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ドキドキデートと不穏の影
8☆陰陽の気と神の化身のキス
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晴綛に、ことの次第を説明した。
「それは、お前の呪詛そのもののような陰の気の強い体の血肉を橘に与えたことで、あやかしの気と人の肉体の均等が崩れて獣の姿になってしまったのじゃ…」
そういって煙管をため息まじりに吹いた。
威津那の体自体、呪詛そのものであるように父に仕込まれた。
いや……呪術を操るイズナの一族の末裔ならば仕方がないが、管狐を操る呪術は焔の方が長けていた。
そのかわり、御霊になった母を威津那は烏の化身に変えて威津那の式神の呪力として留めている。
そんな威津那の血を飲んだら管狐にする事だってできると確信はしていたけれど、あやかしを…橘を、ウカ様ですら操れると思ったが、あやかしを、通り越して動物に姿を変えさせるなんて思っても見なかった。
威津那は嫉妬に囚われて考慮することすら忘れて、迂闊だった…と反省するしかない…
「私、人間に戻れるの?」
橘は心配そうに父に問う。
「一番早いのは殿下に口づけしてもらうことじゃの。殿下から賜った包石の力を橘自身にいただけば良い。」
晴綛はこともなくむしろニヤニヤ笑いながら言うが、威津那はムッとする。
これでは映画を観た時の橘の感想どうりになってしまうではないか、さらに胸騒ぎは無意味だと思ったヤキモチは予知だったのだろうか……?
「殿下は陽の気そのものだからな均衡が取れるようになるだろうよ。
わしですら人の姿になってしまうのだ……」
金狐の半妖である陰陽寮長を人の姿にしてしまうとは、光り輝くほどの陽の気を想像する。
「祝皇陛下が陽の気がお強いのはわかりますが、皇太子殿下の方がお強いのですか?」
威津那は恐れ多いが素直に疑問を口に出す。
「そのとおりだ……。祝皇陛下はもちろんアマテラス神の陽の気に包まれている。
祝皇でおられるのならば、国の陰陽の気の均衡を保つことも務めでもある。
この百年近く世界にかき乱されて、均衡がくずれていたが、これからの日和はどこの国より復興発展していくだろう。」
それはとても寿ぐことだ。
今まで争いが耐えなかった日和にやっと戦の気配は遠のくのだから……
晴綛は祝皇陛下を自慢しつつ難しい表情を作り、
「だが、しかし、皇太子殿下はお若くいらしゃっる分、お強いのだ。
まだ東宮、日の登り初めの方位の位にいらっしゃるから良いがの、祝皇になられたならば、陽の気が最強に強まる……歴代祝皇の中で稀かも知れぬな」
晴綛は難しい顔をしながら、威津那を横目でじっと見る。
まるで品定めをするような瞳だ。
そういうことは何回かあって威津那は不思議に思う。
「そんな殿下のキスをおでこにでもいただければ人間に戻れるというわけよ、心配する事でもないの」
そういって橘の頭をポンポンと撫でる。
「そうなんだー、よかった~」
狐の橘はほっとする。
「それはダメです。橘は僕のものです、僕の力でどうにかならないですか?」
皇太子殿下といえど、もう自分以外の男に橘を触れさせたくない。
「なら、やはり神誓いするしかあるまいな。神誓いすれば、管狐などという低質な式神ではなくて眷属にすることができるぞ」
その言葉に威津那は瞳を輝かせる。
「そうなのですか!?」
「言っておらんかったかの?」
「言ってないです……!」
「わしはルカの神の化身の流花の眷属でもあるぞ。」
見せつけるように、隣に正座する流花の肩を引き寄せて無意味にドヤ顔した。
「そ、それも知らなかった…」
