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九尾の狐の菊の陰謀
4☆殿下のキス
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「本当に狐になっちゃったのね…」
咲羅子は狐の橘のもふもふの体を撫でたり触りまくる。
さらに、ぬいぐるみのように、むぎゅーっ!と抱きしめて、すりすりする。
「苦しいよ、咲羅子姐さん!」
「ご、ごめんなさい!だって、狐なんてなかなか触れられるものじゃないじゃない!しかも清潔だし!可愛いし!」
咲羅子は興奮したように力説した。
「嬉しいような、嬉しくないような…」
橘は困った返答しかできなかった。
「さらに、殿下のキスで人間に戻れるなんてまるで西洋の御伽噺ね!」
咲羅子は興奮して言う。
『その概念…使わせてもらおうかの…』
という声がどこからか聞こえた気がする。
橘は不思議に感じ、首を傾げる。
その姿も咲羅子にとって悶えるツボだった。
「威津那なんかより、殿下の方を好きになっちゃったりして!」
「そんなことないもん!威津那が一番だもん!」
クワっ!と大きく口を開けて咲羅子を威嚇する。
「ご、ごめん」
咲羅子はビビる。
狐は可愛いだけじゃないと思い知った。
「それにしても、殿下とお会いするの久しぶりよね」
「うん。留学なさったぶりよね。」
恐れ多くも、皇太子殿下とは親しくしていただいて五年も経つ。
咲羅子も橘も宮中でお仕事をし始めた頃、今のように陰陽寮の様子を見学してくださった。
その時、殿下は包石の作り方を中務卿と晴綛に教わって、その石を咲羅子と橘はいただいた。
何度その石に助けて頂いたことか…
橘の石は威津那の攻撃に耐えられず崩れてしまい、咲羅子の石は威津那の呪詛を浄化させるためになくなってしまった。
その事を思うと威津那はとんでもないやつだった………
と、ついついため息を二人同時に吐く。
「殿下にもお話を聞いていただいたわ。行きましょう」
といい、やはり狐の橘は珍しいので抱っこして連れて行った。
陰陽寮の皇族専用のお部屋に殿下は正座して待っていらした。
槐寿は廊下の外で不審なものが通らないか見張りをする。
「殿下、お久しぶりでございます。」
狐の橘は伏せをして、人間のように頭を下げるようにふるまう。
狐が人間の言葉を喋ったことに殿下は驚くが、橘状況を聞いていたので、
「やぁ、橘……本当に狐になってしまったんだね…」
殿下は相変わらず朗らかでいながら戸惑う。
「大抵は僕が不思議なことに足を踏み入れると消えてしまうから、いつもなら噂に聞く橘や晴綛が狐耳と尻尾があることすらないのに…ほんと、不思議だね……」
殿下は神妙にうなづかれて、橘に近づき、狐の頭を撫でる。
「狸は見ることができたけど、狐は宮中で見ることできないからね…新鮮だよ」
と言って、橘の狐の体を撫でまくる。
「な、なんだか恥ずかしいです……」
橘は微動だにせずに緊張してそう言った。
「あはは、ごめんね。とても珍しい現象だから嬉しくてね」
ニコニコ笑顔で見つめられると橘の心も朗らかになってしまう。
恋ではないけれど、好きなのだ。
幼い頃、少し一緒に遊んでいただいたこともあった。
殿下をとても尊敬し敬愛していた。
優しくて、心が清くて心地よかった……
威津那に出会うまで恋かと思っていた時期もあったけれど……
と昔のことを悶々と考えていたら……
『それは我血筋たる所以だ…ふふふ』
と、かすかに先程と同じ声がどこからか聞こえて、不思議に首を傾げるしかなかった。
「おでこにキスをすればいいんだね?」
「はい!陰陽寮長が言ってました!」
橘は元気よく答える。
その様子は幼い頃から変わらない、やはり橘だと思うと殿下は微笑んで、
「まるで、西洋の昔話みたいだね。
西洋の物語だとキスした王子に惚れてしまうとかあるよね。まぁ、実際に僕は皇子だけど……」
ご自身で言ってて照れるところも恐れ多くも可愛らしくいらっしゃる。
「いえ、私婚約者がいますので大丈夫です。」
橘は遠慮なく断言した。
「そ、そうなんだ…それは良かった…」
「こら、橘!少しは遠慮なさい」
「いや、橘らしくていいと思うよ」
改めて遠慮されても困ると殿下は苦笑する。
