。
「その日依頼密かに逢引き廊下に足を運んでも、彼女に会う機会がなくてね…留学も決定してしまって尚更ね、それで、帰って来れて侍女長なら話を聞いても、彼女は……」
悲しそうなお顔をして、はぁぁぁ……と、珍しく少し怒りを込めたため息を吐かれる。
「物忌とか物忌とか物忌とか……会いに行くたびに彼女に会えなくて……そのことも、実は陰陽寮長に問いただしたかったんだよね……」
と笑顔で怒りを抑えていると感じる。
「橘は宮中女性の暦を運んでいるんだよね?遠子さんに会ったことないかい?」
「あ、遠子さん。おさげで品の良い朗らかな侍女さんですね。」
「知ってるの?」
「少し会話しました。優しい雰囲気があって芯が強い素敵な女性ですよね。
お嬢様に見えるのに、侍女の仕事をして不思議には思ってましたけど……」
どこか不思議な魅力をもつ女性だった印象が強かった。
暦の出勤表は寮長にまとめて責任を持って渡すのだけど、たまたま侍女長は物忌で遠子が預かってくれその時お話をした。
その話を聞いて殿下はそわそわなさる。
「じゃ、その人が殿下とお約束した女性で、キスをすれば呪いが解けるってこと?」
「本当の縁だったらね」
紺太は失礼ながらそう言ってしまうが、
「本当の縁だよ」
殿下は断言した。
瞳は期待でキラキラしていらっしゃる。
『ちっ…余計なことを……』
また、どこからか声が聞こえたけれど、橘にはもうわかる。
『眠る狐』の声だ。
きっと、ウカノミタマの伝言は本当のことなのだ。
「侍女さんを連れて来れれば良いんですよね?」
「できるかい?」
「お安い御用です!」
橘は胸を張った。
根本的な問題を橘は紺太に聞く。
「眠る狐に妖術を解かせるのが一番なんだけど…それは無理っぽいからね…」
紺太はわざとらしく考えるように顎に手を当てて、うーんと天を仰ぐ。
閃いたように指を鳴らして、
「この術を特には二人同時、運命の相手にキスをすることなんだ!」
「ええええええええええ!同時にって⁉︎」
橘と殿下は同時に驚きの声を上げる。
「紺太!それは嘘ついてないわよね?」
「ばーちゃんの伝言を疑う気?」
不服そうに頬をわざとらしく膨らませる。
空を見上げていたのは交信していたらしい。
「いや、ウカノミタマの伝言なら疑わないよ…」
殿下はそう言って紺太を信じることにしたご様子だ。
(私は全然余裕だから大丈夫だけど……)
橘が心配なのは殿下の恋の方だ。
「あの……殿下はいらっしゃるのですか?好きな人……恋をしている方が…」
橘は恐る恐る尋ねる。
年頃の殿下はいろんなお妃様候補が推薦されている。
家柄の良い方々、皇族の血筋の方もいらっしゃるとお聞きするけれど、どの方も殿下は渋っていらっしゃるとも雑誌や新聞でささやかれてもいる。
実は、殿下のお相手は父様率いる陰陽寮の縁結びの占いで決めているのも事実だから、殿下の恋の事情はある程度知っていた。
「いるよ……十年前、侍女見習いの女の子…」
と、殿下はぽつりと心に決めているお相手の事を語る。
この長年の思いは誰にも告げず一人胸の中で思い続けていらっしゃるようだった。
十年前幼いながらも宮中の侍女見習いとして仕事をしている女の子がいた。
それなりの家に生まれた娘だけど、愛人の子ということで無下にされて宮中の侍女見習いとして仕事をしていた。
殿下と同い年で民間の子供と接する機会を陛下はお与えになってくれて、彼女と友達でもあった。
その時から運命を感じていた。
けれど、家の事情で、どこかの養子として預けられることが決定したらしく、仕事を辞めることになって……
「これを預けるから、届けに来てください。今度は大人になって…また会おう…約束ですよ?」
と、皇族だけが持つことが許されたペンダントを彼女に渡して別れた。
月日が経ち、殿下は道祖神がなくなった逢引き廊下なる職員たちの馴れ初めの場を訪れた時、侍女寮から仕事に向かう侍女が、あの子に面影が似ていた。
「いや、間違えなく、彼女だったのだけれどね。」
橘は頬を染めて殿下の馴れ初めを興味津々で聞いていた。
(なんて偶然!私と威津那の関係みたい!同い年だからかしら?縁の運命が似ているのは!)
と陰陽寮長の娘らしくそう考える。
「その日依頼密かに逢引き廊下に足を運んでも、彼女に会う機会がなくてね…留学も決定してしまって尚更ね、それで、帰って来れて侍女長なら話を聞いても、彼女は……」
悲しそうなお顔をして、はぁぁぁ……と、珍しく少し怒りを込めたため息を吐かれる。
「物忌とか物忌とか物忌とか……会いに行くたびに彼女に会えなくて……そのことも、実は陰陽寮長に問いただしたかったんだよね……」
と笑顔で怒りを抑えていると感じる。
「橘は宮中女性の暦を運んでいるんだよね?遠子さんに会ったことないかい?」
「あ、遠子さん。おさげで品の良い朗らかな侍女さんですね。」
「知ってるの?」
「少し会話しました。優しい雰囲気があって芯が強い素敵な女性ですよね。
お嬢様に見えるのに、侍女の仕事をして不思議には思ってましたけど……」
どこか不思議な魅力をもつ女性だった印象が強かった。
暦の出勤表は寮長にまとめて責任を持って渡すのだけど、たまたま侍女長は物忌で遠子が預かってくれその時お話をした。
その話を聞いて殿下はそわそわなさる。
「じゃ、その人が殿下とお約束した女性で、キスをすれば呪いが解けるってこと?」
「本当の縁だったらね」
紺太は失礼ながらそう言ってしまうが、
「本当の縁だよ」
殿下は断言した。
瞳は期待でキラキラしていらっしゃる。
『ちっ…余計なことを……』
また、どこからか声が聞こえたけれど、橘にはもうわかる。
『眠る狐』の声だ。
きっと、ウカノミタマの伝言は本当のことなのだ。
「侍女さんを連れて来れれば良いんですよね?」
「できるかい?」
「お安い御用です!」
橘は胸を張った。
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