夫婦であやかしの頭領で、審神者で神の化身とは特殊すぎる夫婦だ。
「父様は母様にキスしてもらうと人間になれるんだよね?私も母様に軽いキスして貰えば人間になれてたわよね?」
それはもう十年前のことで、最近はしてもらってないし、してもらう気もないけれど…
「まぁな。流花のキスはわし専用。その年で母親とでいぇぷなきすをしたいか?」
「う……」
「私は娘となら構わないですけど。狐の姿でも橘は愛おしい血肉を分けた、娘ですもの。」
「僕もお義母さんの方が、殿下となさるよりいいと思います!」
威津那は拳を握り推す。
「母様!今すぐして!」
橘は母に飛びついてぺろぺろ舌を出して頑張るが難しくて諦めた……
「ごめんなさい…殿下におでこにしてもらうのが簡単だと思うわ……」
その様子を見た四人はため息を吐く。
「早く威津那を、神誓いさせるべきだったな……」
と、ため息を吐くが、タイミングがあるから仕方がない。
「お前は陛下と反対で陰の気が強いから、宮中行事が忙しいが冬至に行うことにしよう。」
「はい、よろしくお願いします!」
威津那は頭を下げるが、
「本来は橘を救うことより、陛下を守るための誓いという事を忘れるなよ?」
と、晴綛はクギをさす。
「まあ、ちょうど明日は陰陽寮を見学滞在なさるようなのでな、まずは殿下にお頼みすることだな。」
「う…、ハイ、わかりました…」
威津那は項垂れて、諦めた。
「殿下のお手つきに橘がなれるわけでもないから、深く考えなくてもいいじゃないかしら?」
と、流花は威津那を宥めた。
「そうよね、狐にキスするだけだしね、ある意味殿下にキスしていただけるなんて光栄よね。」
「………やだ。」
威津那はそっぽを向いて小声で子供のように不満を口にした。
そんなかわいい子供みたいな態度に、橘は狐の足で口元を抑えて、
「いやだぁあ!もう!威津那ったらかわいすぎいぃ!」
聞き分けのない威津那にイラっとする気持ちもあるし、ヤキモチする可愛さに橘は萌えて、狐の姿で威津那を押し倒して威津那の顔をペロペロなめまくる。
「橘…狐というより、発情した犬みたいよ!はしたないからやめなさい!」
母に、諌められて威津那から大人しく離れた。
「まぁ、やる事、予定は決まったな。橘とキスをそれ以上したければ、神誓いする準備を整えなければならないな」
「は、はい……」
いまだにムーーっと憤った思いの威津那は一晩中狐の橘を離さず眠ることにした。
「それは、お前の呪詛そのもののような陰の気の強い体の血肉を橘に与えたことで、あやかしの気と人の肉体の均等が崩れて獣の姿になってしまったのじゃ…」
そういって煙管をため息まじりに吹いた。
威津那の体自体、呪詛そのものであるように父に仕込まれた。
いや……呪術を操るイズナの一族の末裔ならば仕方がないが、管狐を操る呪術は焔の方が長けていた。
そのかわり、御霊になった母を威津那は烏の化身に変えて威津那の式神の呪力として留めている。
そんな威津那の血を飲んだら管狐にする事だってできると確信はしていたけれど、あやかしを…橘を、ウカ様ですら操れると思ったが、あやかしを、通り越して動物に姿を変えさせるなんて思っても見なかった。
威津那は嫉妬に囚われて考慮することすら忘れて、迂闊だった…と反省するしかない…
「私、人間に戻れるの?」
橘は心配そうに父に問う。
「一番早いのは殿下に口づけしてもらうことじゃの。殿下から賜った包石の力を橘自身にいただけば良い。」
晴綛はこともなくむしろニヤニヤ笑いながら言うが、威津那はムッとする。
これでは映画を観た時の橘の感想どうりになってしまうではないか、さらに胸騒ぎは無意味だと思ったヤキモチは予知だったのだろうか……?