「では、失礼するよ」
狐の橘のふわふわのおでこをやさしく撫でてキスをした。
咲羅子は狐の橘のもふもふの体を撫でたり触りまくる。
さらに、ぬいぐるみのように、むぎゅーっ!と抱きしめて、すりすりする。
「苦しいよ、咲羅子姐さん!」
「ご、ごめんなさい!だって、狐なんてなかなか触れられるものじゃないじゃない!しかも清潔だし!可愛いし!」
咲羅子は興奮したように力説した。
「嬉しいような、嬉しくないような…」
橘は困った返答しかできなかった。
「さらに、殿下のキスで人間に戻れるなんてまるで西洋の御伽噺ね!」
咲羅子は興奮して言う。
『その概念…使わせてもらおうかの…』
という声がどこからか聞こえた気がする。
橘は不思議に感じ、首を傾げる。
その姿も咲羅子にとって悶えるツボだった。
「威津那なんかより、殿下の方を好きになっちゃったりして!」
「そんなことないもん!威津那が一番だもん!」
クワっ!と大きく口を開けて咲羅子を威嚇する。
「ご、ごめん」
咲羅子はビビる。
狐は可愛いだけじゃないと思い知った。
「それにしても、殿下とお会いするの久しぶりよね」
「うん。留学なさったぶりよね。」
恐れ多くも、皇太子殿下とは親しくしていただいて五年も経つ。
咲羅子も橘も宮中でお仕事をし始めた頃、今のように陰陽寮の様子を見学してくださった。
その時、殿下は包石の作り方を中務卿と晴綛に教わって、その石を咲羅子と橘はいただいた。
何度その石に助けて頂いたことか…
橘の石は威津那の攻撃に耐えられず崩れてしまい、咲羅子の石は威津那の呪詛を浄化させるためになくなってしまった。
その事を思うと威津那はとんでもないやつだった………
と、ついついため息を二人同時に吐く。
「殿下にもお話を聞いていただいたわ。行きましょう」
といい、やはり狐の橘は珍しいので抱っこして連れて行った。
陰陽寮の皇族専用のお部屋に殿下は正座して待っていらした。
槐寿は廊下の外で不審なものが通らないか見張りをする。
「殿下、お久しぶりでございます。」
狐の橘は伏せをして、人間のように頭を下げるようにふるまう。
狐が人間の言葉を喋ったことに殿下は驚くが、橘状況を聞いていたので、
「やぁ、橘……本当に狐になってしまったんだね…」
殿下は相変わらず朗らかでいながら戸惑う。
「大抵は僕が不思議なことに足を踏み入れると消えてしまうから、いつもなら噂に聞く橘や晴綛が狐耳と尻尾があることすらないのに…ほんと、不思議だね……」
殿下は神妙にうなづかれて、橘に近づき、狐の頭を撫でる。
「狸は見ることができたけど、狐は宮中で見ることできないからね…新鮮だよ」
と言って、橘の狐の体を撫でまくる。
「な、なんだか恥ずかしいです……」
橘は微動だにせずに緊張してそう言った。
「あはは、ごめんね。とても珍しい現象だから嬉しくてね」
ニコニコ笑顔で見つめられると橘の心も朗らかになってしまう。
恋ではないけれど、好きなのだ。
幼い頃、少し一緒に遊んでいただいたこともあった。
殿下をとても尊敬し敬愛していた。
優しくて、心が清くて心地よかった……
威津那に出会うまで恋かと思っていた時期もあったけれど……
と昔のことを悶々と考えていたら……
『それは我血筋たる所以だ…ふふふ』
と、かすかに先程と同じ声がどこからか聞こえて、不思議に首を傾げるしかなかった。
「おでこにキスをすればいいんだね?」
「はい!陰陽寮長が言ってました!」
橘は元気よく答える。
その様子は幼い頃から変わらない、やはり橘だと思うと殿下は微笑んで、
「まるで、西洋の昔話みたいだね。
西洋の物語だとキスした王子に惚れてしまうとかあるよね。まぁ、実際に僕は皇子だけど……」
ご自身で言ってて照れるところも恐れ多くも可愛らしくいらっしゃる。
「いえ、私婚約者がいますので大丈夫です。」
橘は遠慮なく断言した。
「そ、そうなんだ…それは良かった…」
「こら、橘!少しは遠慮なさい」
「いや、橘らしくていいと思うよ」
改めて遠慮されても困ると殿下は苦笑する。
「では、失礼するよ」
狐の橘のふわふわのおでこをやさしく撫でてキスをした。
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