あやかしと神様の昔語り

九尾の狐の菊の陰謀

５☆切なくて狂おしいのは…？☆R18

　橘の体からドロンと煙がでると人に戻れた。
　だが真っ裸で舐めまかしい姿になっていた。
「た、たちばな！」
「ふ、服を着てください。」
「キャ！失礼しました！」
　咲羅子は急いで狩衣をぬいで橘にかぶせる。
　槐寿は逃げるように出て行く橘に目を見張ったが、
「のちの皇后になる方が先が思いやられるな…」
　とつぶやいた。
「やばい！はずかしい！殿下に全てを見られるなんてっ！」
　橘は顔を真っ赤にして自分の局の部屋に滑り込む。
　今は晴綛は陛下のお召でいないのは分かっていた。
　裸で急いで代わりの服を探す。
「男物でも予備はあったはず…」
「……橘…いるの？」
　威津那は声をかけて入ってきた。
「威津那！私をみて！」
　腕を広げてみてもらう。
「人間に戻ってる…よかった…」
「じゃないの！私の全てを見て…」
　そう言われて、じっと見つめる。
「う、美しいよ…でも、なんで痴女になってんの？」
　裸だったからそう言われても仕方がないけど言い方が意地悪に感じる。
「好きな人に見てもらうのは痴女じゃないもん！」
　ムーっと顔を真っ赤にして泣きそうな橘が可哀想になる。
　威津那はとりあえず、自分の狩衣を脱いで橘に急いで巻きつける。
「陛下に全てを見られちゃったから……威津那に殿下よりも、もっと見てほしかったの……」
　近くで狩衣を巻きつける威津那に呟く。
「……殿下のお手つきになったってこと？」
　お手つきとは大袈裟な気がするし、ちょっとよそよそしく感じて違和感だ。
「キスしてもらったら人間に戻れて裸見られちゃっただけだけど…前にも言ったけど…見て欲しいのも触れて欲しいのも威津那だけだから……」
　てへへっ！と橘は照れ笑いをする。
「でも…もう、キスを許したんだね…」
　威津那は悲しそうな辛そうな顔をして刹那げに橘を見る。
　その表情に橘は戸惑う。
「おでこにだけど……人間に戻るためには仕方なかったし…威津那も分かっていたことでしょ？」
「わかってる…君が殿下のものだってことは……」
　そう言って威津那は橘のおでこにキスをする。
「ん？」
　威津那は何を言っているのだろう？と首を傾げる。
「橘……」
　威津那は橘の顎を持ち上げると舌を入れるキスをする。
「ちょ、また狐になっちゃうじゃない！」
　突然の行為に胸を押して辞めさせるがまたキスをしてくる。
　もう恥ずかしい真似は勘弁なのでもう一度威津那の胸を押すと、
「あれ？狐にならない？」
「血が流れてないからね…んっ…」
　そう言ってまたキスをする、さらにそっと乳房を形に合わせて撫でて指を沈める。
「い、…威津那…大胆すぎない？」
　威津那の様子がおかしいことに橘は嬉しいよりも困惑する。
「殿下にここも……？」
　指先でそっと先端を弄られる。
「っ……触られてないよ…」
　真剣な瞳で切なげに見つめてくる。
　大胆で切なげな感情が伝わる。
「殿下よりも僕が君を先に奪いたい…不敬だと、わかっているけれど…どうしても君が僕の手から離れるのは辛い……」
　そう言ってさらにぎゅうと抱きしめる。
「んん？なにいってんの……？」
　謎の禁断の愛の告白よりも、意味不明なことを言う威津那を不審に思う。
　威津那は、唇を橘の首筋から下ろして、乳房を持ち上げ胸元にキスマークをつける。
「やっ…なんで、いつもは鼻血出して倒れるのに……」
　鬼の女将の薬が本当に効いているんだろうな…と察するけれど……
　さらにお腹あたりに頭を擦り寄せ、腕を巻きつくように降りていく。
　切なげに、愛おしくぎゅっと抱きしめられる。
　下半身に顔を埋められそうで恥ずかしい。
　布で隠れてるからいいけれど、誰にも見せてないところまで見られてしまいそうだ……
（…このまま結ばれちゃうのかしら……
　そ、それでもいいわ！覚悟はしてるもん！）
　橘は覚悟して身を委ねることにした。
「……なんでだろう今すぐ橘を自分のものにしたくて仕方ない……」
　威津那は橘を見上げて切なげに言った。
　橘を見つめる瞳にはモヤがかかっているように見える。
「それは対抗意識じゃろ？」
「ひっ！」
　二人だけの秘め事に雰囲気が高まりドキドキしているところに突然第三者の声で同時に驚きの声が出た。
「威津那クーン？いい加減、殿下の妃になる、娘に手を出すのは止めて欲しいなぁ」
　そう言って小指を見せつける。
「な、なにいってんの！父様も！威津那も……」
　晴綛は本気で怒りのオーラを出すが、瞳の中の光は曇っている、それは威津那も同じに感じた。