「殿下は陽の気そのものだからな均衡が取れるようになるだろうよ。
わしですら人の姿になってしまうのだ……」
金狐の半妖である陰陽寮長を人の姿にしてしまうとは、光り輝くほどの陽の気を想像する。
「祝皇陛下が陽の気がお強いのはわかりますが、皇太子殿下の方がお強いのですか?」
威津那は恐れ多いが素直に疑問を口に出す。
「そのとおりだ……。祝皇陛下はもちろんアマテラス神の陽の気に包まれている。
祝皇でおられるのならば、国の陰陽の気の均衡を保つことも務めでもある。
この百年近く世界にかき乱されて、均衡がくずれていたが、これからの日和はどこの国より復興発展していくだろう。」
それはとても寿ぐことだ。
今まで争いが耐えなかった日和にやっと戦の気配は遠のくのだから……
晴綛は祝皇陛下を自慢しつつ難しい表情を作り、
「だが、しかし、皇太子殿下はお若くいらしゃっる分、お強いのだ。
まだ東宮、日の登り初めの方位の位にいらっしゃるから良いがの、祝皇になられたならば、陽の気が最強に強まる……歴代祝皇の中で稀かも知れぬな」
晴綛は難しい顔をしながら、威津那を横目でじっと見る。
まるで品定めをするような瞳だ。
そういうことは何回かあって威津那は不思議に思う。
「そんな殿下のキスをおでこにでもいただければ人間に戻れるというわけよ、心配する事でもないの」
そういって橘の頭をポンポンと撫でる。
「そうなんだー、よかった~」
狐の橘はほっとする。
「それはダメです。橘は僕のものです、僕の力でどうにかならないですか?」
皇太子殿下といえど、もう自分以外の男に橘を触れさせたくない。
「なら、やはり神誓いするしかあるまいな。神誓いすれば、管狐などという低質な式神ではなくて眷属にすることができるぞ」
その言葉に威津那は瞳を輝かせる。
「そうなのですか!?」
「言っておらんかったかの?」
「言ってないです……!」
「わしはルカの神の化身の流花の眷属でもあるぞ。」
見せつけるように、隣に正座する流花の肩を引き寄せて無意味にドヤ顔した。
「そ、それも知らなかった…」
夫婦であやかしの頭領で、審神者で神の化身とは特殊すぎる夫婦だ。
「父様は母様にキスしてもらうと人間になれるんだよね?私も母様に軽いキスして貰えば人間になれてたわよね?」
それはもう十年前のことで、最近はしてもらってないし、してもらう気もないけれど…
「まぁな。流花のキスはわし専用。その年で母親とでいぇぷなきすをしたいか?」
「う……」
「私は娘となら構わないですけど。狐の姿でも橘は愛おしい血肉を分けた、娘ですもの。」
「僕もお義母さんの方が、殿下となさるよりいいと思います!」
威津那は拳を握り推す。
「母様!今すぐして!」
橘は母に飛びついてぺろぺろ舌を出して頑張るが難しくて諦めた……
「ごめんなさい…殿下におでこにしてもらうのが簡単だと思うわ……」
その様子を見た四人はため息を吐く。
「早く威津那を、神誓いさせるべきだったな……」
と、ため息を吐くが、タイミングがあるから仕方がない。
「お前は陛下と反対で陰の気が強いから、宮中行事が忙しいが冬至に行うことにしよう。」
「はい、よろしくお願いします!」
威津那は頭を下げるが、
「本来は橘を救うことより、陛下を守るための誓いという事を忘れるなよ?」
と、晴綛はクギをさす。
「まあ、ちょうど明日は陰陽寮を見学滞在なさるようなのでな、まずは殿下にお頼みすることだな。」
「う…、ハイ、わかりました…」
威津那は項垂れて、諦めた。
「殿下のお手つきに橘がなれるわけでもないから、深く考えなくてもいいじゃないかしら?」
と、流花は威津那を宥めた。
「そうよね、狐にキスするだけだしね、ある意味殿下にキスしていただけるなんて光栄よね。」
「………やだ。」
威津那はそっぽを向いて小声で子供のように不満を口にした。
そんなかわいい子供みたいな態度に、橘は狐の足で口元を抑えて、
「いやだぁあ!もう!威津那ったらかわいすぎいぃ!」
聞き分けのない威津那にイラっとする気持ちもあるし、ヤキモチする可愛さに橘は萌えて、狐の姿で威津那を押し倒して威津那の顔をペロペロなめまくる。
「橘…狐というより、発情した犬みたいよ!はしたないからやめなさい!」
母に、諌められて威津那から大人しく離れた。
「まぁ、やる事、予定は決まったな。橘とキスをそれ以上したければ、神誓いする準備を整えなければならないな」
「は、はい……」
いまだにムーーっと憤った思いの威津那は一晩中狐の橘を離さず眠ることにした。
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